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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
今夜の「リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1.UWT)」で2連覇を目指すプリモシュ・ログリッチ(31歳/スロベニア/ユンボ・ヴィスマ)が、LBL終了後、ツール・ド・フランスまでの約2ヶ月間レースに出場しないことを発表しています。
そのほか、怪我の影響があるとはいえ、レムコ・エヴェネプール(21歳/ベルギー/ドゥクーニンク)やエガン・ベルナル(24歳/コロンビア/イネオス)なども、長期間レースへ出場せずにグラン・デパール(グランデ・ パルテンツァ)の地に立つという選択をしています。
彼らはレースの代わりに高地トレーニングを選択してグランツールに挑むことになりますが、少し前までの常識だった「事前にレース数をこなさなければビッグレースで勝つことは難しい」という考え方をある意味で時代遅れのものにしつつあります。
海外のコーチ陣がこのやり方の有効性を簡潔に説明していましたので、こちらでも簡単にご紹介したいと思います。
まず、ピーク時の山をより高くしたい選手は、シーズン中のレース数を減らすことで、多くの場合、パフォーマンスを向上させることが可能になるとのことです。
その上で、具体的な4つの利点は以下の様になっています。
1.トレーニングはリスクや強度をコントロールすることができるが、レースではそれができないことの方が多い。強い選手にとってはレースが楽過ぎる時があり、逆にステージレースなどは休みが必要なタイミングで休めなかったりもする。また、寒さや雨は多くの場合選手の体に悪影響を及ぼしてしまう。
2.パワーメーターを駆使することでレースの内容を完璧にシュミレーションすることが可能になる。選手たちにレースで勝つために必要なワット数を伝え、スプリント時、アタック時、長いヒルクライムなど、ターゲットを設定することでパワーメーターをレースの対戦相手に置き換えることできる。
3.レースを離れて高知トレーニングを実施することで、最も効率的なトレーニングを少ないストレス下で実施することが可能になる。トレーニングに集中することができる一方で、同時に新鮮さを保つことが可能になる。
4.レースから離れることでメンタル面のプレッシャーを減らすことが可能になる。特にトップ選手たちはどんなレースでも出場すればある程度注目され、同時に勝つことを求められる。自分自身の調整がうまく進んでいても、ライバルが強ければ敗者として扱われてしまう。
ちなみに上記内容は、あくまでトップレースの走り方を熟知したトップ選手のみに当てはまる内容であって、アシスト選手や経験の浅い選手たちにはほぼ関係のない内容になります。
グランツールでレベルの高い戦いを観れるのは嬉しいですが、一方で、トップ選手がレースに出場しなくなるのは寂しかったりもしますね。