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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。

栗村修の日常 2010年05月31日

勝利の意味

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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5月のUCIレース連戦を締めくくる「ツール・ド・熊野」が終了しました。

ご存知のように、宇都宮ブリッツェンは辻選手が「第1ステージ」でステージ優勝を飾り、更にリーダージャージも獲得。

今シーズン、「JCT熊谷クリテリウム」で3位、更に「JCT白浜クリテリウム」でも3位、そして「TOJ東京ステージ」でもリザルトこそ残らなかったものの終盤の逃げに乗って会場を盛り上げる走りをみせるなど、辻選手は期待のかかった全てのレースでキッチリと仕事をこなしてきました。

辻選手の走りの特徴というのは、高い集中力を武器にメリハリのあるレースを展開する部分にあり、その為にも彼にはレースを走るための「強い動機」と、「やる時にやる」ための「前向きなオフ」が必要になります。

今回の熊野で辻選手が成し遂げたステージ優勝は、彼自身と、そして地域型チームの我々にとって、更にはJサイクルツアーというレース自体にも、大きな意味をもたらしたと思っています。

辻選手にとっての今回の勝利というのは、実質的にこれまでの彼のキャリアのなかで最高の「勝ち」となったことは言うまでもありません。

世界の舞台で結果を残してきたトップライダーが集う12名の先頭集団に入り、更にそのなかで展開に加わり、最後は自らの力(スプリント)で勝利をもぎとった訳ですから、高い評価を得るのは当然でしょう。

そしてもうひとつ、第3ステージの「集団ゴール」に於いてステージ4位(日本勢では最上位)に入ったことも評価しなければなりません。

今シーズン、辻選手は「逃げるレース」のなかでよい結果を残してきていますが、彼自身がまだあまり自覚していない才能一つである「バンチスプリンター」への可能性を示しているからです。

次に、チームにとってのこの勝利の意味とは、「発足わずか2年目の地域型チーム」が、UCIレースで勝利を挙げ、UCIポイントを獲得したという事実に尽きます。

我々は、国内のみで活動を行っており、他の有力チームの様に“トレーニングのため”に海外のステージレースを走ったりはしていません。

以前にも書きましたが、自転車ロードレースは「レースがトレーニング」になるため、レベルが合っているレースをたくさん走ることは、それだけで、レースを走っていないチームや選手たちに対してアドバンテージを得ることができます。

だからといって、我々はアジアツアーなどを転戦していないことを言い訳にする気はなく、「国内の活動のみであるレベルまで達するシステムを作る」というポリシーがある以上、今後も自分たちのスタンスを「一定期間」は守っていきます。

辻選手の勝利というのは、国内の地域型チームが、レースや科学的トレーニングなどの「お金」のかかる手段を使わずとも、UCIレースでも勝つことができるという事を証明したことになり、今後、宇都宮ブリッツェンをモデルに立ち上がるかもしれない「新たな地域型チーム」への希望に繋がるはずです。

そして最後に、「Jサイクルツアー」にとってもこの勝利というのは意味のあることだったでしょう。

先に書いた「地域型チームにとっての勝利の意味」とかぶりますが、Jサイクルツアーを主戦場としている宇都宮ブリッツェンが、UCIレースで勝ち、リーダージャージを獲得したわけですから、Jサイクルツアーのレベルの高さと価値を証明したことになり、現在、Jサイクルツアーに登録しているチームや、将来、Jサイクルツアー参戦を目指しているチームにとっての良いニュースとなったのは間違いありません。

宇都宮ブリッツェンというチームは、企業型チームと違い、「誰でも作れるチーム」の見本だと自負しています。

周りからは若干違った様に見られているかもしれませんが、我々のチームの実情というのは、国内の企業型チームの規模や待遇に比べると、むしろショップ型チームや、独立型クラブチームの内情に近いのが現実です。

将来、「日本の地域対抗シリーズ(Jサイクルツアー)はレベルが高くてサラリーが良いらしいよ」

そんなウワサが欧州の選手たちの間で語られる日が来ると信じてがんばっていきます。

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