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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
3月9日、UCI(国際自転車競技連合)がCIRC(自転車競技独立改革委員会)による227ページのドーピング関連レポートを公開しました。
衝撃的な新たな事実が含まれているわけではありませんが、これまでの 『事件』 や 『ウワサ』 などが、関係者らの証言などをベースに改めてキッチリとまとめらた内容となっています。
この中で個人的に気になったのは、内部証言として 『未だに先頭集団の90%はなんらかの薬物に手を出しているのではないか...』 という一文です。
また、他の証言者はこの数字を20%とも話しているようです。
90%と20%とではだいぶ開きがありますが、どちらの数字であっても、事実ならば大きな問題であることに変わりはありません。
そんな中、先日、AG2Rのロイド・モンドリーが、2月17日の競技外検査でEPO陽性の疑いがある(Aサンプル)というニュースが入ってきました。
モンドリーは、2004年からAG2R一筋の12年目のベテランで、近年 "クリーンな国" と言われてきたフランスの選手です。
実は、AG2Rに所属しているフランス人選手からは、過去2年半のうちに3度の陽性反応がでています。
2012年9月21日 ストゥヴ・ウアナール/EPO/競技外検査
2013年5月10日 シルヴァン・ジョルジュ/ヘプタミノール/ジロ・デ・イタリア第7ステージ後検査
2015年2月17日 ロイド・モンドリー /EPO/競技外検査(Aサンプル)
ジョルジュの陽性反応のあと、AG2RはMPCCの独自ルールにより、自主的にレースへの出場を一定期間自粛しました。
そして、今回のモンドリーのAサンプル陽性の結果を受け、GMのヴァンサン・ラヴニュは 「恥ずかしい」 と嘆き、パリ~ニース出場中のチームメイトたちも 「憤っている」 とメディアの前で語りました。
それにしても、何故、このタイミングで、ドメスティックなフランスのベテラン選手からEPOなのか?
ここ数年、ディルーカ(イタリア)、サンタンブロージョ(イタリア)、ラボッティーニ(イタリア)、イグリンスキー兄弟(カザフスタン)らがEPO陽性となりチーム存続が揺らぐほどの大きな騒ぎとなりました。
(実際にはチームは存続していますしグランツールにも出場し続けていますが...)
また、EPOが検出可能レベルになってきていることは選手たちも十分に認識しているはずです。
にも関わらずなぜ懲りずにEPOなのか?
ただ気になるのは、今回のEPO陽性反応が 『競技外検査』 であるという点です。
ディルーカが3度目のEPO陽性で事実上の永久追放となった際に 『検査官が6時間早くもしく6時間遅く来ていれば陽性にはなっていなかっただろう』 と逆切れ発言をしていたのを思い出します。
問題は "EPOを使ったかどうか?" ではなく、"いつ検査されたか?" なのかもしれません。
だとすると、"やっている人間" からすれば、EPOで陽性になるということは、スピード違反の "ネズミ捕り" に捕まるのと同じ感覚なのでしょうか?
『それでも良い方向へ向かっている』 という多くの関係者たちの言葉を信じたいと思います。