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サッカー フットサル コラム 2018年5月1日

ハル戦でプレミアリーグ100試合出場を達成 苦境を乗り越え、成熟度を高める吉田麻也

元川悦子コラム by 元川 悦子
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4月29日から5月1日にかけてイングランド・プレミアリーグ第35節が終了。残り試合もわずかになってきた。吉田麻也所属のサウサンプトンは33試合終了で勝ち点41の暫定9位。来季のUEFAヨーロッパリーグ(EL)圏内浮上は厳しい情勢だが、2部降格争いにも巻き込まれておらず、中位でフィニッシュしそうな雰囲気だ。

その吉田が29日のハル戦でプレミアリーグ100試合出場を達成。1つの節目を迎えることになった。2012年ロンドン五輪直後の8月末にオランダ1部(当時)のVVVフェンロからサウサンプトンの扉を叩いて以来、足掛け5シーズンを過ごしたが、ピッチに立てずに苦しんだ時期が長かった。

最初の12-13シーズンは32試合に出場。順調な滑り出しを見せたかに思われた。けれども、2014年ブラジルワールドカップ直前のシーズンはクロアチア代表歴のあるデヤン・ロブレン(リヴァプール)の加入でポジションを奪われ、出場はわずか8試合。試合勘の不足が大舞台に響いた可能性も否定できなかった。

リベンジを期して挑んだ14-15シーズンは、ロブレンに代わってベルギー代表のトビー・アルデルヴァイレルト(トッテナム)がアトレチコ・マドリードがレンタル移籍。そこハードルに阻まれ、22試合出場と、前年よりは状況が改善したもののフルシーズンの活躍には及ばなかった。翌15-16シーズンも、アルデルヴァイレルトに代わってオランダ代表のフィルジル・ファンダイクがセルティックから加入。またもハイレベルな競争にさらされ、20試合出場と出番を減らす結果となった。

当時は右サイドバックなど本職でないポジションでのプレーをしばしば強いられるなど、吉田自身も苦悩の日々を過ごしていた。2016年5月末からの日本代表欧州組合宿に参加した際、「シンプルに試合に出たい。年齢的にも一番いい時期をベンチで過ごしたくないなと強く思ってるんで。ただ来期はELもあるし、契約も2年残ってる(2018年夏まで)んで、どうなるかは分かんないです。もちろんイギリスにいられればもちろん一番いい。家族も自分自身も慣れてるし、英語も問題があるわけじゃないですし」と揺れ動く胸中を吐露していた。

結局、移籍という選択をせず、迎えた5年目の今季。サウサンプトンにはジョゼ・フォンテ(ウエストハム)、ファンダイク、ジャック・スティーブンスといったライバルがいた。フォンテは2010年夏からサウサンプトンに在籍するキャプテン(当時)。ポルトガル代表でも2016年欧州選手権優勝という実績があって、傑出した存在感を示していた。シーズン当初はそのフォンテとファンダイクのセンターバックコンビがメインで、吉田はELなどカップ戦要員に位置付けられることが多かった。

ところが、2016年末にフォンテの移籍騒動が勃発。それを機に出場機会を急激に増やした彼は2017年に入ると完全に大黒柱と位置付けられるようになる。1月22日のレスター戦で移籍したフォンテに代わってキャプテンに就任したファンダイクが負傷し、長期離脱を強いられたのも大きかった。2月以降はサウサンプトンのアカデミー出身でミドルスブラやコベントリーにレンタルされた経験のあるスティーブンスと吉田が最終ラインのファーストチョイスになっている。サウサンプトンは2017年1月の移籍期間にウルグアイ代表のマルティン・カセレスを獲得したが、クロード・ピュエル監督の信頼をまだ完全に勝ち得ていない様子。今季はこのまま吉田・スティーブンスのセンターバックコンビで行くことになるだろう。

こうした5年間を振り返るだけで、吉田が世界トップ選手との熾烈なバトルを強いられてきたことがよく分かる。3月の2018年ロシアワールドカップアジア最終予選・UAE(アルアイン)&タイ(埼玉)2連戦でも、右ひざ負傷の長谷部誠(フランクフルト)の代役としてキャプテンマークを巻いたが、物怖じするどころか、異種独特な風格すら感じさせた。

その強靭なメンタルと落ち着きはプレミアでの経験値の賜物だろう。メディアもサポーターも高い要求を突き付けてくるイングランドでアジア人DFが主力の地位を勝ち取るのは非常に難しい。言葉やサッカーに対する姿勢などを含め、高度な理解力と適応力を身に付けて初めて、プレミア100試合というハードルを超えられる。吉田は母国で新たな領域に到達したと言っていいだろう。

ハル戦は惜しくもスコアレスドロー。終了間際に吉田自身が相手ボランチのアルフレッド・ヌディアイェにペナルティエリア内で倒されPKを獲得するという大仕事もしてみせた。だが、ドゥシャン・ダディッチが失敗し、勝ち点2を落とす格好になった。もったいない結末で、自身の節目を喜びきれない背番号3だったが、これもサッカーだ。この日を忘れず、さらなる高みを目指してほしいものだ。

代替画像

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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