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2月のアラビア半島で開催される、ドバイ・カタール・オマーンの中東3連戦。
3つのレースすべてに出場する選手にとっては、ほぼ3週間の長期遠征。
その最初の戦いが、アラブ首長国連邦で行われるドバイツアーだ。
ドバイ・ツアーとは
ドバイ・ツアーは、アラブ首長国連邦最大の都市、ドバイで開催される4日間のステージレース。ツアー・オブ・カタール、ツアー・オブ・オマーンに続く中東第3のレースとして2014年に誕生し、コンチネンタル・サーキットのレースとしては最高カテゴリのHC(Hors Classe)に昨年昇格した。ドバイ・スポーツ・カウンシルとジロ・デ・イタリアの主催者であるRCSスポルトの共同で主催されている。
3回目の開催となる今大会は、2月3日〜6日の日程で開催され、J SPORTSオンデマンドでLIVE配信される。
昨年まで
昨年の大会では、マーク・カヴェンディッシュ(当時はオメガファーマ・クイックステップ所属)がオープニングステージのスプリントをまず制した。ハッタダムへの17%の上りを駆け上り、第3ステージを制したジョン・デゲンコルプ(ジャイアント・アルペシン)に総合成績で一度はリードを許したものの、最終ステージのスプリントで2勝目を挙げ、ボーナスタイムで総合優勝をももぎとった。
初開催の2014年には、初日の10kmTTで優勝したテイラー・フィニー(BMCレーシング)がリードを守りきり総合優勝。スプリントステージ3つすべてをマルセル・キッテル(当時はジャイアント・シマノ所属)が制し、他を圧倒した。
今年のコース
今大会の全日程は、ジュメイラの海岸線を望むドバイ・インターナショナル・マリーン・クラブ(DMIC)からスタートする。4ステージのうち3ステージはほぼ平坦で、フィニッシュラインは集団スプリントで争われる可能性が大きい。第3ステージには昨年お目見えた最大勾配17%のハッタダム頂上ゴールが登場し、総合優勝争いのキーポイントとなる。
※ドバイ・ツアーでは、中間スプリントポイントを先頭で通過した3選手(3秒→2秒→1秒)、ステージで上位3位に入賞した選手(10秒→6秒→4秒)にタイム・ボーナスが与えられる。最終日のスプリントによって、前日の第3ステージ終了時点のタイム差が逆転される可能性も大いにあり、総合優勝の行方についても、最後の最後まで目が離せない争いになるだろう。
第1ステージ(2月3日)ドバイ・シリコン・オアシス・ステージ 179km
ドバイ・インターナショナル・マリーン・クラブ〜フジャイラ
(スプリント・ステージ)
アラブ首長国連邦は7つの首長国から構成されるが、ペルシャ湾(西海岸)に面するドバイ首長国から、内陸のシャールジャ首長国、ラアス・アル=ハイマ首長国を通り、オマーン湾(東海岸)に面するフジャイラ首長国に向かうステージ。近代的なドバイの市街地を離れたあとは、砂漠の景色が続く。後半にはハッタ山脈の近くを通過するため、残り40km地点にちょっとした上りがあるが、そこから沿岸に向けて下って行き、最終盤はフジャイラの6.6kmのサーキットを3周する。海沿いのサーキットでのスプリント争いは、かなり高速のものになるだろう。
第2ステージ(2月4日)ナキール・ステージ 187km
ドバイ・インターナショナル・マリーン・クラブ〜パーム・ジュメイラ
(スプリント・ステージ)
昨日と同じようにマリーン・クラブをスタートして一度砂漠に向かうが、そこから東海岸へは向かわず、8の字を描くようにしてドバイへと戻ってくる。ドバイ・マリーナのテクニカルな市街地コースを走り抜け、人工島パーム・ジュメイラへ。海に向かってまっすぐ進み、アトランティス・ザ・パーム正面でのゴールとなる。昨大会の第2ステージと同一のゴールだが、昨年はエリア・ヴィヴィアーニ(チーム・スカイ)が集団スプリントを制している。
第3ステージ(2月5日)ザ・ウェスティン・ステージ 172km
ドバイ・インターナショナル・マリーン・クラブ〜ハッタ・ダム
(中級山岳ステージ)
ドバイを出発して砂漠を横断し、東方の山岳地帯へと向かうステージ。この日登場する3つの上りは、全てレース後半に集中している。最初の上りはゴール前35km地点に登場する。続く2番目の上り(最大勾配10%)は残り5.8km地点から。そして最後の難関、ハッタダムの頂上ゴール。ゴール1km手前から緩やかにのぼりはじめるが、ゴール前200mからフィニッシュラインに向け8%、10%と勾配がきつくなり、最大勾配は17%に至る。
ステージの長さは昨年より30kmほど短縮され、ゴール前18kmに全ての上りがつめこまれた昨年のステージより多少難易度が下がった印象だ。
昨年はアップヒルのパワースプリントをジョン・デゲンコルプ(ジャイアント・アルペシン)が制している。今年もルーラーや上りスプリントを得意とする選手に有利だが、各チームの戦略やアタックのタイミングによっては、パンチ力のある選手や独走力のある選手にチャンスが生まれる。
