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ジロ序盤戦を盛り上げたトレック勢!5戦3勝のピーダスンに期待の新星ヴァチェク|ジロ・デ・イタリア2025
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸リドル・トレック勢が序盤のジロを席巻
ジロ・デ・イタリア第1週で大成功をおさめたチームといえばリドル・トレックだろう。エースナンバーをつけるジュリオ・チッコーネ(イタリア)、スプリンターのマッズ・ピーダスン(デンマーク)、そして若き期待のマティアス・ヴァチェク(チェコ)が国際映像のテレビ画面に映らない日はなかった。
まずは大会初日にピーダスンが得意のゴールスプリント勝負を制して、2023年の第6ステージに続くジロ・デ・イタリア2勝目を挙げた。初日にトップフィニッシュするということは個人総合とポイント賞1位のリーダージャージがついてくる。2019年の世界チャンピオンで、29歳になるピーダスンはさすがにヤング・ライダー賞の対象選手ではないが、初日の優勝者会見で、「翌日は距離の短いタイムトライアルで、それほど苦手ではないからマリア・ローザを守れる自信はある。うまくいかない場合は、チームメイトのヴァチェクが引き継いでくれることを願う」とコメントしている。
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将来の総合エース、ヴァチェクに掛かる期待は大きい
ピーダスンが気にかける22歳の若手選手がヴァチェクだ。タイムトライアルに強いし、山岳もいける。今大会はアシスト要員だが中規模ステージレースなら勝てるし、将来的にはグランツールでエースになることが期待される逸材。その評価を証明するように第2ステージの個人タイムトライアルでは6秒遅れの区間5位に。この日終わってピーダスンは1秒差でプリモシュ・ログリッチにマリア・ローザを奪われてしまうのだが、依然総合2位に踏みとどまり、そしてヴァチェクが5秒遅れの総合3位に浮上し、ヤング・ライダー賞で首位に立った。
ヴァチェクは今大会で株を上げた選手の1人
首位から陥落したピーダスンも黙っていない。第3ステージはピーダスンにとって限界ギリギリの過酷なコースだったが、ピーダスンが得意とするゴール勝負に持ち込もうと、総合成績の上位を目指すチッコーネまでもが最後に機関車役。最終発射台をヴァチェクが務め、ピーダスンがゴール勝負を制した。今大会2勝目、そして総合成績で首位を奪還した。
「ヴァチェクは素晴らしい選手だ。彼には素晴らしい未来が待っている。彼のような選手が僕のために走ってくれることを誇りに思う」とピーダスン。もちろんチーム総合成績の1位も付いてきたのは言うまでもない。
イタリア本土に戻っても止まらないピーダスンの勢い
ピーダスンの進撃はイタリアに戻り、第5ステージをフィニッシュしても揺るがない。第5ステージで今大会3勝目。つまり5区間で3回勝ったわけだが、それを影で支えたのがヴァチェクだったことは区間3勝とマリア・ローザのピーダスンの記者会見コメントからも明らかだ。
5戦3勝を挙げ28年ぶりの快挙を成し遂げたピーダスン
「この日は本当にハードで、レースをコントロールするヴァチェクにペースを落とすか、そのまま走って勝ちに行ってくれと頼んだほどだ。最後の勝負でもヴァチェクが主導権を握ってくれた。彼は1日中僕のために走ってくれた。本当にその強さには驚かされる」とピーダスン。今回の大活躍が決定打となって、チームはピーダスンと現役を続ける限りの生涯契約を締結したという。
そんなヴァチェクは本格的な山岳コースに突入しフアン・アユソにヤング・ライダー賞で逆転されてしまったが、「いつかはピーダスンのようなクラシックに勝てる選手になりたい」と夢を語る。今大会で一層、信頼関係を強めたリドル・トレックが、この後のジロでどんな走りを見せてくれるのか。中盤戦以降のレースでも注目していきたい。
文:山口 和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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