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サイクル ロードレース コラム 2019年10月16日

【ツール・ド・フランス2020 ルートプレゼンテーション】見知らぬ山が目白押し!フルーム「凄いレースになりそうだ」。ピノ「2020年大会は最後までサスペンスが続く」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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クリス・フルーム

「12時も17分を回りました……さあて皆さま、これが2020年ツール・ド・フランスのコースです!」

大会委員長クリスティアン・プリュドムが左手首にチラリと目を落とし、現在時を告げると共に、パリの国際会議場パレ・デ・コングレの明かりが落とされる。目の前の大スクリーンには、魅惑的なラインが描かれていき、会場に詰めかけた4000人もの招待客が、その様子を固唾を呑んで見守る。翌夏のツール・ド・フランスのコース全貌は、いつだってこんな風にベールを脱ぐ。

そして2019年10月15日、ついに明かされた2020年マイヨ・ジョーヌ争奪戦の舞台は、極めて「アティピック(型破り)」だ。(詳しいコース図はこちら:https://www.letour.fr/en/overall-route

「このコース大好き!」とディフェンディングチャンピオンのエガン・ベルナルは興奮したように語り、6月の事故の影響でいまだ脚を引きずりながらも、クリス・フルームは「強い選手にとっては最高のコースだよね」と微笑んだ。

「僕が制したツールとはまったく違うタイプのレースのようだ。すごく山が多くて……いわゆる僕のようなクライマー向きのコースだよね!」(ベルナル)

「すごく厳しいコースだけど、むしろありがたい。総合争いの選手たちが、2週間全力でぶつかり合う、そんな凄いレースになりそうだ」(フルーム)

そもそも東京オリンピックが7月24日に開幕する関係で、例年に比べ1週間早い6月27日(土)に、第107回大会は南仏ニースから走り出す。そのまま3週間に渡って、プロトンはほぼフランスの南半分に留まる。計21ステージの間、国境さえ一度もまたぐことがない。

つまり極めて狭い範囲を、ツール一行はぐるぐると回る。しかもアルプス山脈→中央山塊→ピレネ山脈ー→中央山塊→ジュラ山脈→アルプス山脈→ジュラ山脈→ヴォージュ山脈と、国土に散らばる5つの山脈を繰り返し渡り歩き、よじ登る。「ほぼ2日に1度は山岳ステージなんじゃない?」とティボー・ピノが苦笑いするほど。大会2日目のニース〜ニース区間ではいきなり累計獲得標高は4000mに達し、4日目にして大会最初の山頂フィニッシュが待ち受ける。2級カテゴリー以上の山岳は全部で29箇所登場し、山頂フィニッシュは全部で4つ(第4・13・15・17ステージ、加えて登坂個人タイムトライアルあり)。

「難関ステージは本当に難度が高いし、中級山岳ステージはおそらく、目まぐるしい動きが見られるだろう。大いにやる気をかきたてられるコースだ」(ピノ)

一方で、いわゆる、「伝統峠」の名前は、ほとんど見当たらない。トゥールマレーもガリビエも、ラルプ・デュエズもヴァントゥもない……。そう、「知らない山ばっかり」とピノが小さな不安を漏らし、「巨大なる実験場みたい」とロメン・バルデが分析するように、「新しい土地」が2020年大会にはめいっぱい組込まれた。

「まるで見たことのないタイプのツールだ。初登場の山や中級山岳ステージが多いおかげで、不確定要素にあふれている」(バルデ)

全部で35のステージ地のうち、実に12がツール初登場。過去3度ツールのプロトンが通過したグラン・コロンビエは、第15ステージで史上初めてフィニッシュを迎え入れる。第17ステージで初めて登場する最終ローズ峠は、プリュドムが「21世紀ロードレースのプロトタイプとなるべき山」と誇りを持ってこの世に送り出す。ちなみに第10ステージでは、大会史上初の「島から島へ」ステージが執り行わる予定だ。

ただ山が多いとは言っても、標高2000m超級の峠を7つも使用した2019年大会と違って、2020年大会はたったの1回のみ。つまり来年のツールは「高山型クライマー」にスポットライトを当てるつもりはない。「TTのめっぽう強いオールラウンダー」を贔屓するつもりもなさそうだ。個人タイムトライアルはわずか1ステージのみ。総距離はたったの36km。しかし、その36kmこそが、2020年のマイヨ・ジョーヌの最終的な行方を左右する可能性は大いにある。

パリ到着の前日に行われる個人タイムトライアルは、なにしろ、あのプランシュ・デ・ベル・フィーユを目指す。序盤15kmはほぼ平坦、その後は10kmほどゆるやかに登り、一旦下った後に、おなじみの恐ろしい山道へと挑みかかる。2019年大会で使用された未舗装路ゾーンこそ登場しないものの、ラスト6kmは平均勾配8.5%・最大24%の激坂だ!

「あんな難しい坂道の個人TTで大会が終わるなんて、すごく珍しいんじゃない」(ベルナル)、「地形はもちろんだけど、なんと言っても3週間の終わりだからもっときつい」(ジュリアン・アラフィリップ)、「どこでバイク交換するべきか、しっかり研究しなきゃ」(フルーム)……と様々な意見が飛び交う中で、「地元っ子」ピノは断言する。

「2020年大会は最後までサスペンスが続く。最後の金曜日の夜でさえ、総合覇者の名前を上げることなんて、不可能なはずさ」

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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