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サイクル ロードレース コラム 2016年4月28日

山・山・また山…!“最も過酷なレース”と呼ばれる「ジロ・デ・イタリア」は山フェチのサイクリスト必見!

サイクルNEWS by 寺尾 真紀
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5月のイタリア、7月のフランス、8月スペインで、3週間にわたって開催される3つのステージレース、『グランツール』。

サイクルロードレース(自転車レース)の中でも最高峰に位置づけられ、22のトップチームだけが出場を許される(*1)。9人のメンバーに選ばれ、そのスタートラインに並ぶことは、すべてのプロロード選手にとっての大きな夢だ。

その3大グランツールの一つ、ジロ・デ・イタリア(=『イタリア一周レース』)が、5月6日に開幕する。21日間をかけて(*2)、最終ゴール地のトリノ(北イタリア)まで、総距離3,463.1kmの道のりを走破する。

このジロ・デ・イタリア(短く縮め、『ジロ』と呼ばれる)、タフなグランツールの中でも、ひときわ過酷なレースとして知られている。
「いちばんハードなグランツールは?」
そう問いかけたら、ほとんどのプロ選手が「ジロ!」と答えるに違いない。その理由は、選手たちの前に立ちはだかる、山・山・また山・・・!

例えば今年のジロのコースには、大小合わせて38の山岳が登場する。そのうち、標高2000mを超える峠が10コ、1000mを超える峠が8コ。日本でいうと、飛騨山脈(北アルプス)や赤石山脈(南アルプス)木曽山脈(中央アルプス)の山々に相当するくらいの高さがある。
山がない平らなステージや、それほど難しくない上りしか登場しないステージもあるが、とくに21日間の日程の後半、ドロミテ山塊やアルプス山脈といった山岳地帯に突入すると、『モンスター』としか言い表せないような、難関ステージが選手たちを待ち受けている。

例えば、イタリア北東部のドロミテ地方で行われるステージ。全長210kmのコースに、ドロミテを代表する名峰であるポルドイ峠、セッラ峠、ジャウ峠など、標高2200m級の山が5つ、1800m級の山が1つ、次々と登場する。ドロミテらしい、ごつごつとした岩肌が天に向かってそびえる神秘的な風景の中を、6時間以上をかけて走りきる。

(注)
*1 トップカテゴリーに所属する全18チームに加えて、レース主催者の招待を受けた4チームが出場できる。

*2 休息日を含めると実際には24日間だが、レースが行われるのは21日間で、各ステージごとに勝利とタイムを争いながら、最終的には、全21ステージを合計してもっとも早い(少ない)タイムで走り終えた選手が『総合優勝者』となる。

毎年、各大会での最高地点を『チーマ・コッピ(コッピという選手にちなんだ名前)』とよぶが、今年のチーマコッピは標高2744mのアニェッロ峠。大会19日目のステージは、スタートから走り出して約80kmはゆるやかな(だんだんと勾配は上がっていくが)上りだが、そこからこのアニェッロ峠の頂上に向けてぐんと斜度を強め、残りの21.3km(平均勾配6.8%、最大勾配15%)をさらに上っていく。つまり、スタートから(最初はじわじわとだが)100km以上をただひたすら上り続けるのだ。おまけに、この峠を越えても、それで一日が終わるわけではない。国境を越えてフランス入りし、リスルのフランス・アルプスのスキー場に向け、12.9kmのつづら折の山道を、もくもくと上がっていく。

この日を走り終えればあと2日でゴール地のトリノに辿りつくが、この翌日も、疲れた体を休めることは許されない。大会最終日前日(第20日目)は、アルプスの最難関ステージ。ヴァール峠(2108m)、ボネット峠(2715m)、ロンバルダ峠(2350m)というフランス・アルプスの山々を越えてイタリアに戻り、サンタンナ・ディ・ヴィナディオ(2015m)の頂上にゴールをする。コースのほとんどが上っているか下っているかで、平坦な道は、ほとんど登場しない。134kmの全コースのうち、62.5kmは上り坂で、上った標高の合算は、4263mに達する。

今年もこんなに過酷なジロの山だが、大会主催者のメッセージによれば、最近はより「思いやりのある("humane")」コース作りを心がけているとのこと。

ジロの長い歴史を振り返れば、大雪(まさにブリザードという言葉がふさわしい、悪天候だった)に見舞われたガヴィア峠(標高2621m)でアンディ・ハンプステン勝利をあげた1988年の伝説的なステージもあれば、最大勾配24%、最後の5kmは未舗装(ダート)という、プラン・デ・コロネスという難関山岳の頂上まで12.9kmをひたすら上り続ける、個人タイムトライアル(選手ひとりひとりが決められたコースを走り、計測タイムを競う)が行われたこともあった。あまりに厳しすぎる、という批判もあったが、わずか2年後にまったく同じコースで復活。再び、多くの選手たちを苦しめた。

ロード選手の中でも王者の風格を持つアルベルト・コンタドール選手が『自分のキャリアを通して、こんなに厳しいステージを走ったことはない』というコメントを残したこともあれば、ベテラン選手をもって、『今年のジロには恐怖を感じる』と言わしめたこともある。

けれど、大会が終わった直後には、ジロには2度と行きたくない、山がキライだから……と、言っていた選手たちが、またひょっこり次の年のスタートラインに並んでいたりする。

イタリアという国が抱くロードレースへの熱い情熱や、陽気な観客たち、変化に富んだ、壮大な自然美、そして「明日何があるかわからない!」という波乱万丈のアドベンチャー。 ジロだけが持つこの計り知れない魅力に、我々も、選手たちも、魅入られてしまうのかもしれない。

代替画像

寺尾 真紀

東京生まれ。オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ卒業。実験心理学専攻。デンマーク大使館在籍中、2010年春のティレーノ・アドリアティコからロードレースの取材をスタートした。ツールはこれまで5回取材を行っている。UCI選手代理人資格保持。趣味は読書。Twitter @makiterao

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