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サッカー フットサル コラム 2018年4月23日

ベンゲル体制21年半の長期政権終焉へ。欧州出場権遠のいたアーセナル。寂しき終盤戦

元川悦子コラム by 元川 悦子
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95年天皇杯制覇など名古屋グランパスでの成功を手土産に欧州に戻り、96年10月からイングランド・プレミアリーグの名門・アーセナルの指揮を執っていたアーセン・ベンゲル監督。それから21年半もの長きにわたってガナーズの指揮を執り続けてきたが、4月20日に今季限りで退任することがクラブから正式に発表された。

ベンゲル体制になってからのアーセナルは97-98、2001-01、2003-04シーズンにプレミア制覇を達成。とりわけ03-04シーズンは無敗のままリーグ制覇を達成。この記録は現在に至るまで破られていない。当時のメンバーはシーズン30ゴールを挙げたエースFWティエリ・アンリを筆頭に、ロベール・ピレス、フレドリック・ユングベリ、パトリック・ヴィエラ、ジウベウト・シウバといったタレントが中盤より前に並び、最終ラインもソル・キャンベルやコロ・トゥーレ、アシュリー・コールといった能力の高い面々が揃っていた。そのタレントたちをベンゲル監督は4-4-2の布陣に配置し、攻守の切り替えの速いモダンサッカーを植え付け、世界を震撼させた。2000年代前半のアーセナルの強さは誰もが認めるところ。若かりし稲本潤一(札幌)に出番が巡ってこないのも当然だったかもしれない。

2006年夏にハイバリーからエミレーツスタジアムへ移転してからは他チームに押されるようになり、2010年代初頭まで無冠の時代が続いた。この頃を象徴するのが、今季引退を表明したトマーシュ・ロシツキー。彼などはケガを繰り返し、チームを盛り上げることが思うようにできない1人だった。それでもセスク・ファブレガス(チェルシー)のような若いタレントを思い切って引き上げ、大きく成長させたのはベンゲル監督の功績だ。

日本からも稲本、伊藤翔(横浜)、宮市亮(ザンクトパウリ)、浅野拓磨(シュツットガルト)らが才能を見出され、獲得対象になったが、ベンゲル監督は間違いなく目利きの指導者だった。むしろGM的な能力の方が高かったと言っても過言ではない。そこは評価すべきポイントだろう。

2010年代に入ると、13-14、14-15、16-17シーズンにFAカップを制覇。無冠時代からは脱することができた。が、チェルシーやマンチェスター・シティらに加え、伏兵・レスターも躍進し、アーセナルのプレミア王者奪回は叶わないまま時間が過ぎていく。ベンゲル体制が20年近くなった頃には退任話がしばしばメディアを賑わせるようになった。昨季も「いよいよ今季限りでベンゲル体制終焉か」と言われたが、クラブは続投の判断を下した。それも百戦錬磨のベテラン指揮官に最後の花道を飾ってほしいという思惑があったからではないだろうか。

ベンゲル監督もビッグ6の中で、最低でもUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)出場権を得られる4位以内を確保したかったに違いない。だが、マンチェスターCが開幕から独走し、ジョゼ・モウリーニョ監督体制2年目のマンチェスター・ユナイテッドが2位をキープ。3位をチェルシーとリバプールが争う構図となり、アーセナルは停滞感を打破できなかった。

冬の移籍市場でピエール・エメリク・オーバメヤンとヘンリク・ムヒタリアンの元ボルシア・ドルトムントコンビを補強し、攻撃のテコ入れを図ったが、彼らが大躍進の起爆剤になるのは難しかった。結局のところ、34試合終了時点でのアーセナルは勝ち点54の6位。消化試合数は1試合少ないものの、5位・チェルシーに9ポイント差をつけられている。 総得点62、総失点45という数字も物足りない。総得点はチェルシーの59より多いものの、ビッグ6の中では5番目。にもかかわらず、失点の方は6チーム中ワーストだ。優勝を決めたマンチェスターCの25という数字に比べるとほぼ倍。それだけ守りが不安定だと、どうしてもUCL圏内浮上は難しい。

ベンゲル監督も長年の経験を駆使して攻守両面のバランスの安定化に努めたはずだったが、思惑通りの結果は出なかった。名将のラストシーズンにしては寂しい成績だと言わざるを得ないだろう。次期監督にはユベントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督、シャルケの若き知将、ドメニコ・テデスコ監督などの名前が挙がっているというが、誰が後を引き継いでもチームマネージメントは簡単ではない。長期政権の後の立て直しの難しさは、アレックス・ファーガソン監督が退いた後のマンチェスターUが実証している。クラブ側は指揮官選びを失敗してはならないし、ベンゲル監督もこれまで21年半の経験値を確実に還元していく努力が求められてくる。

ベンゲル体制のアーセナルに残されたゲームは、プレミア5試合とUEFAヨーロッパリーグ(EL)2試合。UELの方はまだタイトルの可能性がある。名将のラストを飾るべく、ガナーズには持てる力の全てを出し切ってほしいものだ。

代替画像

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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