第4ステージ(2月6日)ビジネス・ベイ・ステージ 132km
ドバイ・インターナショナル・マリーン・クラブ〜フルジュ・ハリファ
(スプリント・ステージ)
ドバイツアー最終ステージは超高層ビル『ブルジュ・ハリファ』の足元にゴールする、スプリントステージ。第1回、第2回大会とコースのレイアウトはほぼ変わらず、最高地点まで828mと世界でいちばんの高さを誇る超高層ビルの前で、一昨年はマルセル・キッテル(当時はジャイアント・アルペシン、現エティックス・クイックステップ所属)、昨年はマーク・カヴェンディッシュ(当時はエティックス・クイックステップ、現ディメンションデータ所属)が集団スプリントを制した。
注目の選手
今大会には、10のワールドツアーチーム、3のプロコンチネンタルチーム、2のコンチネンタルチーム、そしてUAE(アラブ首長国連邦)ナショナルチームの16チームが出場する。
ツアー・ダウン・アンダー(オーストラリア)、ツール・ド・サンルイス(アルゼンチン)ではなく、欧州からの移動が比較的楽で時差も少ない中東でのレースでシーズン入りするトップ選手も多く、ラインアップはかなり華やかなものになった。
今年何よりも注目を集めるのが、新チームに移籍したばかりのトップスプリンター、マルセル・キッテル(エティックス・クイックステップ)とマーク・カヴェンディッシュ(ディメンション・データ)のスプリンター対決。ツール・ド・フランスで現役最多の区間25勝を挙げているカヴェンディッシュはエティックス・クイックステップからディメンション・データに、2013年、2014年大会でそれぞれ区間4勝のキッテルはジャイアント・シマノからエティックス・クイックステップに、それぞれ移籍したばかり。
2011年から在籍したジャイアント・シマノとキッテルの訣別は、多くの人を驚かせた。新天地はカヴェンディッシュが3シーズンを過ごしたエティックス・クイックステップ。トニー・マルティンやマッテオ・トレンティンらとともに、オフからスプリントの感触を注意深く試してきたという新エティックス・トレインの初テストとなる。マキシミリアーノ・リケーゼがサンルイスでの落車で負傷したためフル・メンバーのトレインではないが、今シーズンのスプリント戦線を占うという点でも、ドバイは重要な一戦となる。
カヴェンディッシュは、リオ五輪トラック種目のイギリス代表入りを狙っており、1月に入ってからは、マンチェスターで行われたレボリューションシリーズ、UCIトラックW杯第3戦香港大会の複合種目「オムニアム」に出場していた。直近に行われたカデル・エヴァンス・グレートオーシャンロードレース(オーストラリア)はコースも彼向きではなく途中リタイアしたが、調子は上向きとのこと。かつて共にツールを席巻したHTCトレインのマーク・レンショー、ベルンハルト・アイゼルらもディメンションデータに加入。彼らのリードアウトで、シーズン初勝利を目指す。
他にも、サッシャ・モドロ(ランプレ・メリダ)、エリア・ヴィヴィアーニ(チームスカイ)、ジャコモ・ニッツォロ(トレック・セガフレード)、モヴィスタ―のファンホセ・ロバト、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ、マシュー・ゴス(ワン・プロ・サイクリング)らトップスプリンターたちがドバイのフィニッシュラインを競うことになるだろう。
クラシック・レースに焦点を定めるビッグネームに目を転じると、元ロード世界選王者であり、アルデンヌ・クラシックのハットトリックを達成しているフィリップ・ジルベールにとっては、ドバイが今シーズンの初レースとなる。ここ数年はミラノ〜サンレモとアルデンヌ・クラシックに注力してきたが、今年はツール・ド・フランドルへも出場を虎視眈々と狙っている。今大会最難関の第3ステージでは彼のアタックが見られるかもしれない。
今年が現役最後の年となるファビアン・カンチェッラーラは、つい数日前、チャレンジ・マヨルカの最難関ステージ(第3戦・トロフェオ・セッラデトラムンターナ)で独走勝利を挙げたばかり。最後のクラシックキャンペーンに向け、これ以上ないシーズン入りをしており、ドバイでもその走りを目に焼きつけたいところ。
リオ五輪トラック種目で通算5個目となる金メダルを狙うブラッドリー・ウィギンスも、自らの名を冠した『チーム・ウィギンス』のメンバーとして、ドバイのスタートラインに並ぶ。
寺尾 真紀
東京生まれ。オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ卒業。実験心理学専攻。デンマーク大使館在籍中、2010年春のティレーノ・アドリアティコからロードレースの取材をスタートした。ツールはこれまで5回取材を行っている。UCI選手代理人資格保持。趣味は読書。Twitter @makiterao
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