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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。

栗村修の日常 2010年05月12日

学生(大学生)自転車競技界

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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先週末、小坂選手と若杉選手が、「修善寺オープンロード」という学生連盟主催のレースに参加しました。

通称「学連」と呼ばれる同連盟は、「インカレ」や「学生選手権」などの大会が軸にある「大学の体育会の競技」を統括する団体と説明すれば分かりやすいかと思います。

同様に、インターハイなどが軸となっている高校生のための競技を統括しているのが、通称「高体連」です。

かつては、我々が活動している実業団連盟(※高校生でも大学生でも実業団登録は可能だが他の連盟との二重登録は不可)の登録選手が、学連のレースに出場する事は認められていない時代がありました。

当然その頃は、学連登録の選手が実業団レースに出場することもできませんでした。

しかし近年、各連盟の垣根が取り払われつつあり、実業団レースに大学生がチームで登録を行えばレース参加は可能となり、また、上記のレースの様に、学連主催のレースに実業団登録の選手がエントリーすることも可能となっています。

このことは、選手数やレース数が本場欧州に比べて少ない日本にとっては、レースを走る機会が増えることに繋がるので非常に良い流れと言えるでしょう。

今回、大学生のレースに、宇都宮ブリッツェンの選手たちと参加してみて感じた事は、学連のレースが数年前に比べて非常にうまくオーガナイズドされてきており、事実上日本のU23の選手たちの受け皿となっている同連盟の環境が良い方向に向かっているという事実でした。

そして、レースでは、不調の小坂選手や若杉選手が思った様に動けず、ゴール後、かなり落ち込んだ表情をみせました。

小坂選手は実際に現役の大学生(4年)ですし、若杉選手も大学に通っていればまだ3年生の年齢です。

日本では、何故か「実業団選手>大学生」という古臭い図式が定着していますが、大学で走っている選手達というのは高校時代にインターハイなどで活躍したエリート組も多く、スポーツ推薦で大学に入っている以上、その練習環境はそこいらの実業団選手よりも優れたものを得ています。

正直なところ、小坂選手や若杉選手らよりも経験は豊富ですし、練習量もより多くをこなしてきているでしょう。

しかし、ブリッツェンの二人は学生のレースで走れなかった自分を責めているふしがあり、それはある意味で大学生を見下していることにも繋がります。

このことは、小坂選手と若杉選手に非があるわけではなく、実際の実力や環境が、カテゴリーに正常に反映されていない国内レース界の歪みに起因しているとも考えられます。

常々私が言っていることは、レースに於いて強いものは、バックグラウンドに関わらず評価されるべきということです。

今回のレースで、ブリヂストンのエリート選手を下して優勝した西薗選手は、非常に優れた選手であり、パワートレーニングを主体としたかなり厳しいトレーニングを積んできています。

「大学生なのにプロに勝った」、これは褒め言葉に聞こえますが、逆に西薗選手を子供扱いしている表現にも聞こえます。

大学生の中には、実業団選手よりも高いモチベーションを持ち、より多くの練習時間と環境を作り出して日々精進している選手はたくさんいます。

そして、先に書いたように、学連のスタッフの方々も、より優れた競技環境を生み出す為に正しい努力を進めてきています。

小坂選手と若杉選手は、6月に開催されるU23全日本選手権ロードで、「23歳以下の全日本チャンピオン」を懸けて再び彼らと戦います。

その時は、決して「格下」と戦うという意識は持つべきではないでしょう。

たしかに、小坂選手と若杉選手は「UCIコンチネンタルチーム」という、ある意味でプロと呼べるチームに在籍していますが、その事だけで無駄なプライドは持つべきではありません。

バックグラウンドがどうであれ、スポーツというものは、対戦相手よりも「優れた才能」と、「より多くのトレーニング」が必要になります。

勝てないのは、そのどちらかが不足しているからです。

相手を知り、相手の優れているところを尊敬し、その上で叩きにいかなければ勝つ事は難しいでしょう。

そして、学連と実業団の間にある垣根というものが、今後、より正常に取り払われれていけば、若い選手たちの可能性はより大きくなると感じています。

(ブログ更新サイクルが戻ったあ〜)

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