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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
本場ヨーロッパでのロードレースシーズンが、欧州の比較的温暖な地域を中心にはじまっています。
J SPORTSでも、現在、通称「ルタ・デル・ソル(太陽の道)」を連日放送しており、トップ選手たちの仕上がり具合いというものを確認することができます。
2019年シーズンも本格的に動きはじめたわけですが、毎年ロードレース中継に関わっていて感じることというのは、「ロードレース選手たちの精神的タフさ」についてです。
もちろん、自転車ロードレース選手を職業にするには、「精神的タフさ」と共に「肉体的なタフさ」を備えている必要があります。
たまに「強靭な精神は強靭な肉体に宿る」という表現を目にすることがありますが、これは恐らく「強い心を持ちたければまずは身体を鍛えなさい」という意味で使われているのだと思います。
しかし、個人的には、「心を鍛えること」と「身体を鍛えること」は必ずしもセットではないとも思っています。
なぜなら「強靭な精神を持っている」ものの体力はそうでもない人はたくさんいますし、逆に生まれつき「強靭な肉体を持っている」ものの、意外と精神的に弱い人もいます。
ただ、「心」と「身体」は後天的に鍛えられるということと、そのプロセスには多くの共通点が存在しているとは感じています。
一般的に「鍛える」というと、まず連想するのは「身体」の方になると思います。
身体を鍛える時というのは、気構えが大切だといことはよく知られています。
要するに、鍛えたい箇所を意識し、自分がどうなりたいかをイメージし、その上でトレーニングを行うとより効果的であるといわれています。
一方で、ただ漠然と自分の身体を追い込み、そして適度な休みを入れずにそれを続けていけば、いずれ身体は悲鳴をあげて壊れてしまいます。
このロジックは、実は「心」の鍛え方にも共通しています。
心を鍛えるというのは、シンプルに表現すると、ストレスを感じること、逆境に身を置くことになります。
そして、身体と一緒で、これらをただ漠然と後ろ向きなメンタルで受け続けると、次第に心は疲弊していき、いずれ壊れてしまいます。
ただ、心も身体と同じで、ストレスや逆境をトレーニングの要素として割り切り、その負荷を超回復のための道具として前向き利用していければ、フィジカルトレーニングによって身体がブラッシュアップしていくように、心もストレスや逆境を利用してブラッシュアップされていくわけです。
結果的に、心と身体の強靭さというのはイコールになっいくのかもしれませんが、要するに、効果的に身体を鍛えられる人というのは、効果的に心を鍛えるやり方も知っているということになります。
今年もロードレース選手たちの精神力から多くの勇気をもらっていきたいと思います。