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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
「第108回 ツール・ド・フランス」は、今夜最終ステージを迎えます。
昨年8月に続き、コロナ禍に於いて2度目の開催となった世界最大の自転車レースは、沿道に多くのお客さんが戻り(しかも大半がノーマスク)、また、選手たちも表彰式でマスクを外すなど、正常化への道を確実に歩んでいる印象を受けました。
更に、大会期間中のPCR検査では、今のところ陽性者はでておらず(レースバブル内)、コロナ禍に於ける大規模スポーツイベント開催のノウハウが確実に蓄積している様に感じています。
そんな、アフターコロナに向けて更なる前進を果たした印象の今年の「ツール・ド・フランス」について、自分なりに感じたトピックを5つ挙げてみました。
◯沿道のお客さんが以前の姿に戻った
前述の様に、ノーマスク、大声での声援、密集での観戦が沿道で見られました。我々日本人の感覚からすると「大丈夫なのかな」と若干不安に感じたりもしますが、一方で、「世界は先に進んでいるんだな」という実感を得ることができました。
◯ポガチャル最強
若干22歳のTポガチャルが、早くもツール・ド・フランス2勝目を飾ろうとしています。フィジカル的にはまだまだ余裕があり、更にツール王者につきまとう「疑惑」についてもうまく対処している様に感じます。「1回勝つこと」と「2回勝つこと」の間には大きな差があると言われていますが、22歳でこの壁を超えてしまうわけで、本格的な「ポガチャル時代」の到来を感じずにはいられません。
◯カヴェンディッシュ復活
昨年、引退の危機に立たされていた36歳のカヴェンディッシュが、まさかのステージ4勝を挙げて、2度目のマイヨヴェール獲得がほぼ確実となっています。今夜、「ツール・ド・フランス」最多ステージ勝利数となる35勝目に挑むわけで、今ツール最も大きなサプライズと言って良いでしょう。
◯有力選手たちの落車
レース序盤に優勝候補のPログリッチとGトーマスが落車してしまい、本格的な山岳コースを迎える前に総合争いから脱落しました。また、スプリンターとして最も期待されていたCユアンや、8度目のマイヨヴェールを狙っていたPサガンも落車の影響でリタイアに追い込まれています。落車はレースの一部とはいえ、近年、落車による「レースの価値喪失」は洒落にならないレベルに達しており、今一度、このことについて関係者全員が考えるタイミングに来ている様に感じています。
◯オリンピックの価値向上
今年はこれまで以上に「五輪を考慮して◯◯」といった内容のコメントが多く聞こえてきました。自転車ロードレースの世界では「五輪の価値はそれほど高いものではない」というのが一般的な考え方でしたが、近年はプロ選手たちの間で五輪の価値がどんどん向上しており、「ツール・ド・フランス」よりも五輪を重視する選手が増えはじめているのは間違いありません。今後、「ツール・ド・フランス」とのバランスが更に変化していく様に感じています。
ということで、今夜は、様々な感情に包まれるパリ・シャンゼリゼでの最終ステージをたっぷりと堪能したいと思います。