しゅ~くり~む ら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

最近のエントリー

カテゴリー

アーカイブ

2011/02

S M T W T F S
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28          

このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。

栗村修の日常 2011年02月10日

リッコに対する報道

しゅ~くり~むら by 栗村 修
  • Line

リカルド・リッコが入院しているという報道が流れています。

自己輸血の失敗によって腎臓機能に障害が発生したとのこと。あくまで非公式な情報ですが…

感情的に今の気持ちを表現するならば「消えろクソ野郎」ですがそんなことを言っても何もはじまりません。

リッコが何故違反行為から抜け出せないかを考えるのも無駄でしょう。

答えは簡単です、彼がその様な種類の人間(個体)であるからです。

もちろん、人は変わることはできますが、人間という生命体は、様々な個体が存在している状態が正常な姿であってそのことでプラスの「バランス」を作り出しているのもまた現実なのです。

また、「ルール=善悪」というものは、人間自身が作り出している「多数派の価値基準」であり、時代や地域によってもその内容は様々だったりします。

向かうべき方向は、彼のような個体が存在していることを否定することではなく、彼のような個体とルールをどう関連付けていくかだと思います。

更に、具体的な問題としては、以前にも書いたように「ドーピング」という非常に曖昧かつなんの意味も持たない言葉を、未だに正式な「禁止薬物判定機関」や「メディア」などが使い続けていることにもあります。

いい加減に、「ドーピング」ではなくて、「メディカルルール違反」の様な、意味のある言葉に変えていくべきです。

ただし、現在の文明において、人間社会から「ルール違反」という行為が全て消えると信じている人はいるでしょうか?

地球上の70億人全てに均一の規律を与えて、70億人全てが厳密にそれを守れると信じる人はいるでしょうか?

極端な表現ですが、今の自転車界は、自転車界という小さな地球でまさにそれを実行に移そうとしているようにみえます。

もしそれを実行したいならば、裁く側が明確な数値目標(例えば2020年までにメディカル違反件数を年間0件に設定するなど)を持ち、更に明確な違反判定基準と罰則を設定して、それをオートマティックに発動するしかありません。

そして、罰則に関しては、ルール違反が判明した個体(選手)を機械的に排除していくしかないでしょう。

このやり方では冤罪も多く含まれるかもしれませんが、ある意味で「人間という存在」自体にチャレンジしているわけですからそれも仕方ないと思います。

恐らく、それでもメディカル違反件数はゼロにはならないでしょう。
繰り返しになりますがそれが人間という生き物だからです。

薬品使用コントロールの分野で他のスポーツと比べて非常に進んでいる自転車界は、間もなく新たなステージへの選択を強いられる予感がします。

それは、上に書いた「明確かつ厳格」な機械的ルールの設定と、有無を言わさず発動する無慈悲な罰則という組み合わせであり、「控訴」や「出場停止期間」などの猶予は一切排除する仕組みを構築することです。

ルール違反を犯すことは、選手にとっては「死」を意味することになるでしょう。

そして、もう一つの選択肢は、「全てを自由化する」ことです…

個人的には前者の道に進むべきだと思います。

今更、後者を選択するなど私には考えられません。

但し、前者の道に突き進んだとして、このスポーツがどの様な姿になっていくのかは正直なところ分かりませんが…

言い換えてみれば、どんな種類の犯罪であっても「死刑」を宣告するような法律を設定する国になるのと同じだからです。

「何故、自転車界はドーピングが絶えないんですか?」という質問をたまにされます。

非常に過酷な競技特性上、薬品使用による競技結果への影響が顕著だからという見方がありますしそれは否定しません。

しかし、真実というのは、このスポーツが非常に難しい難題に真摯に立ち向かっているため、どの分野にも一定の割合で存在している「不正者」を、自転車界自らが厳格に判定し晒しているからこその結果だと考えています。

  • Line