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サイクル ロードレース コラム 2011年5月14日

【ジロ・デ・イタリア2011】第7ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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アクア・エ・サポーネとランプレ・ISDの努力は、全てが水の泡となった。1日中——といってもステージ全長は110kmに過ぎなかったが——レースをコントロールしてきたアクア・エ・サポーネは、背番号「1」を勝利へと導けなかった。なにしろ最終盤の追い上げが必要な場面で、ステファノ・ガルゼッリの脇を固めるアシストは1人も残っていなかったのだ。代わりにランプレが猛追を請け負ったが、どうやらタイミングは遅すぎたようだ。またしても、「ストラーデ・ビアンケ」を通った第5ステージでも、ラスト1.8km地点でミケーレ・スカルポーニがアタックを切ったが、単独で前を行くピーター・ウェーニングに追いつけなかった。この日はラスト2kmから激しく追い上げ、さらにはフィニッシュライン300m手前からスカルポーニがスプリントを切ったが、そのライン上で、今度も単独で逃げていたバルト・デクレルクに敗れた。「ミラノまでたどり着けたらボクのジロは成功!」と開幕前に無邪気にブログに書き込んでいたネオプロに、初めてのビッグ勝利を献上してしまった。

前日のゴール地から160kmほどさらに南下したプロトンは、ゆっくりと午後のスタートを切った。ただし一旦スタートが切られると、誰もがゆっくりなんてしていられなくなった。ステージの距離が極めて短いため、少しでも早くエスケープを決めようと、多くの選手がアタック合戦に参加した。飛び出しが決定的に決まったのは、スタートから20km地点。ゴールまでは、すでに90kmしか残っていない!

急いで逃げ続けたのはイル・トリコローレ(緑白赤)のジャージを身にまとうジョヴァンニ・ヴィスコンティを筆頭に、フェデリーコ・カヌーティ、マッテーオ・モンタグーティ、ジェローム・ピノー、ラルスイティング・バクの5人。序盤こそマリア・ローザを守りたいラボバンクが後方集団の統率に動いたが、すぐにアクア・エ・サポーネへとバトンタッチした。この日のゴール地、モンテヴェルジネ・ディ・メルコリアーノは2001年・2004年・2007年の過去3度登場している。チームリーダーのガルゼッリはそれぞれ3位、5位、5位で終えており、今年こそはこの聖なる山を……と燃えていた。だから先頭5人には最大3分20秒ほどの差しか与えずに、きっちり隊列を組んでスピードコントロールを行った。

赤いジャージの隙間を縫うように、オメガファルマ・ロットのセバスティアン・ラングがふらりと飛び出しをかける姿が目撃された。しかしゴール前45kmでプロトンから矢のように飛び出していったのは、ヴァカンソレイユDCMのジョニー・フーガーランド。一昨年のブエルタですっかり「アタック野郎」として世間にイメージを定着させていた彼は、20kmかけて前の5人へと追いついた。ただしアタックやエスケープをたくさん繰り返し、総合では悪くない成績を残してきたフーガーランドだが(2009年ブエルタも総合12位)、どうしても区間が勝てないタイプ。この日も結局は存在感だけたっぷり見せ付けて、最終峠でほかの5人と共に吸収されていった。

未だ100kmしか走っておらず、まだまだ元気なプロトンからは、最終峠でもアタックの試みが相次いだ。オメガファルマ・ロットからまた1人、今度はフランシス・デグレーフが少しだけ前に出てみたり。さらに前日すでに飛び出しを試みていたステファノ・ピラッジィや、数人の選手が、上りで攻撃に転じた。それでも山頂目指して淡々と進み続けるプロトンに、全て吸収されていった。1人を除いては。

ラスト7kmでバルト・デクレルクが飛び出したとき、「有力選手たちは互いのマークが忙しくて、それほどスピードが速くなかったんだ」とのこと。今ステージいたるところでアタックを試みたオメガファルマ・ロットから、今年プロ入りしたばかりの24歳は、本格的に自転車を始めてまだたったの3年ほどしかたっていない。するとレース展開を読む能力は……長い間続けてきた陸上競技で身につけていたのだろうか。しかもラスト2kmに入ってからは、30秒差につきはなしたメイン集団からランプレが恐ろしい勢いで迫ってきたのだが、最後までリズムを崩さずにペダルを踏み続けられる脚力もあった。そして、ほんの数センチ差で、有力選手をかわす運の強さも。ヘントから30kmほどの町で生まれ育ち、ヘントの大学を卒業したデクレクは、当然、ヘント出身のワウテル・ウェイラントとも親交があったという。第3ステージに命を落とした「ウェイラントに勝利を捧げたい」と語ったデクレクは、フィニッシュラインではギリギリすぎて時間がなかったけれど、表彰台ではゆっくりと両手で天を指した。

追い上げむなしく2位に泣いたスカルポーニは「がっかりしている。でも、ボーナスタイムを取れたことのほうを重視したい」と気持ちを切り替える。確かに12秒とはほんの一瞬でしかないが、ミラノでの総合表彰台を争う彼にとっては、非常に貴重な時間となる。一方で大切なタイムを失わずに済んだのは、アルベルト・コンタドールとアルベルト・コンタドール。前者はスカルポーニの仕掛けた加速に少し出遅れたものの、直前の選手との距離をしっかりと埋めて——つまり同じゴールタイムがもらえる1秒差以内の距離に——、最終的には全ての総合ライバルたちと同じタイムで1日を終えた。またランプレの加速に苦しめられ、集団後方でもがいたウェーニングも、やはり「同集団同タイムルール」のおかげで救われた。おかげでもう1日、大切なマリア・ローザを守ることができた。またガルゼッリは4位に終わり、またしてもこの山を制覇できず、ジロ通算10勝目もお預けとなった。


●バルト・デクレルク(オメガファルマ・ロット)
区間勝利

スペシャルな日になったね。パリ〜ニースでいい走りができて、ロマンディではもっといい走りができた。でも決して夢なんか見ていなかった。でも自分がラスト7kmで飛び出した時だって、最後まで逃げ切れるなんて考えてもいなかった。でも実現してしまった!今日のチームオーダーは、とにかくアタックすることだった。スピードがそれほど速くなかったから、だったらトライしてみようと思ったんだ。プロ入り1年目でジロのステージ優勝ができるなんて、本当に信じられないような快挙だよ。

ウェイラントのことは互いに良く知っていた。ボクらが住んでいる場所は30kmくらいしか離れていなかったから。トリノでも話をしたし……。本当に悲しいことが起こってしまった。この勝利はウェイラントの家族に捧げたい。

●ピーター・ウェーニング(ラボバンク)
マリア・ローザ

有力選手たちがタイムを失うのを恐れて、誰もアタックを仕掛けなかったおかげで、総合首位を守ることができた。残る2週は恐ろしいステージが待っているけれど、エトナの後(第9ステージ後)も、もしかしたらジャージを守れるかもしれない。ボクにとってジロとは、ツールやブエルタと同じように大切なレースだ。ツールを重要視する選手が多いことは知っているけれど、ボクにとってはジロとそれほど違いはない。ジロは素晴らしいレースだよ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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