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サッカー フットサル コラム 2018年4月9日

強いシティが、またも3失点で逆転負け 攻撃的サッカーで挑んだモウリーニョの真意はどこに?

後藤健生コラム by 後藤 健生
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プレミアリーグ優勝を目前にしたマンチェスター・シティが、ホーム「エティハド・スタジアム」でのマンチェスター・ダービーに敗れて、最速記録での優勝決定が持ち越しとなってしまった。シティにとっては「ホームでの優勝決定」、さらに「宿敵ユナイテッドの目の前での戴冠」という絶好の舞台だっただけに、残念な結果とだったろう。まして、前半のうちに2点をリードした後の逆転負けだったのだから、ショックも大きかろう。

マンチェスター・シティにとっては、難しい試合だった。 チャンピオンズリーグの準決勝でリヴァプールに0対3のスコアで敗れてから中2日。しかも、さらに中2日の日程でリヴァプールとのセカンドレグを控えているのだ。いわゆる「谷間の試合」である。勝点で大量リードしているリーグ戦なのだから、本来なら主力を完全に休ませてもよい試合とも言える。ところが、その「谷間の試合」が優勝決定がかかる試合となってしまったのだ。しかも、相手は同じマンチェスターのライバル。やはり、勝ちにはいかなければならない試合だ。

ペップ・グアルディオラ監督が思い悩んだ末に決めたであろう先発には、今シーズンの躍進の立役者であるケヴィン・デブライネやトップのセルヒオ・アグエロやガルリエウ・ジェズスの名前が含まれていなかった。

つまり、この日のマンチェスター・シティは、いわゆる「ゼロ・トップ」だった。ベルナルド・シウバを低めのトップの位置に置き、トップ下のダビ・シルバと2人が交互にトップに飛び出していくような戦い方だった(ゲームの途中から、ラヒム・スターリングをトップ、ベルナルド・シウバを右サイドにチェンジ)。そして、下がり目の曖昧な位置を取りながら、前線に顔を出してくるダビ・シルバの動きは、相手にとっては捕まえづらく、「ゼロ・トップ」はうまく機能した。

マンチェスター・ユナイテッドも攻撃的な戦い方を選択した結果、試合は序盤から攻め合いとなり、そんな互角の展開の中でセットプレーからマンチェスター・シティに先制点が生まれた。レロイ・ザネが仕掛けて得た左CKの際にヴァンサン・コンパニをフリーにさせてしまう、ユナイテッドのマーキングのミスだった。

25分のこの先制ゴールによってマンチェスター・シティの攻撃がさらに活性化。一方、ユナイテッドの守備が引いてしまい、5分後にはギュンドアンの追加点が決まる。そして、その後、さらにマンチェスター・シティが決定機を作るものの、スターリングが3回とも決められない。 「こういうチャンスを逃していると、罰を受けることになる」というのは、サッカー界の常套句ではあるが、しかし、前半のスタッツを見ればマンチェスター・ユナイテッドのシュートはなんとゼロ。内容を考えてもマンチェスター・シティにとって2点のリードは十分なもののようにも思えた。実際、ハーフタイムのエティハド・スタジアムはお祭り騒ぎだった。

ところが、後半に入ってマンチェスター・ユナイテッドが開き直ったように攻撃を仕掛けてくると、シティの守備が崩壊。53分、55分と立て続けにポール・ポグバにゴールを許して同点。さらに69分にもアレクシス・サンチェスのFKに合わせて飛び出したスモーリングのボレーが決まって、シティはあっという間に逆転されてしまったのだ。

マンチェスター・ユナイテッドが逆転勝ちを収めたことによって、首位のシティと2位のユナイテッドの勝点差は「13」に縮まったものの、残り試合数を考えればシティの優勝は時間の問題だ。

しかし、王者マンチェスター・シティがチャンピオンズリーグのリヴァプール戦の前半31分までに3失点したのに続いて、またもライバルチームに3連続失点を喫してしまったことは、見過ごせない。もちろん、それぞれのゴールにはそれぞれの理由があるのだろうが、これほど連続して失点するということは、守備に何らかの問題があるということだ。

2017/18シーズンのマンチェスター・シティは強すぎた。 開幕直後から首位を独走し、数々の記録を作ってもきた。相手チームの監督も選手もサポーターも勝負を諦めてしまうような雰囲気もあった。あるいは、徹底した守備を敷くしか選択がないような状況もあった。

だが、その強いマンチェスター・シティにも、何か弱点があるのではないか……。直近の2試合での連続失点を見た人々は、そんな思いを抱いたのではなかろうか。 もし、マンチェスター・シティがシーズンの終盤も盤石の試合で勝ち切ってしまったとすれば、シティに対する畏怖の気持ちはシーズンを越えてつながっていくところだった。だが、ここに来て(それも、3連続失点という形で)公式戦連敗を喫したマンチェスター・シティを見れば、他の強豪チームは「打倒シティ」の気持ちも高まろうというものだ。 あの変幻自在のシティの攻撃に対して、守備を固めていてもいずれは崩されてしまう。それなら、思い切って攻撃を仕掛けてみたらどうなのだろう。意外に脆さを秘めているのかもしれない……。そんなことも思わせる。

そういえば、このマンチェスター・ダービーで、ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョ監督は意外にも守備的な戦いを挑んでこなかった。 守備にこだわるモウリーニョは、これまで、マンマークを付けるような守備的な戦い、ゲームを壊してしまうような戦いを選択することが多かった。「目前での優勝決定を阻止する」というこの試合のミッションを考えれば、モウリーニョがまたも守りを固めてくるかと思ったが、ユナイテッドは立ち上がりから互角の攻め合いを演じたのだ(ただし、前半は攻めは機能せず)。

モウリーニョという監督の考え方が変わったのだろうか?イングランドという、フェアな戦いを称賛する文化の中で戦ううちに、どんな試合でも攻めに挑んで戦うという意識がモウリーニョの中で芽生えたのか? あるいは、優勝を諦めざるを得ないなかで、「負けないこと」へのこだわりがあまりなかったのだろうか?

それとも、「強いマンチェスター・シティに対して、攻撃的なサッカーを挑んでみたらどうなるのか」という実験だったのだろうか?

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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