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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
「第74回 ブエルタ・ア・エスパーニャ」は、前半戦の折り返しとなる第9ステージまでを終え、ナイロ・キンタナ(コロンビア)がマイヨロホを着用しています。
1位 QUINTANA Nairo/Movistar Team
2位 ROGLIČ Primož/Team Jumbo-Visma +06s
3位 LÓPEZ Miguel Ángel/Astana Pro Team +17s
4位 VALVERDE Alejandro/Movistar Team +20s
5位 POGAČAR Tadej/UAE-Team Emirates +1m42s
6位 HAGEN Carl Fredrik/Lotto Soudal +1m46s
7位 EDET Nicolas/Cofidis, Solutions Crédits +2m21s
8位 MAJKA Rafał/BORA - Hansgrohe +3m22s
9位 KELDERMAN Wilco/Team Sunweb +3m53s
10位 TEUNS Dylan/Bahrain Merida +4m46s
1回目の休息日を終えた本日は、今大会唯一となる「個人タイムトライアルステージ(36km/アップダウン&テクニカルなコース)」が開催されます。
尚、総合上位勢の中ではログリッチェの「TT力」が抜きん出ており、今夜のステージを終えた段階でログリッチェがマイヨロホを着用する可能性が高いとみられています。
参考までに、今回「ビッグ4(バルベルデ・キンタナ・ログリッチェ・ロペス)」と言われている各選手間のタイムトライアル能力比較を以下に掲載いたします。
◯ログリッチェの今シーズンのITTの成績
・ツール・ド・ロマンディ第5ステージ(16km)優勝
・ジロ・デ・イタリア第1ステージ(8km)優勝
・ジロ・デ・イタリア第9ステージ(34km)優勝
◯対ログリッチェ比較
・バルベルデ:2018ツール・ド・フランス第20ステージ(31km)+38s
・キンタナ:2018ツール・ド・フランス第20ステージ(31km)+2m54s
・ロペス:2019ジロ・デ・イタリア第9ステージ(34km)+3m45s
さて、そんな接戦状態で後半戦を迎えるブエルタではありますが、一昨日の第9ステージではちょっとしたハプニングが起こりました。
レース序盤から「前待ち」として先頭集団に潜り込み、最終的に単独先頭でフィニッシュへ向かっていたモビスターの若手選手マルク・ソレルが、後ろから上がってきたチームメイトのキンタナを待つように(自身のステージ優勝を捨てて)というチームからの指示に対してテレビカメラの前で怒りを露わにしたのです。
結果的にキンタナとの合流後に前を引けた時間は僅かであり、また上りも急勾配だったので(前を引く意味があまりない)、下がらずに自身のステージ優勝を優先していた方がよかったのでは?という見方もありました。
一方で、レース後には、モビスターやソレルのTwitterアカウントが「ミニ炎上」状態となるなど、モビスターやソレルに対するファンからの批判が相次ぎました。
ソレルは翌休息日にメディアの前で謝罪をしましたが、同日にはキンタナのアルケアへの移籍が正式に発表されるなど(今回のヴエルタには出場していませんがもう一人のエースであるランダもバーレーンへの移籍が発表されており来季はソレルとマスがチームの中心的存在になるとみられる)、表には出てこない「チーム内の複雑な状況」というのが色々と垣間みえてきます...。
いつも思うことですが、自転車ロードレースというスポーツのチームプレーは、ハマればとても美しかったりしますが、一方で、レース内で起きている状況のすべてを目撃できている人間が誰もいないスポーツでもあるので、特殊な状況下での判断がとても難しいようにも感じます。
また、事実上チームスポーツであるものの、ルール上はあくまで個人競技なので、個々の評価や契約金などは、個人のリザルトや保有ポイントなどが大きく影響するのが否めない側面があります...。
今回のソレルの件も、映像だけで判断すると「わがままソレル」という印象となってしまいましたが、きっとそれだけではない事情がある様な気もするので、自転車ロードレースのチームプレーの難しさを改めて感じた次第です。