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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
2014年に11のUCIワールドチーム(現在の加盟チームは、Bora-Hansgrohe、CCC Team、Deceininck-QuickStep、EF Education First、Lotto Soudal、Mitchelton-Scott、Team Ineos、Team Jumbo-Visma、Team Sunweb、Trek-Segafredo、UAE Team Emirates)が共同で出資して設立された企業「Velon」が、9月20日に欧州委員会へUCI(国際自転車競技連合)に対する反トラスト訴状を提出しました。
Velonは「ハンマーシリーズ」という革新的なレースシリーズを展開していますが、UCIが過去1年間にハンマーシリーズの中心的取り組みであるテクノロジー分野の開発を阻害したと訴えているようです。
「UCIは規制力と政治的影響力を利用し、Velon及び加盟チームのビジネス活動を不正かつ違法な方法でブロックしている」と強めの主張をおこなっています。
ちなみにこういったケースの場合、まず、欧州委員会が当案件を審議するかどうかの決定を下すのに数ヶ月を要し、最終的な評決には更に数年かかることが一般的な様です。
また、ヨークシャーでの世界選手権の最中には、AIGCP(プロ自転車選手協会)が、来シーズン実施される予定の「UCIクラシックシリーズ」に反対の意向を表明しています。
いま、世界のロードレース界でなにが起きているのかを簡単にまとめてみます。
◯世界の自転車ロードレース界の経済的価値のヒエラルキーは「ツール・ド・フランス(ASO)」という一つのレースを頂点に形成されている(中心にしっかりとしたリーグがあるのではなくて世界に点在するレースが結果的にリーグの様なものを創りだしてきた)
◯それに対して本来の中央組織であるUCIが様々な構造改革(整備)を行ってきた(いる)
◯その過程ではASOとUCIの間に幾度も確執が生じた(ASOが持つ利権に触れるためある意味で当たり前)
◯ASOとUCIの駆け引きに痺れを切らせたチーム側がVelonを設立して「自分たちで稼げる仕組み(チームスポンサーだけに頼るのではなくて放映権料などで稼ぐ)」を構築しようとハンマーシリーズをスタートさせる
◯UCI会長がラパルティアン氏(フランス人)に代わりASOとUCIの関係は良好になる
◯するとVelonがUCIにとっての一つのリスク要因に浮上する
◯元々ASOにとってVelonはライバル的な存在(現状ではASOを脅かす存在にはまったくなっていないが...)
◯更に選手会などの小規模な団体などもそれぞれの視点で主張を行っている
改めてこうやって並べてみると、数年前に書いたブログの内容とほぼ変化がないように感じます...
「中央組織」「レース主催者」「チーム連合」「選手会」という主要ステークホルダーの利害というのは多くの面で相反するものです。
ですから、それぞれが横一線の状態で主張を繰り返せば、いつまで経っても大きな変化が起こらないのはある意味で当たり前なのかもしれません。
権力が良いとは思いませんが、正しいビジョンを持ち、高いマネージメント能力を持つ者が、全体を正しい方向へ導くために一時的に権力を持つことは絶対に必要なことでもあります。
正直、日本国内の私の周りでも同じ様なことが多々起こっています。
求む!正しく(中央で)権力を使いこなせるひと!