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サッカー フットサル コラム 2018年7月4日

本気の強豪と戦えたからこその課題 まずは称賛すべき、日本代表の健闘

後藤健生コラム by 後藤 健生
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日本代表のロシア・ワールドカップの冒険はラウンド16で終わってしまった。 ベルギー戦の終了直前の失点場面。あまりに前がかりになりすぎていたことは確かだ。本田圭佑のCKも、簡単にGKのティボー・クルトワにキャッチされてしまった。疲労もあり、延長を避けたいベルギーがカウンターを狙っていたことをどうして察知できなかったのか……。たしかに詰めが甘かったのは事実だ。

聞くところによると、日本国内ではこの点について批判の声も高まっているという。 だが、この1点をとらえて批判的に見るのはいかがなものか。90分を、いや95分を通じて、日本代表のパフォーマンスは素晴らしいものだった。ディテールを捉えて批判するより、まずは称賛すべき内容の試合だった。

一夜明けて、ロストフ・ナ・ドヌの街を歩くと、多くの現地の人に声をかけられた。飛行機でモスクワに戻り、市内行きの電車に乗ったところで、セキュリティーのおじさんに大きな声で日本チームと「ホンダ」を称える声をかけられた(たぶんCSKAのファンなのだろう)。こちらで知り合った何人かのロシア人からも、称賛のメールをもらった。

世界のサッカー界の日本を見る眼が変わったように感じる。あのポーランド戦の終盤の戦い方で批判を浴びた日本は、ベルギー戦で称賛の対象に変わったのだ。 単に接戦を演じたからではない。日本代表が後半の立ち上がりに奪った2つのゴール。柴崎岳から原口元気への、相手DFの小さなギャップを突く正確なスルーパスと原口の冷静なフィニッシュ。香川真司の優しい落としからの、乾貴士の見事なミドルシュート。ずっと「決定力不足」を言われ続けてきた日本代表が、世界標準に照らしても絶賛されるべき美しいゴールで2点を先制した。

また、特筆すべきはこの試合のファウル数が両チーム合わせて19だったこと。そして、警告が1枚(柴崎)だけだったことだ。フランス対アルゼンチンとか、コロンビア対イングランドなど、警告のイエローカードが飛び交うような試合が多い中、あれだけ激しい試合をしながら反則が少なく、フェアなプレーができたことも称賛すべきであろう。

しかも、2点を失って焦るベルギーをある時間までは、日本代表の守備陣が完封した。 ベルギー戦に限らず、日本のCBの吉田麻也と昌子源は今大会を通じてよく相手の強力FWを抑えた。コロンビアのハメス・ロドリゲスは不調のどん底だったとしても、ラダメオ・ファルカオを抑え、セネガルのエムベイェ・ニアン、イスマイラ・サール、サディオ・マネを抑え、ポーランドのロベルト・レバンドフスキを抑え、そして、ベルギー戦でもロメル・ルカクと対峙した。日本のDFがここまで通用するとは誰も予想できなかったことだろう。 日本代表は、今大会で4試合を戦って7失点を喫した。

しかし、そのうちの5点は(スローインも含む)セットプレー絡みのものだった(そして、あとの2点はGK川島永嗣のパンチングのミスとベルギー戦のカウンター)。つまり、流れの中から崩されての失点はなかったのだ。

そして、もし、セットプレーからの失点を半分に減らすことができていたとすれば、日本はグループリーグを首位通過できたはずだし、ベスト8進出も可能だったかもしれない。

セットプレーからの失点というのは、西野朗監督の責任ではない。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の時からずっと言われていたこと。いや、ハリルホジッチ監督就任より前からそうだったし、フル代表だけでなく年代別も含めて日本サッカーの致命的な弱点だ。西野監督は、「対策は何もできなかった」と言う。将来へ向けての大きな課題だ。

そして、ベルギー戦でもまたしてもCKからの流れで2点を奪われて同点とされてしまう。 強豪国が次々と敗退してしまった現在、ベルギーは優勝も狙える位置にいる強豪だ。同点ゴールを奪うと、そのベルギーが、日本代表に対して本気でギアを上げてきた。 こういう世界のトップクラスの相手との戦いは、親善試合ではもちろんグループリーグの試合でも体験できない。決勝トーナメントに残ったからこそ、そして、2点をリードするという展開に持ち込んだからこそできる体験だった。

最後のカウンターからの失点も、かつての「ドーハの悲劇」のように語り伝えられ、そして、日本サッカーの大きな教訓となって残っていくのであろう。 日本にとって、ラウンド16は3回目の挑戦だった(ロシア大会は、21世紀に入ってから5回目のワールドカップである。その5回のうち、3度ラウンド16に進んだことのある国はわずか14か国に過ぎない)。地元開催の2002年はホーム・アドバンテージによるものだったし、ラウンド16のトルコ戦は不完全燃焼感の強い試合だった。2010年の南アフリカ大会はラウンド16でPK戦までもつれ込んだのだが、守りに徹する現実的なサッカーで戦い、ラウンド16のパラグアイ戦もスコアレスドローだった。

それに対して、攻めの姿勢を見せ、グループリーグ最終戦ではまだ突破も決まっていないのにターンオーバーをするなどの積極采配を見せてラウンド16では大激戦を演じて見せた。 大きな進歩である。これまで、ワールドカップでの日本の目標はいつでも「グループリーグ突破」だった。だが、次の大会から目標は「ベスト8以上」となるのだろう。

最後の詰め、そしてセットプレーからの失点、GKの育成など、今大会で突き付けられた課題はいくつもある。その回答を4年以内に出せるのか。それが、新しい目標を実現するための鍵となる。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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