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3月9日、イタリアではティレノ〜アドリアティコが開幕する。
ティレノ〜アドリアティコは、パリ〜ニースとともに、シーズン序盤を代表する、ワールドツアーイベントのステージレース。
ティレノ〜アドリアティコのスタートラインにも、パリ〜ニースにひけをとらぬ、華やかな顔ぶれが並ぶ。
この模様はJ SPORTSオンデマンド限定でLIVE配信される。
ティレノ〜アドリアティコとは
ティレノ〜アドリアティコは、今から50年前、1966年に、ローマからペスカーラまでの3日間レースとして誕生した。
『2つの海のレース(La corsa dei due mari)』という別名のゆえん(所以)である、西のティレニア海からイタリア半島を横断し、東のアドリア海へ、という性格はそれから今まで変わることなく、また、サン・ベネデット・デル・トロントで最終日を迎える伝統も(初年度だけが例外)ずっと続いている。
開幕地はだんだんと北上していき、最近は、ティレニア海沿岸に面したトスカーナ地方の都市で開幕している。
ジロ・デ・イタリアと同様にRCSスポルト社とガゼッタ・デロ・スポルト紙によって主催され、イタリアのステージレースとしてはジロに次ぐ位置づけではあるが、平坦ステージ中心に組まれたティレノ〜アドリアティコは、パリ〜ニースがミニ版ツールの性格を持つのとは対照的に、ミラノ〜サンレモやフランドル・クラシックを狙う選手たちの準備レース、という雰囲気を持っていた。
しかし、グランツールのスター選手たちがパリ〜ニースにさらわれていくことに業を煮やしたか、2011年に最終日のスプリント・ステージが個人TTに取って代わられ、2012年のルートに難関山岳(プラーティ・ディ・ティーボ)の山頂ゴールを組み込んだあたりを境に、ミニ版ジロとしての色合いを強めてきた。こうやって加えられた走り応えのある難関山岳ステージや、タイムトライアルと山岳ステージで勝者が(ほぼ)決まる、複雑すぎないしつらえが功を奏し、グランツール総合上位を狙うトップ選手たちが、ティレノ〜アドリアティコには集まるようになってきている。カデル・エヴァンス(2011)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ、2012・2013)、アルベルト・コンタドール(当時の所属チーム名ティンコフ・サクソ、2014)、ナイロ・キンタナ(モビスター、2015)…と、ここ数年の総合優勝者の顔ぶれからも、本格的ステージレースとしての新たな立ち位置が明らかだ。
昨年の大会
昨年の大会では、第5ステージ、雪が降り積もるテルミニッロ峠で山頂ゴールを制したナイロ・キンタナ(モビスター)が、最終日の個人TTで首位を守りきり、総合優勝を飾っている。
カギとなった難関山岳ステージでキンタナは、アルベルト・コンタドール(当時の所属チーム名はティンコフ・サクソ)ら追走するライバルらを降りきって勝利を挙げ、その登坂力と好調を印象づけた。
今年のコース
3月9日 第1ステージ リド・ディ・カマイオーレ 22.7km (チームタイムトライアル)
3月10日 第2ステージ カマイオーレ〜ポマランチェ 207km (クラシカル)
3月11日 第3ステージ カステルヌオーヴォ・ディ・ヴァル・ディ・チェーチナ〜モンタルト・ディ・カストロ 176km (平坦)
3月12日 第4ステージ モンタルト・ディ・カストロ〜フォリーニョ 216km (平坦)
3月13日 第5ステージ フォリーニョ〜モンテ・サン・ヴィチーノ 178km (山岳)
3月14日 第6ステージ カステルライモンド〜チェパガッティ 210km (平坦)
3月15日 第7ステージ サン・ベネデット・デル・トロント 10km (個人タイムトライアル)
51回目の開催となる今大会は、7日間をかけて、トスカーナ、ウンブリア、アブルッツォ、マルケの4地方を駆け抜けていく。チームTTで開幕し、最終日には個人TTと2つのタイムトライアルが行われるが、加えて、平坦ステージが3つ、アップダウンのある『クラシカル』ステージが1つ、そして標高1208mのモンテ・サン・ヴィチーノの山頂にゴールする山岳ステージで7日間の日程は構成される。
第1ステージ リド・ディ・カマイオーレ 22.7km (チームタイムトライアル)
昨年、カマイオーレのチームTTは悪天候のために個人TTに変更となり、コースも5.7kmに短縮された。今年は昨年のオリジナル・プランを踏襲し、海沿いの長い直線を進む、22.7kmのハイスピードコース。ティレニア海に沿って9.5kmを進み、そこから90度のターンを4回(右→左→左→左)、再び海沿いのストレートをゴールに向かう。
第2ステージ カマイオーレ〜ポマランチェ 207km (クラシカル)
前半はほぼ平坦だが、ゴール前50kmでピアン・ディ・フォルノの上りがあり、そこからアップダウンが続く。一度ポマランチェのフィニッシュラインを逆側から通過してダウンヒルをこなし、そこからゴールまで9.4kmを上る。ゴール前4kmには最大18%の激坂も待ち構え、パンチャーや、パワー系スプリンターの争いになるだろう。
第3ステージ カステルヌオーヴォ・ディ・ヴァル・ディ・チェーチナ〜モンタルト・ディ・カストロ 176km (平坦)
