人気ランキング
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
コラム&ブログ一覧
8月22日、ブエルタ・ア・エスパーニャ第70回大会はアンダルシア州マルベーリャのポルト・バヌースで開幕する。これまでに発表された出場予定選手を見るだけでもきら星のようなトップ選手が名を連ねており、特に総合争いは、ツールを争ったビッグネームたちが、再び白熱した戦いを繰り広げることが予想される。ディフェンディング・チャンピオンであるアルベルト・コンタドールはクラシカ・サンセバスティアンを待たずシーズンを終えているが、ファンタスティック・フォーのうち、コンタドール以外のフルーム、ニバリ、キンタナが ブエルタへの出場を表明しており、『ラ・ロハ』をめぐる争いは華やかなものになりそうだ。
(注: コンタドールの出場の可能性については、8月15日時点でチームマネジャーのステファノ・フェルトリンが否定のコメントを出している)
英国人として初めて2度目のツール総合優勝を達成したクリス・フルームが、ブエルタ出場を決めた。ツール終了からわずか4週間弱。シーズンスタート時からブエルタ出場は考えていたというが、実際にツールを走り終え、もう一つグランツールを走るというモチベーションが自分の中にあるかを見極めてからの最終決断だった。
「何度かライドに出てみて、これならいけるかもしれないと思った。大きな約束をするつもりはないし、ものすごく高い目標を掲げるつもりもない。ただそこに行ってみて、できる限りのことをやってみようと思う。うまくいけば素晴らしいことだし、もしそうでなくても、チームの誰かのための仕事をすることはできるはずだ」(BBCとのインタビューより)
ブエルタではこれまで、総合2位2回。フルームにとってブレークスルーの年となった2011年には、総合首位のファンホセ・コーボから13秒遅れ。最高とは言えないフォームで参戦した昨年は、最終日前日、アンカーレス山の山頂まで、アルベルト・コンタドールと力の限りの死闘を繰り広げた。
多くの難関山岳が最初の2週間につめこまれた今年のブエルタだが、第17ステージにはブルゴスでの39kmの個人TTが待ち受けている。昨年サンタ・マリーア・デ・ベルエーラ〜ボルハで行われた36.7kmの個人TTには小さな3級峠が登場したが、今年は平坦。フルームにとっては、クライマーからタイムを奪うチャンスになるかもしれない。
もしこのブエルタでマイヨロホを手に入れることができれば、フルームにとっては3つめのグランツール総合優勝。英国人によるブエルタ総合優勝は初めてのこととなり、また、ツール・ブエルタの同年ダブル優勝は、ジャック・アンクティル、ベルナール・イノーに次ぐ3人目となる。ブエルタの日程が春から初秋に変更されて以降(1995〜)ツールとのダブルは達成されておらず、2008年ツール総合優勝のカルロス・サストレによるブエルタ総合3位がベスト順位。
フルームはウィギンスに次ぐ総合2位でツールを終えた2012年にもブエルタに出場しているが、このときは最終週で失速、総合優勝のコンタドールから10分16秒遅れの総合4位で3週間のレースを終えている。
チーム・スカイからはセルジオ・エナオとゲラント・トーマスも出場が予定されており、誰がリーダーとなるかはフルームのコンディション次第とも言える。
エナオはプロデビューの2012年、初グランツールのジロで総合9位。コロンビア発の新世代クライマーとして一躍注目を浴びた。続く2013年もアルガルヴェ一周、バスク一周でステージ優勝、フレーシュ・ワロンヌ2位と躍進は続いたが、昨年ツール・ド・スイスでの落車で重傷を負い、今年の春のレース復帰まで長い回復の道のりを歩んできた。戦線復帰からはバスク一周総合2位、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ・バストーヌ・リエージュ共に7位入賞、ツアー・オブ・カリフォルニア総合3位、ツール・ド・スイス総合11位、直前のツール・ド・ポローニュの女王区間でステージ優勝を挙げている。
