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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
本日は、「ツアー・オブ・ジャパン 富士山ステージ」のコース視察のため、静岡県小山町へ行ってきました。
2019年の「富士山ステージ」は現状で大きな変更は予定しておりませんが、それでもちょっとしたマイナーリニューアルを実行する可能性があります。
但し、周囲からみれば「2018年とほぼ同様」という印象になるかもしれません...。
しかし、自転車ロードレースのコースというのは、仮に前年と全く同じコースをつかって開催したとしても、まるで「生き物」の様に様々な変化をみせるものです。
特に、あらゆるリスクを想定しての安全対策や、周辺住民の皆さまなどへの周知徹底については、恐らく「世界で最も厳しい条件を課せられる状況」と言っても過言ではありません。
そこで「表には出ない変化」というものを参考までに以下に挙げてみます。
◯道路の形状というものは刻一刻と変化している(その都度対策が必要)
◯街自体も刻一刻と変化している(同様に都度対策が必要)
◯開催スタッフの入れ替わりも少なくなく経験者が抜けるだけで大きな負担となる
◯道路使用許可及び管理側の担当者が変わるだけで負荷が劇的に大きくなることもある
◯レースコース以上にスタートフィニッシュなどの場所が変わるだけでも大変
◯コースが変わると生活道路や抜け道の再確保が必要となる
「ツアー・オブ・ジャパン」は基本的に全ステージ「周回コース」を使用しての開催となっています。
私自身、以前(なにも知らない若かりし頃)は、「やっぱりロードレースはラインレースでしょ!」と思っていた時期もありましたが、自分自身がロードレース主催者の仕事に就き、そして、国際レースの自立と継続性を考えた場合、特に(お金を出す)開催地域へのメリットの提供を考慮すると、日本国内でのラインレースの開催はかなり厳しいと感じるようになりました。
たしかに「ラインレース」はライブ映像を通して観戦すればとてもエキサイティングですし、参加するチームや選手たちも楽しいと感じることでしょう。
しかし、「ラインレース」の開催経費や各種準備、ボランティアの数、現地観戦する人たちへの楽しみ方の提供、そしてなにより開催地域への明確な費用対効果の提示が難しいことなどを考えると、各種負担に対してのリターンがとても低いという結論に達するのです。
最初にお話しした様に、日本国内の道路使用許可などの現状を考えると、例年コースを変えてのラインレースの開催は、よっぽど大きく安定した財源と、経験豊富なスタッフなどが揃っていなければ、長期間に亘ってそれらを維持していくのはとても難しいように感じます。
そんな実情も知っていただきながら、引き続き国内ロードレースを楽しんで(見守って)いただければ幸いです。