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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
UCIとWADAがCASに上訴していたコンタドールのクレンブテロール検出問題について、2月6日にCASがコンタドールの2年間出場停止処分を決定したとのこと。
これにより、コンタドールの2010年ツールと、2011年ジロのタイトルは剥奪され、それぞれ、アンディ・シュレクと、ミケーレ・スカルポーニが繰り上げでチャンピオンとなるようです。
コンタドールは既に暫定で一定の出場停止期間を受け入れていたので、復帰は今年の8月6日からとなり、来季から再びプロトンに戻ることができます。
今回のクレンブテロール検出問題…
2010年のツール期間中(休養日)のドーピングコントロールでコンタドールの尿から検出されたクレンブテロールの量は約50ピコグラムと報道されています。
クレンブテロールは、通常、気管支拡張剤として処方される薬品ですが、一方で筋肉増強作用もあると言われています。
専門家は、コンタドールから検出されたクレンブテロールの量は、実際に効力を発揮する量の約500分の1程度の量だとコメント。ただし、量がどうであれ、禁止薬物のクレンブテロールが検出された以上は、規定の処罰を受けなくてはいけないというのが現在のルールとなります。
コンタドールサイドは、汚染された牛肉を食べたのが原因と主張してきましたが、結局、それらを立証する証拠が不十分だったようです。
ロードレースのドーピング問題については、これまでも何度もこのブログで触れてきました。
一般メディアで報道されている内容というのは、確実に情報量が少なく、サイクリング界から見ればかなりアンフェアで偏ったニュアンスで伝えられていることが殆どです。
しかし、ある意味で事実なのもたしか…
今回、CASに上訴したのは身内でもあるUCIでした。
スペイン自転車競技連盟が一旦は無罪としたサイクリング界の王様に対する判断に対して、UCI自らが戦いを挑むという図式は、他のスポーツ界ではまず見ることのないカタチだと感じています。
結局のところ、こういった問題というのは、真相は最後まで闇の中であることが一般的です。
以前のブログにも書いたように、我々ファンは、単純に『ルールを守っているか?』、『そうではないか?』で判断していくしかありません。
よく比較として使われるのがクルマのスピード違反…
制限速度40km/hの道路を50km/hで走っていれば、法律上、処罰を受けることになります。
以前は制限速度が60km/hだった道路が知らぬ間に40km/hに切り替えられいて、そこを50km/hで細心の注意を払って運転していたとしても、捕まってしまえば基本的にいかなる言い訳も聞き入れてはもらえません。
問題になるのは、どの様な状況で何故50km/hで走っていたかではなく、50km/hで走っていたという事実だからです。
オーディオの音量を大きくしてノリノリでくわえタバコで危険な運転をしていても計測地点で計測された速度が40km/hならOK。
全神経を運転に集中させて、同乗者全員に周囲を確認してもらいながら安全運転していたとしても50km/hなら形式上アウトとなります。
残念ながら世の中に存在している多くのルールはそういうものなのです…
個人的には、強くてクリーンなコンタドールが再びプロトンに戻ってくるのを待ちたいと思っています。
現状では、表面上ネガティブな報道が続くロードレース界ですが、僕は、彼らが臆病者でも、怠け者でもないことをよく知っているつもりです。
理不尽なほど危険で厳しく、そして苦しい戦いに勇敢に挑む偉大な戦士であると心から信じています。
問題があるとすれば、競技に対して真面目に取り組み、そして生活の多くを犠牲にしながら困難や矛盾に立ち向かわなければならない競技特性が、ある意味で問題を複雑(自転車界全体が政治的な意味で世渡り下手)にしてしまっているのかもしれません。