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3月27日に行われたヘント〜ウェヴェルヘム第78回大会では、4つ巴のゴールスプリントを制し、現ロード世界王者のペーター・サガン(ティンコフ)が優勝した。
また、レース終了後の深夜(現地時間)、同レース走行中に発生した事故により病院に搬送され治療を受けていたアントアーヌ・デモアティエ選手が亡くなる、という何とも痛ましく悲しいニュースが飛び込んできた。
悲しいご報告
何よりもまず、デモアティエ選手に関する悲しいご報告から―。
現ロード世界王者、ペーター・サガン(ティンコフ)のスプリント勝利でヘント〜ウェヴェルヘムが幕を閉じた昨日の深夜(現地時間27日深夜)、あまりに悲しい一報がフランスのメディアから届きました。
ヘント〜ウェヴェルヘムレース中のモトとの衝突事故でリール市内の病院に緊急搬送され、重篤な状態にあると報じられていたワンティ・グループゴベールのアントアーヌ・デモアティエ選手が、懸命の救命治療の甲斐なく、亡くなったとのことでした。
報道によれば、北フランスのサント=マリー=カペルを走行中に落車し、起き上がろうとしていたデモアティエ選手に、後続のモトが衝突するという形で、事故は発生しました。事故の原因やモト側の過失については、目撃者の証言などをもとに、ノール=パ・ド・カレー地域圏の警察が慎重に捜査を進めているそうです。
デモアティエ選手は、ベルギー・リエージュ市出身の25歳。地元コンチネンタルチーム、ワロニー・ブリュッセルから、ベルギーのプロコンチネンタルチーム、ワンティ・グループゴベールに移籍し、プロとして初めてのシーズンを迎えたばかりでした。スプリンターとして頭角を現し、2014年にツール・ド・フィニステール優勝、2015年にシルキュイ・デ・アルデンヌ第4ステージ優勝、ハンザム・クラシック第2位。今年2月に行われたエトワール・ド・ベセージュの第1ステージでは、3位に入賞しています。つい3日前の金曜には、E3ハレルベケに出場。自身にとって初のワールドツアーレース、母国が誇るフランドルのセミクラシックで、レース序盤に形成された8人のエスケープ集団に加わり、タイエンベルグを越え、ゴール前70kmの地点まで逃げ続けました。
選手としてだけではなく、父として、夫として、息子として、友人として、これから実り多い人生を歩んでいくはずの若い命でした。 (※ 報道から、ご結婚をされていることは判っているのですが、お子さんがいらっしゃるかどうかについては確認できませんでした。ですので、未来についてもを含めての一文とご理解いただけましたらと思います)
ご家族の、ご友人の、そしてチームの仲間たちの悲しみは想像するに余りがあります。 謹んで哀悼の意を表すとともに、心よりご冥福をお祈りいたします。
レースの展開
イースター・サンデー(復活祭の日曜)の3月27日、ヘント近郊のダインゼ(デインツ)を、25チーム、196人の選手たちがスタートした。カチューシャのアレクサンドル・クリストフ、チームスカイのイアン・スタナード、AG2rのアレクシー・グジャールが体調不良のため不出走。もともとのスタートリストより3名少ないスタートになった。
レース全長は243km。まず西に向かって80kmあまりを進み、北海に沿いのアディンケルケの町で、内陸の南フランドル地方へと折り返す。10のヘリンゲン(上り)が登場するのは、レースの残り距離が100kmを切ってから。終盤の周回コースは、ヘント〜ウェヴェルヘムの代名詞ともいえるケンメルベルグの上りを2回通過する。
例年との違いは、ケンメルベルグの2回目の上りに、1973年以来お目見えすることがなかった逆方面からの上りが使用されること。172km地点で登場する、伝統的に使用されてきた上りルートも平均勾配17%の劇坂だが、209km地点で登場する2回目の上りは更に勾配を増し、最大23%に達する。
強風の中、この日最初の逃げは程なくして決まった。パヴェル・ブリュット(ティンコフ)、リエーベ・ウェストラ(アスタナ)らを中心とする5人の逃げと集団との差は、最大で11分程度までふくらんだ。
ルートが北海沿いの折り返し地点(スタートから82km)に近づくにつれ、横風が強まり、プロトン内でのポジション争いが激しくなってきた。ついに集団は3つの小集団に分断。ペーター・サガン(ティンコフ)やファビアン・カンチェッラーラ(トレック・セガフレード)、トム・ボーネン(エティックス・クイックステップ)ら優勝候補の大部分は第1集団を走行するが、セプ・ヴァンマルク(ロットNL・ユンボ)、ゼネック・スティバール、フェルナンド・ガビリア(エティックス)ら後方の第2集団に取り残された。
レース残り110kmの地点で、第1集団が逃げ集団を吸収。後方集団ではロットNL・ユンボの追い上げもあり、残り88km、5つの上りを残して、ついに先頭集団に追いついた。この時点でいったんは50名ほどになった集団だったが、カンチェッラーラ擁するトレック・セガフレード、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン擁するディメンション・データのペースアップもあり、周回コース1回目のバネベルグ、ケンメルベルグと進むにつれ、だんだんと集団の人数は小さくなっていく。
