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「ついに」という言葉がこんなに似合う選手は、他にはいないかもしれない。2009年はジロ(2位2回、3位1回、第15ステージで棄権)、さらにツール(2位2回、3位2回)でずっとステージ勝利を探し求めてきたタイラー・ファラー(ガーミン・スリップストリーム)が、今年3つ目のグランツールで、ようやく待ちに待った栄光を手に入れた。さらには所属チームのガーミン・スリップストリームにとっても、2008年ジロ——チーム史上初めて参加したグランツール——の初日チームタイムトライアルで衝撃的な勝利デビューを飾って以来、なんと1年半ぶりの勝利であった。
翌日は休養日、しかも2日後からは難関山岳3連戦が始まる。その前に何かしておきたい選手たちが、スタート直後から激しくアタックを試みた。実に39kmにもわたって飛び出しては吸収のパターンが繰り返され……。こんな状況を打破したのは、もはや「逃げの常連」と言ってもいい選手たち。ツール・ド・フランスでスーパー敢闘賞(=3週間にわたってよく逃げた印)を手に入れたことのあるダビ・デラフエンテ(フジ・セルヴェット)とアメッツ・チュルーカ(エウスカルテル・エウスカディ)に、第3・8ステージですでに長距離逃げたジョニー・フーガーランド(ヴァカンソレイル プロサイクリングチーム)、さらに同じく第8ステージで大逃げ区間2位に入ったダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)の4人が、この日最初の1級峠登りで先頭集団を形成した。
ところで逃げメンバーの約2名が狙っていたのは、単なるエスケープによる大逃げ勝利だけではない。8ステージ終了後に山岳賞を手にしたモンクティエと、9・10ステージの逃げで山岳ジャージを奪い取ったデラフエンテは、ボルドー色を巡る直接対決の真っ最中だったのだ。しかもわずか4ポイントのリードを守り切るために、なんとデラフエンテは3日連続で逃げに乗った。ただし昨日のゴール時に「本来なら今日(第10ステージ)は逃げずに体を休めなきゃなかったんだけど」と語っていた通り、やはり疲労が蓄積していたのだろうか。山頂到着前に他の3人のリズムについて行けなくなり、そのままモンクティエに先頭通過を許してしまった。さらにこの日2つ目の峠(2級)でもモンクティエが危なげなくトップポイントを稼ぎ出す。結局、昨ブエルタ山岳王が総合で14ポイントのリードを奪い、大切な山岳賞ジャージをたった1日で取り戻した。
山岳賞よりもマイヨ・オロや総合表彰台に興味のある選手たちは、総合首位からわずか4分41秒差で16位につけるフーガーランドが逃げ集団にいるの気に入らない。だからステージ前半は逃げ集団を9分差で泳がしていたメイン集団も、徐々にスピードを上げて、2つ目の峠を下ったところで3人を完全に吸収した。同時にレミ・ディグレゴリオ(フランセーズデジュー)がカウンターアタック。彼もまた数日前に腹痛に苦しめられ、今ブエルタ最初の頂上フィニッシュでは最下位という屈辱を味わっていた。ようやく復調した体を確かめるように、前方でしばらく奮闘を続けた。ちなみにこの日のディグレゴリオは自転車にサイクルコンピュータを搭載しておらず、しかも無線が故障していたそうだ。自らのインスピレーションだけを頼りに、風の中に飛び出したことになる。
ただし難関山岳3連戦の前に何かしておきたいと強く願ったのは、スプリンターたちも同じだった。ダニエーレ・ベンナーティ擁するリクイガスは、隊列を組んですさまじい加速を断行する。4度目の世界チャンピオンを狙う(そして、そろそろブエルタ途中棄権も考えているに違いない)オスカル・フレイレ(ラボバンク)も、リクイガストレインに張り付く。登りで一旦遅れたポイント賞リーダーのアンドレ・グライペル(チーム コロンビア・HTC)も、チームメイトの助けを借りて、前方に戻ってきた。そしてディグレゴリオを残り17kmで飲み込んで、スプリントへ決戦の準備を着々と整えつつ、1400mの長いロングストレートへ突入していった。
残り1kmのアーチをくぐった瞬間、後方から突然ファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)が飛び出した。そして現役世界一のタイムトライアル強者の力強いアタックが、プロトン前方をずたずたに切り裂いていく!いわゆる制御ラインは消え去り、あちこちから突発的なスプリントを仕掛けるものも現れた。そして混乱状態から一歩抜け出したファラーが、思い切ってロングスプリントを打つ。「ラストは微妙な登り坂だったから、それがボクにとってはパーフェクトだったんだ」と。
ステージ最終盤で一番働いたであろうリクイガスのエーススプリンターは、区間13位に沈んだ。フレイレは9位。グライペルは5位でポイント賞を守っている。アレハンドロ・バルベルデ(サイレンス・ロット)は3日目のマイヨ・オロ表彰台に向かい、また総合トップ10に順位の変動はなかった。翌日は大会2度目の休養日。選手たちはアンダルシアの海辺で静かに疲れた体を癒す。2009年ブエルタ・ア・エスパーニャは、まだ折り返し地点に到達したばかりだ。
●タイラー・ファラー(ガーミン・スリップストリーム)
ステージ優勝
ようやく勝利が手に入った!実は今日のスタート時には、それほど期待していなかったんだ。だって登りが全部で3000メートルもあっただろう。だからスプリントゴールで終わるなんて考えてもいなかった。でも2つめの峠を越えたあと、グライペルが千切れているのが見えた。だからボクは前へ行こうと力を尽くしたし、チームメイトも助けてくれた。最終ストレートではミラーが素晴らしい仕事をしてくれて、ボクを完璧なポジションへと導いてくれた。だからボクは、ただ引き継いだ仕事を終わらせるだけでよかったんだ。
ボクは今シーズンずっと、グランツールの区間勝利を追い求めてきた。チームメイトはボクを信じ続けてくれたし、ボクをずっと助けてくれた。そして今日、ついに初めての勝利を手に入れた。すごく特別な気分だよ。ツール・ド・フランスでは勝利こそ手に入らなかったけれど、素晴らしい調子のまま大会を終えることが出来ていたんだ。だからヴァッテンフォールとエネコ・ツアーで勝てたんだし、今日も勝てたんだよ。今日の勝利で、今大会の目標を達成した。これから先のことは、全てがボーナスだね!
●アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)
総合リーダー
マイヨ・オロで過ごす2日目もまた、ムルシアのファンたちがたくさんコース上で応援してくれたね。本当に嬉しかったよ。明日は2回目の休養日だから、山岳3連戦に備えてしっかり体力を回復したい。なにしろ非常にハードな3連戦だ。ここで間違いなくブエルタ王者が決定するだろう。ボク自身は非常に体調もいいし、自信もある。これまでは運にも恵まれてきた。落車もないし、タイムも失っていない。ただし山岳3連戦ではボクに攻撃を仕掛けてくる選手は多いだろうね。あらゆるライバルたちを警戒していく。特にエヴァンスやヘーシンクの動きに目を光らせなくてはならない。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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