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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
photo(C):Tatsuya.Sakamoto/STUDIO NOUTIS
JBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)が運営している国内最高レベルのロードレースシリーズ戦 『2016 Jプロツアー』 が、10月30日(日)に大分市にて開催された 『おおいたサイクルロードレース』 を最終戦に長かった全23戦の戦いを終えました。
個人年間総合優勝(ルビーレッドジャージ)を飾ったのは、マトリックス・パワータグのホセ・ビセンテ・トリビオ選手(スペイン)。また、チーム年間総合優勝を飾ったのは、チーム右京となりました。
今季は、史上初めてJプロツアー全戦を J SPORTS で可能な限り開催日当日にダイジェスト放送し、これまで露出面に於いて恵まれていなかった同シリーズ戦を一般の方が観れる環境が飛躍的に向上しました。
もちろん、まだまだ多くの改善点を抱えている同シリーズではありますが、それでも私が 『国内レースの整備の必要性を感じ行動をはじめた15年前』 に比べれば、本当に多くの面で改善が進んでいます。
なかにいるとどうしても問題点ばかりに目がいってしまい、『良くなったこと』、『改善されたこと』、というのは皆忘れがちになってしまいますが、現在のレース環境が以前に比べて別モノ(産みの苦しみで表面上劣化しているようにみえる部分も当然ありますが...)になっているのは紛れもない事実といえます。
私が 『ミヤタ・スバル』 の監督として実業団レースのテコ入れに力を入れはじめた当時は、国内チームの 『海外シフト』 が加速していた時期でもあり、『実業団レースは記録会』、『もうこのレースはなくなっても良い』 といった声がリアルに飛び交っていたりもしていました...
事実、年間数レースレベルまで開催レース数が減り、また、国内有力選手の出場も極端に減った時期もありました。
それが現在は多くの外国人選手が流入し、レースのレベルは時に他のUCIアジアツアーよりも高い時すらあります。
また、自国で行き場を失った外国人選手が来日し、Jプロツアーを戦いながら日本やアジアのUCIレースを走ってポイントを獲得しつつ、息を吹き返して再び自国のチームに返り咲くというパターンも出現しています。
私はよく現在の国内ロードレース界を 『サッカーJリーグ発足5~10年前の日本サッカー界に似ている』 という表現を使っています。
そんな中、当時のサッカー界同様に、Jプロツアーを走る助っ人外国人選手たちが新たな歴史を刻みはじめました。
年間王者に輝いたトリビオ選手が所属する 『マトリックス・パワータグ』 のFBに掲載された安原監督のコメントがとても印象的だったので、安原監督に了解を得た上で、以下、ご紹介したいと思います。
『チーム結成10周年にホセがやってくれました、マトリックス初のルビーレッドジャージ、一昨年右京さんのチームやめたって聞いてダメもとでチームに誘いました。よそとも話あったけどうちに来てくれました。日本に来て4シーズン目、総合1位2回、去年は2位、うちに来て落ちたって言われたくない一心で頑張ってくれた。「毎年めちゃしんどい」って日本語で(大阪アクセント)言ってるけど、まあそやな~、毎年その年のトップの日本選手に目標にされるからなー。去年は強敵、畑中(チーム右京)、アイラン曰く「ハタナカ、ディスイヤーベリーストロング」に、敵チームいた土井にばっちり嫌がらせされてノイローゼになってからなー。今年はその土井を味方につけかなり心強い。しかしながらやはり強敵、増田(宇都宮ブリッツェン)!ホセ曰く今Jプロツアーで「ワールドツアーでいける」って認める唯一の日本人レーサーでライバル。後半アクシデントで離脱、ルビーレッドジャージとったけど「ちょっとハッピーじゃない」ってやはり最後まで勝っても負けても増田とやり合いたかった、そのホセが尊敬する増田はやはり最終戦ばっちり決めきたわな。うちはよそに比べて予算少ないから、月のもん、あんまり高くないのに「お金関係ないマトリックス好きだから、来年も走らせて」ってスペイン人なのに俺好みの浪花節ヤロー。来年もな一緒に暴れようぜ、ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア。監督。』
かつて、『ブエルタ・ア・エスパーニャ』 に3度出場し、『ブエルタ・ア・ポルトガル』 でステージ優勝の経験もあるトリビオ選手が、一時期日本のチームですら離れていった実業団レースに活路を見出し、文句も言わずにプロとして黙々と戦う姿に 『新たな文化の創造』 を感じずにはいられません。
来年もまたどんなドラマが待ち受けているのか今から楽しみです。