今ツール、第19ステージで20分以上を失うまで直前まで総合4位につけていたゲラント・トーマスにも、グランツール総合リーダーとしての期待が向けられている。チームによれば「本人の意向次第」とのことだが、来シーズンのグランツールで総合リーダーを任される可能性もあり、このブエルタは本人、そしてチームにとってそのテスト・グラウンドとなるかもしれない。
ファンタスティック・フォーの中では真っ先にブエルタ出場の意向を表明したのは、ヴィンチェンツォ・ニバリだった。2連覇がかかっていた今年のツールでは、横風に翻弄された第2ステージでタイムを失い、第6ステージのゴール前でクラッシュ。その2つをきっかけに精神的にも身体的にも追い込まれ苦しい前半戦となった。しかし第19ステージのラ・トゥッスイール山頂での区間優勝など、前年チャンピオンの矜持と力を見せつけ、総合4位で3週間の旅を終えた。ブエルタで狙うのはツールの雪辱だ。
全グランツールで総合優勝を挙げているニバリ(史上6人目)だが、ブエルタでの総合優勝は2010年。その翌年は総合7位、一年おいた2013年は42歳(当時)のクリス・ホーナーに次ぐ総合2位に入っている。
チーム(アスタナ)も、グランツール総合優勝なしに今シーズンを終えるつもりはない。ツール終盤に向け明らかに調子を上げてきたニバリだが、絶対的なリーダーという訳ではない。もともとブエルタ出場が予定され、この3週間に向けてトレーニングを積んできたジロ総合2位のファビオ・アール、あるいはリーダーだったアールを追い落としかねぬ勢いでジロ総合3位に入った、バスク人ライダーミケル・ランダと、リーダーとしての役割を分かち合う可能性も十分ある。ニバリ、アール、ランダとうい強力な3本柱で今年最後のグランツールに賭けるアスタナだが、この3人がどのような協力体制を築いていくかどうかがカギになるかもしれない。
ツール後半の山岳でフルームを追い上げ、最終的には1分12秒差の総合2位でツールを終えたナイロアレクサンドル・キンタナだが、モビスターのリーダーとしてマルベーリャに乗り込んでくるのはベテランのアレッハンドロ・バルベルデ。ツールではキンタナに次ぐ総合3位、シーズン前半にはフレーシュ・ワロンヌ、リエージュ・バストーヌ・リエージュ優勝、アムステル・ゴールドレース2位と、アルデンヌ・クラシックを席巻した。アルデンヌ・クラシックで6勝を挙げている彼も、グランツール総合優勝は2009年ブエルタのみ。ブエルタではその後2012年総合2位、2013年、2014年総合3位と3年連続で表彰台に上がっている。
2014年ジロの勝者であり、2013年、2015年ツール総合2位のキンタナだが、ブエルタでの表彰台は未経験だ。初グランツールだった2012年ブエルタでは総合36位、1年ぶりの出場となった昨年の大会は、一時は総合順位をリードしながら落車で大幅にタイムを失い、2度目の落車で鎖骨を骨折しリタイアを余儀なくされた。キンタナについては、バルベルデのアシストとしての走りに徹するというよりは、よりフリーな動きを許されることになる。ツール終盤ではバルベルデ、キンタナ、あるいはキンタナ、バルベルデと順番を入れ替えての波状アタックでフルームに揺さぶりをかけたが、その攻撃性をスペインの山々で発揮することができれば、優勝の最右翼候補はこの二人のどちらかかもしれない。
ツール総合3位につけながらも、体調不良により第17ステージでツールを棄権したティージェイ・ヴァンガードレンも、スペインに向かう。3連覇がかかるUSプロチャレンジではなくブエルタを選んだのは、もう一度トップレベルのグランツールライダーたちと競い合いたいという気持ちから。
「コロラドで3連覇を狙うのも素晴らしいチャレンジだと思う。けれど、ツールで起きたことを考えれば考えるほど、もっと大きなスケール ― グランツールで、自分の力を証明したいと思った」
ツールでは、彼の走りにフルームが再三言及し、『いま最も警戒している選手』とコメントするなど、特に前半戦で出色の走りを見せた。ブエルタで、グランツールライダーとして自分を確立するための戦いに挑む。
ツールに引き続きブエルタでもヴァンガードレンの挑戦を支えるのは、2008年五輪金のベテラン、サミュエル・サンチェス。シーズン開幕後の契約劇でBMCに移籍後は、グランツールやステージレースの山岳でリーダーのアシスト役に徹してきた。今年のツールでは総合12位。ブエルタではこれまで区間5勝を挙げており、総合は2009年の2位が最高位となっている。