多少の起伏はあるが、スタートから90kmあまりの地点まではほぼ平坦。そこからスカンサーノの長い上り(約20km)をこなし、続く、モンテメラーノの短い上りへ。そこからゴールまでの40kmはゆるやかな下りで、モンタルト・ディ・カストロのゴールは上り基調。ゴールはスプリント対決になるだろう。
第4ステージ モンタルト・ディ・カストロ〜フォリーニョ 216km (平坦)
今大会最長のステージ。ゴールのフォリーニョ近郊を巡る周回コース内を含め、ゴールまでに4つの上りが登場する。しかし、それぞれの上りにある程度の間隔があり、最後の上りはゴール前15kmに登場するため、やはりスピードマンのためのステージと言えるだろう。
第5ステージ フォリーニョ〜モンテ・サン・ヴィチーノ 178km (山岳)
山頂ゴールの舞台となるモンテ・サン・ヴィチーノを含め、カテゴリー山岳が5つ登場する、今大会の女王ステージ。スタート直後にコースは緩やかに上りはじめ、30km地点にまず最初の山岳、ヴァリコ・デル・ソーリオ。15kmほど下り、フロンティニャノの頂きに向け、道は再び上りはじめる。フォロンティニャノからの短いダウンヒルのあと、一息つく間もなく、昨年も登場したアレッテ峠へ。132km地点に登場するモンテラーゴ峠への8kmの上りは、平均勾配こそ5%だが、進むにつれだんだんと斜度がきつくなる難しい上りだ。164kmの道のりの最後に立ちはだかるのが、最終峠、モンテ・サン・ヴィチーノ。平均勾配7.8%、10kmの上りだが、頂上のフィニッシュライン手前に12%の急勾配が待ち構えている。青い総合リーダージャージをめぐり、大きく順位が動く一日になるだろう。
第6ステージ カステルライモンド〜チェパガッティ 210km (平坦)
スタート後、アドリア海へと進み、チヴィタノーヴァ・マルケからペスカーラ方面に、海沿いの道を100km南下。そこから内陸に折れ、レース最終盤は、チェパガッティの10kmサーキットを2周する。ゴールは上り基調であるため、パワースプリント向けか。
第7ステージ サン・ベネデット・デル・トロント 10.1km (個人タイムトライアル)
最終日は、10.1kmの個人TT。海に面した5kmのプロムナードを往復する平坦なコースで、90度のターン2回で折り返す。昨年の最終ステージとコース設定はまったく一緒だ。昨年は、ファビアン・カンチェッラーラ(当時の所属チーム名トレック・ファクトリーレーシング)が11分23秒のトップタイムをたたき出し、4秒差でアドリアーノ・マローリ(モビスター)、9秒差でヴァシル・キリエンカ(チームスカイ)が区間表彰台に上っている。
注目の選手
まず注目の選手は、2013年以来2回目のジロ総合優勝を狙うヴィンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)。今年はオマーン一周レースの難関山岳、グリーンマウンテンで区間優勝を挙げ、総合優勝も手に入れている。そして、シーズン前半の目標としてツール・ド・フランドル(初出場)、アルデンヌ・クラシックを挙げ、調整に余念がないアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)。2月のルタ・デル・ソル(アンダルシア一周レース)ではレース最終峠でティージェイ・ヴァンガードレン(BMCレーシング)を突き放し、総合優勝している。ヴァンガードレンをはじめ、ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)、リゴベルト・ウラン(キャノンデール)、ティボー・ピノ(FDJ)、ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ)ら、グランツール総合上位に名を連ねる選手たちが、顔をそろえる。
ロード世界王者のペテル・サガン(ティンコフ)、ミラノ〜サンレモ覇者であり、現在開催中のトラック世界選手権(ロンドン)において、ブラッドリー・ウィギンスと組んだ男子マディソンで優勝したばかりのマーク・カヴェンディッシュ、ツアー・ダウン・アンダー、ヘラルド・サン・ツアーなどですでに4勝を挙げている若きカレブ・イーウェンや、エリア・ヴィヴィアーニ、サッシャ・モドロらのイタリア人スプリンターたちが、平坦ステージでは熱い闘いを見せてくれるだろう。
また、先日のオムループ・ヘット・ニウスブラットで優勝したグレッグ・ヴァンアーヴェルマート、昨年のロード世界チャンピオンで、今シーズンチームスカイに移籍した、ミカル・クヴィアトコウスキー、今季限りでの引退を表明しており、先日のストラーデ・ビアンケで自身3回目の勝利を手にしたファビアン・カンチェッラーラ(トレック・セガフレード)ら、目前にミラノ〜サンレモ、そしてフランドル・クラシックを控える選手たちも、『2つの海のレース』のスタートラインに並ぶ。
寺尾 真紀
東京生まれ。オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ卒業。実験心理学専攻。デンマーク大使館在籍中、2010年春のティレーノ・アドリアティコからロードレースの取材をスタートした。ツールはこれまで5回取材を行っている。UCI選手代理人資格保持。趣味は読書。Twitter @makiterao
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