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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
経緯と内容は違えど、自転車ロードレース界のスター選手二人が「燃え尽き症候群?」的な状況に置かれています。
一人は、5月9日に「精神的に消耗している」ことを理由に所属チームである「カチューシャ」との契約打ち切りを発表したイケメンスプリンターのマルセル・キッテル選手(ドイツ/31歳)。
カチューシャへの移籍後、チームとフィットしていないといった噂が度々流れていたものの、結局、異例の「シーズン途中に契約終了」という結果となってしまいました...。
常に勝利の量産を期待されるトップスプリンターというのは、ある意味で「勝って当たり前」を前提に契約を結ぶ(契約金もそれらを織り込んでいるはず)ため、勝てなくなった時の周囲の反応というのは、なかなかヘビーなものであろうということは想像に難くありません。
結局キッテルは、2018年にカチューシャへ移籍したあと、2018年に2勝、2019年は1勝のみで、4月の途中から戦線離脱状態となってしまっていました。
そしてもう一人、こちらの真意はまだまだ謎ではありますが、昨シーズン途中から公に「ネガティブ発言」を繰り返しているのがペーター・サガン選手(スロバキア/29歳)。
言わずと知れた「怪童」サガンは、20歳でプロデビューすると、3ヶ月後の「パリ〜ニース」でいきなりステージ2勝を挙げてポイント賞も獲得。その後、世界チャンピオン3回、ツール・ド・フランスのポイント賞6回、ロンド・ファン・フラーンデレン優勝、パリ〜ルーベ優勝といった、まさに王者に相応しいリザルトを数多く残してきました。
クリス・フルーム選手(イギリス/34歳)と並んで、現代の自転車ロードレース界を代表するスター選手であり、間違いなく現役最高クラスの年俸を獲得しているトッププロ選手です。
そんな彼が最近口にしたコメントをいくつか挙げてみると...
「自転車ロードレースは退屈」
「ステージレースの平坦200kmで放送があるのはラスト100km。更にそこから残り20kmまで何も起こらない状況をテレビで観なければならない。僕だったらラスト5kmを観れば十分...」
「現在の契約が切れたらロードレースはやめるようかな...」
キッテル同様に大きな才能に恵まれ、若い頃から勝利を量産し、その結果、勝つことを宿命づけられた契約下で毎日を過ごし続けるエリート選手ならでは「悩み」なのかもしれません。
凡人からみれば「どこか羨ましい」と感じる「燃え尽き症候群?」ではありますが、しかし一方で、凡人にはわからない大きなプレッシャーのなかで彼らが一日一日を過ごしているのも事実です。
なんとなく、レベル感は違えど「みんな同じなんだなあ」と感じるできごとでありました。