続くモンテベルグではマッテオ・トレンティン(エティックス・クイックステップ)とティッシュ・ビノート(ロット・ソウダル)を中心とするアタックが最大で30秒程度のタイム差をつけるが、ロットNL・ユンボとディメンション・データの猛追もあり、残り53kmで吸収される。
この直後に単独で飛び出したのがビアチェスラフ・クズネツォフ(カチューシャ)。見る見ると差を開き、2回目のバネベルグ、ケンメルベルグへと飛び込んでいくころには、集団を45秒まで引き離した。バネベルグに向かう集団からは、ヴァンマルケがアタックするが、この動きは封じられる。続く最後の勝負どころ、ケンメルベルグでついにサガンが動いた。このアタックにカンチェッラーラが続き、その後輪をヴァンマルケが追う。フレフ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシング)、スティバール、ルーク・ロウ(チームスカイ)が追走するが、差を縮めることができない。
サガン、カンチェラーラ、ヴァンマルケは、クズネツォフに追いつき、ゴールに向かう35kmの平坦な道のりを急ぐ。後方ではエティックス・クイックステップの選手たちが集団を牽き続けるが、サガン、カンチェッラーラの二人がペースを作る先行集団との差は、無情にもじわじわと開き続けていく。
他の3人の動きを確認しながら、カンチェッラーラが先頭でフラムルージュ(ゴール前1km)を越える。ゴール前200m、まずスプリントを切ったのは、クズネツォフ。右から左に大きくコースを変えるが、その後輪にぴたりとつけたサガンが、右側から前方に飛び出し、右手を突き上げながらフィニッシュラインを越えた。
2013年に同大会を優勝しているサガンが、自身2回目の優勝。ロード世界王者として虹のジャージを身に着けて初めての勝利を手に入れた。 2位はクズネツォフ、3位にヴァンマルケ。最後の5kmは脚の痙攣に苦しんだというカンチェラーラは4位でレースを終えた。後方の集団では、ミラノ〜サンレモ優勝者のアルノー・デマールがスプリントで5位に入賞した。
選手コメント
ペーター・サガン(ティンコフ)
『とうとうこのジャージで勝つことができて、とてもうれしいよ。ここで勝つのは2度目だし、ぼくにとっても重要なレースなんだ。この勝利は、昨日つらい思いをした、愛する妻の父にささげたい。彼のために、そしてチームオーナーのオレグ・ティンコフのために勝てて本当によかったと思う』
セプ・ヴァンマルケ(ロットNL・ユンボ)
『分断して前方の集団を追っているとき、そしてケンメルベルグで、今日は調子がよいことを感じていた。追走で力を使ってしまったけれど、なんとか終盤の動きには絡めるだろうと思っていた。ただ、最強の二人(サガンとカンチェラーラ)と一緒になるとは思っていなかったけれどもね。ものすごいペースだった。ローテーションをまわす中でもぼくがいちばん弱いのは明らかだった。けれどそこに恥はないよ。何しろ相手は世界チャンピオンと、クラシックを10個くらい勝った、元TT世界王者だったんだから」
ビアチェスラフ・クズネツォフ(カチューシャ)
『戦略という観点では、チーム監督のトーステン・シュミットにお礼を言わなくちゃいけない。レースのまさにあのスポットでアタックするよう無線で指示してくれたのは彼なんだ。道が狭くなるところで、集団がスローダウンするのは彼もぼくもわかっていた。けれど、20秒、30秒、40秒と差を開いていけるなんて、思っていなかった』
ファビアン・カンチェッラーラ(トレック・セガフレード)
『4人でゴールまでたどり着いて、その中の4位で終わるのなんて、面白くも何ともないよ。けれどそれがレースなんだ。だって、ぼくに何ができたって言うんだ? 最後にはいつものような脚もパワーもなかった。重要なポイントポイントでは自分もチームもいい動きができたという点では満足だけれど…。たぶん唯一のミステークは、人よりも多く、あるいは長く牽きすぎたということかもしれない。ヘント〜ウェヴェルヘムには同じ愛を感じないんだ。これまで何度もこのレースに出場してきたけれど、なんていうんだろう、他のレースに臨むときのような、絶対勝つんだぞというあの決意。それがどうしても同じではないんだ」
寺尾 真紀
東京生まれ。オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ卒業。実験心理学専攻。デンマーク大使館在籍中、2010年春のティレーノ・アドリアティコからロードレースの取材をスタートした。ツールはこれまで5回取材を行っている。UCI選手代理人資格保持。趣味は読書。Twitter @makiterao
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