人気ランキング
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
コラム&ブログ一覧
この8月にニューカッスル・ユナイテッドに移籍したばかりの武藤嘉紀が開幕戦から2戦連続で交代出場を果たしている。第1節のホームでのトッテナム・ホットスパー戦では81分からの出場だったが、第2節アウェーでのカーディフ・シティ戦では64分から出場。この試合には6分という長いアディショナルタイムがあったおかげで、武藤には30分間のプレー時間が与えられたのだ。
しかし、このカーディフ戦、武藤が登場したわずか2分後にニューカッスルの右サイドバック、アイザック・ヘイデンが一発退場となってしまう。 入団したばかりの新しいクラブで、まだコンビネーションも確立していないだろう状況を考えると、いきなり10人でのプレーとなったのは武藤にとって不運だった。トレーニングの中で準備してきた形と違う形でプレーしなければならなかったのだから……。 それが、常識的な考えだろう。
しかし、ヘイデンの退場で1人少なくなったニューカッスルだったが、ラファエル・ベニテス監督がうまく態勢を立て直すことに成功。75分くらいから残りの15分間はむしろニューカッスルが攻勢を強めることに成功。得点チャンスを何度もつかむことになったのだ。
そして、アディショナルタイムに入った94分、左サイドでパスを受けた武藤が回り込んでクロスを上げると、これが相手DFの手に当たってPKを獲得。このPKをケネディが失敗して、ゲームはスコアレスドローに終わったものの、武藤にとってはアピールの場になったのも事実だった。
ベニテス監督は、ヘイデン退場直後にまず4-4-1にシステム変更。そして交代カードを使って右SBのポジションにジェイコブ・マーフィーを入れると、さらに4-3-1-1に変えて戦った。武藤は、4-2-3の場面では右のSHのポジションから前線に飛び出す役割を担い、4-3-1-1になってからはセカンドストライカーとしてワントップのホセルの下で動き回った。
ホームのカーディフが、1人少ないニューカッスルを相手に勝点3を狙って前がかりになったこともあって、ニューカッスルの前線のホセルと武藤の前には大きなスペースが生まれた。そう考えると、ヘイデンの退場は、武藤にとってはむしろラッキーだったのかもしれない。武藤の武器はキレのあるランニングである。マインツ時代も、サイドアタッカーの位置からゴール前までダイアゴナルな動きでDFラインの裏に走り抜けるプレーが際立っていた。
長い距離を走ってスピードを競わせたら、おそらくプレミアリーグには武藤以上の足を持った選手はいくらでもいるはずだが、スタート直後の初速の速さは武藤独特のものではないだろうか。しかも、キレのあるスタートを繰り返すことで、とても目に付きやすい動きになるのだ。「分かりやすい」動きをすることの利点は、ボールを持っている味方の目に付きやすいことだ。前線で走り出した武藤のことが味方にとって見やすければ見やすいほど、当然、パスが集まってくる。
ただし、「分かりやすい」動きをすれば、当然、相手のDFにも武藤が動き出したことをいち早く察知されることになる。キレのある動き出しは武藤の武器なのだが、その武器をさらに進化させるためには、相手DFとの駆け引きの質をさらに上げていく必要があるのだろう。
実際、前方に広大なスペースができたカーディフ戦で、武藤はキレのある動きを何回も見せており、味方が後方でボールを奪った瞬間に武藤が動き出し、「あ、ここでパスが来れば」と思わせた場面も何回もあった。
ただ、実際になかなかパスが出てこなかったのも事実なのだが、このあたりは合流から間もない武藤の動き出しの特徴を味方の選手が十分に理解していないからと理解していいのだろう。実戦で何度もプレーして、武藤の動きを味方に覚えてもらう必要があるのだ。
そして、そのためには退場者が出て、前方に大きなスペースができたカーディフ戦では、武藤が走る場面が何度も生まれたのだ。つまり、味方との連携向上のためにはヘイデンの退場で1人少なくなったことがかえってプラスに働いたわけである。
1人少なくなったこと。そして、相手も前がかりになり、結果として前方に大きなスペースができたこと。これこそが、最後の時間帯に1人少ないはずのニューカッスルが攻め込めたいちばんの理由だろうし、そのスペースをうまく使えたのが武藤だったのだ。
武藤のようなキレのある動きというのは、これから将来の日本のアタッカーにとっては共通の武器になるのではないか。いくら強化してもパワーでヨーロッパの選手をしのぐことは難しいだろうし、瞬発系の動きではアフリカ系の選手に敵わない。だからこそ、一瞬の加速。鋭いターンといった、アジリティの高さを生かしたキレのあるプレーこそ、日本人選手の大きな武器となるはずなのだ。
その意味で、武藤の動きが世界最高峰リーグのひとつ、プレミアリーグで通用するかどうか興味深いところなのであるそして、武藤のクロスから獲得したPKはケネディが失敗したものの、武藤のカーディフ戦でのプレーは高く評価してもいいものだった。自分のプレーをある程度アピールできただろうから、次のプレー機会には、また全力で(全速で)走り切っていってほしい。 開幕直後にはレスター・シティの岡崎慎司も、サウサンプトンの吉田麻也も出場機会を与えられていない。そんな中で、武藤のあのキレのある動きには大いに注目したいところである。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
日本トリムPresents 第16回全国女子選抜フットサル大会 ~トリムカップ2024~ 決勝 埼玉県選抜 vs. 福岡県選抜
11月17日 午後1:30〜
-
【限定】Foot! THURSDAY Presents 土屋雅史の高円宮杯U-18プレミアリーグ 深堀りレポート!2024 #20
11月21日 午後10:00〜
-
サッカーニュース Foot! THURSDAY(2024/10/24)
10月24日 午後10:00〜
-
FIFA フットサル ワールドカップ ウズベキスタン 2024 決勝 ブラジル vs. アルゼンチン
10月6日 午後11:45〜
-
【会員無料】高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第12節 大津高校 vs. ヴィッセル神戸U-18
11月1日 午後4:00〜
-
高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2024 EAST 第17節-2 尚志高校 vs. 前橋育英高校
10月6日 午前10:50〜
-
高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第18節-1 ヴィッセル神戸U-18 vs. サガン鳥栖U-18
10月12日 午後2:50〜
-
サッカーニュース Foot! THURSDAY(2024/10/03)
10月3日 午後10:00〜
サッカー人気アイテム
J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!