総合では2013年の3位に及ばなかったものの、ユイ、そしてプラトー・ド・ベイユという2つのツール難関ステージで区間優勝を挙げたホアキン・ロドリゲスもブエルタに帰ってくる。「目標はひとまず表彰台」とチームのコメントは控えめだが、グランツール総合優勝は、いつもあと少しのところで掴みそこねてきた夢。ブルゴスの個人TTは決して彼向きではないが、9つある山頂ゴールの攻略次第で可能性は広がっていく。
これまで総合狙いの選手について見てきたが、スプリンターでは、昨年スプリント賞を獲得したジョン・デゲンコルプの出場が発表されている。デゲンコルプは昨年のブエルタで最終ステージを含む区間5勝を挙げ、第5ステージからのポイント賞ジャージを守り切った。なお、直近のツール・ド・ポローニュで区間優勝を挙げ、出場が期待されていたマルセル・キッテルについては、不出場となった。キッテルはグランツールの出場なしで、今シーズンを終えることになる。
他には、今ツールを落車でリタイアしたナセル・ブアニ(コフィディス)が出場を予定している。ブアニは昨ブエルタでは2区間優勝を挙げている。
※追記 8/18、ティンコフ・サクソから出場選手の発表があり、ペテル・サガンの大会参加が発表された。今ツールで4年連続マイヨヴェール(ポイント賞)獲得のサガンはブエルタにはこれまで2回出場しており、初出場の2011年にはステージ3勝を挙げている。昨年も世界選前のレースとしてブエルタを選んだが、区間最高位3位、第14ステージを前に大会を棄権している。昨年のブエルタスプリントステージを席巻したデゲンコルプ、サガンともに今ツールではステージ優勝がなく、区間2位(サガン5回、デゲンコルプ2回)が最高位。その悔しさをスペインで果たしたいところ。
注目の日本人選手では、新城幸也(ユーロップカー)の出場が昨日正式に発表された。 4月のリエージュ〜バストーヌ〜リエージュでの落車の影響でツール・ド・フランスへの出場が叶わなかった新城選手であるが、7月半ばからタイでの自主練習合宿を行い、その後8月11日〜15日に開催されたツール・ド・ランに出場。初出場のブエルタに向けて順調に調整を進めている。
(TEAMユキヤ通信 飯島美和記者からの情報による)
寺尾 真紀
東京生まれ。オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ卒業。実験心理学専攻。デンマーク大使館在籍中、2010年春のティレーノ・アドリアティコからロードレースの取材をスタートした。ツールはこれまで5回取材を行っている。UCI選手代理人資格保持。趣味は読書。Twitter @makiterao
あわせて読みたい
-
サイクル ロードレース コラム
-
サイクル ロードレース コラム
-
サイクル ロードレース コラム
【速報 ブエルタ・ア・エスパーニャ2024】最終峠でログリッチが抜け出し今大会区間3勝目!マイヨ・ロホも獲得/第19ステージ
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
Cycle*2024 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース
9月29日 午後5:25〜
-
11月11日 午後7:00〜
-
Cycle* J:COM presents 2024 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム
11月2日 午後2:30〜
-
10月12日 午後9:00〜
-
【先行】Cycle*2024 宇都宮ジャパンカップ サイクルロードレース
10月20日 午前8:55〜
-
【限定】Cycle* ツール・ド・フランス2025 ルートプレゼンテーション
10月29日 午後6:55〜
-
Cycle*2024 ブエルタ・ア・エスパーニャ 第17ステージ
9月4日 午後9:50〜
-
10月10日 午後9:15〜
J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!