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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
先週末にスイスで開催されていた「シクロクロス世界選手権」が終了しました。
メインイベントとなるエリート男子は「最強の男」マチュー・ファンデルポール(オランダ)が圧倒的な力の差をみせつけて見事2連覇(トータル3回目)を飾りました。また、2位にはイギリスのトーマス・ピッドコック(20歳)が入っています。
1位 VAN DER POEL Mathieu/NED 1h08m52s
2位 PIDCOCK Thomas/GBR 1h10m12s
3位 AERTS Toon/BEL 1h10m37s
このピドコックという若者ですが、なんと157cm /50kg(訂正→現在は165cmまで伸びているという情報あり)という小柄な体格にも関わらず、2019年の「パリ〜ルーベ エスポワール」を制している怪物ライダーなのです。彼のバッグボーンは、基本的に「シクロクロス」と「トラックレース」となっています。
才能の塊の様な選手なのでもはやバッグボーンとかは関係なく、自転車をつかった種目であればなんでも結果を残せてしまうのかもしれませんが、それでも「絶対能力」が求められる種目を経て現在に至っているのは間違いありません。
常々感じていることではありますが、今後の日本国内の長期的な発掘・育成プログラムを考えた場合、基本的に国内で開催する若年層向けのレース(公式戦)というのは「BMX」「シクロクロス」「トラックレース」に絞る方向で良い様に思います。
これはロードレースを諦めるという意味ではなく、優秀なロードレースの選手を発掘・育成する上でもむしろこれらの種目に集中する方が現状の日本国内の様々な環境を考慮すると良いと考えられるからです。
特に「シクロクロス」と「トラックレース(中距離及び集団走行種目)」で良い結果を残せる選手であれば、大人になってから1〜2シーズンほどロードレースに集中すればあっという間にある程度は順応できるはずです。
考えられるメリットを以下に挙げてみます。
◯レースの開催難易度が下がる → 少ないリソースでレース数を増やせる
◯レースの開催経費が下がる → 同上
◯参加者の重大事故が減る → 特にシクロクロス
◯実力者が成績を残しやすい → 展開で勝つ選手が減る
◯各種テクニックが身に付く → バイクコントロールやペダリング技術が向上する
◯レース観戦しやすくマネタイズもしやすい
◯個人単位で活動できるのでチーム運営もコンパクトになる
一方、国内のロードレースは、UCIレースを含む主要レースだけに絞ってしまっても良いと感じています。
こんなことを私が言うのもなんですが、ロードレースというのは、若い選手の発掘・育成にはあまり向いていない種目だと感じます。特に道路使用許可を得るのが大変な日本国内では、費用(作業量含む)対効果で考えるとコスパがあまりにも悪過ぎます。
大きなものを動かすにはそれなりに時間を要しますが、今後は今あるリソースを若者向けの「BMX」「シクロクロス」「トラックレース」の分野へそれぞれ振り分けていき、そこで発掘された才能をどこかのタイミングで一番巨大なマーケットを持つ「ロードレース」の世界へ転身させる仕組みをつくることが最も効率的だと感じます。