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サイクル ロードレース コラム 2025年5月21日

ジロに翼を授ける新ルール「レッドブルKM」が新登場!画期的な新要素でレース展開も変化!?|ジロ・デ・イタリア2025

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ジロの新たな要素として加わったレッドブルKM

2025ジロ・デ・イタリアの総合成績に影響を与える新ルール「レッドブルKM」が導入された。21ステージ中、個人タイムトライアルを除く19ステージに、レッドブルセクターとして1kmの特別区間が設けられ、セクターが終わる地点を最初に通過した3人の選手に、1着6秒、2着4秒、3着2秒のタイムボーナスが与えられ、個人総合成績から差し引かれる。

レッドブルといえばオーストリアに拠点を置くエナジードリンクメーカーだが、F1やサッカーなどのメジャースポーツに出資している。スポーツ選手の個人スポンサーも積極的で、高梨沙羅や小林陵侑、紀平梨花、中村輪夢などがレッドブルアスリート。今回のジロ・デ・イタリアに出場しているワウト・ファンアールトトーマス・ピドコックも同様だ。

レッドブルからサポートを受けるファンアールト

また札幌の大倉山スキージャンプ台をランニングでかけ上る「レッドブル400」や神社仏閣の石段をダウンヒルバイクで下ってタイムを競う「ホーリーライド」など、「こんなことしていいのか?」と心配になるほど奇想天外な新競技を発案し、幅広い世代への販路拡大を狙っていることでも有名だ。今回の「レッドブルKM」もある意味ではそういった奇想天外レースの導入だ。

レッドブルKMとボーナスタイムの違いとは?

言語による違いはありそうだが、「レッドブル・キロメーター」と読むようだ。総合成績から差し引かれるボーナスタイムを授与する唯一の中間ポイントとなる(個人タイムトライアルを除く19ステージのゴール順に10、6、4秒のボーナスタイムは別にある)。主催者の発表によれば、「これまでにない画期的な新ルール」というが、これまでにも中間スプリントポイントでボーナスタイムは提供されていた。今回のレッドブルKMはそれとどう違うのか?

レッドブルKMのイメージとしてはステージ途中にレッドブルがスポンサーする1km区間を設定し、その最後のラインを通過した上位3選手に規定のボーナスタイムを与えるというもの。当然レースはこの1kmセクターに到達する前に動きがあるはずで、逃げている選手が設定ラインに先着するので、サイクルロードレースとしての競技上は1kmセクターというよりも最後のラインのみが重視される。

これまでの中間スプリントポイントはステージのおおよそ中間あたりに設定されることが多く、序盤で第1集団を形成した選手たちがボーナスタイムを独占していた。総合成績で大きく遅れた選手が逃げを容認されやすいサイクルロードレースの特性があって、彼らがボーナスタイムを獲得してもマリア・ローザ争いにはあまり影響しなかった。

今回のレッドブルKMは比較的ステージ終盤の重要なポイントに設定されることが多く、総合成績の上位選手が積極的にボーナスタイム獲得に挑む必要があることがこれまでと異なる点だ。例えば第20ステージは残り32km地点、最高地点「チーマ・コッピ賞」が設定されたコッレ・デッレ・フィネストレまであと4.3kmのところだ。

各ステージのレッドブルKM地点
第1ステージ サウク(残り48km)
第3ステージ ヒマラ(残り72km)
第4ステージ オツニ(残り105km)
第5ステージ ベルナルダ(残り51km)
第6ステージ ブルシャーノ(残り52km)
第7ステージ タリアコッツォ・チェントロ(残り13km)
第8ステージ カステル・サンタ・マリア(残り20km)
第9ステージ コッレ・ピンズト(残り14km)
第11ステージ ヴィラ・ミノッツォ(残り24km)
第12ステージ ブレシェッロ(残り33km)
第13ステージ アルクニャーノ(残り10km)
第14ステージ マンツァーノ(残り62km)
第15ステージ エーネゴ(残り33km)
第16ステージ ブレントーニコ(残り10km)
第17ステージ レ・プレセ(残り25km)
第18ステージ シルトリ(残り57km)
第19ステージ サン・ヴァンサン(残り37km)
第20ステージ ベルジュリー・ラ・カセット(残り32km、コッレ・デッレ・フィネストレまで4.3km)
第21ステージ ローマ・サングレゴリオ通り(残り25km)

新要素でレースが活性化

「チーム戦略としてブレイクアウェイを試みてボーナスタイムを争うというモチベーションを与えます。アタックしたい選手とメイングループの駆け引きは、世界で最も過酷なレースを見守るファンにさらなる興奮をもたらすことになるでしょう」と主催者側は期待する。

ログリッチはレッドブルKMについて肯定的な意見を示す

一方で選手はどう捉えているのだろう?
「レッドブルKMはうれしい驚きで、うまくいけば楽しく、なんらかのアクションをもたらすだろう」とログリッチ。そして「元チームメイトのワウト・ファンアールトがこのルールを活用してくるんじゃないかな。レッドブルKMのために彼とスプリント勝負する必要がないことを願っているよ」

実際のマリア・ローザ争いにおけるレッドブルKMのボーナスタイム付与をみてみよう。第9ステージでは残り14km地点に設定され、ここをトップ通過したのがイサーク・デルトロ。この時点でボーナスタイム6秒を獲得し、さらにステージ2位になって6秒。この日だけで12秒が個人総合時間から差し引かれることになり、結果としてデルトロはアユソに1分07秒先着しただけでなく、プラス12秒が加わって、総合成績で大差をつけて逆転している。

レッドブルKMをトップ通過した選手は翌ステージ(タイムトライアルを除く)で青地のナンバーカードを着用するというところも興味深い。

文・山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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