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【クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ/プレビュー】ツール・ド・フランス前哨戦!フルーム、コンタドールらビッグネームの脚試しはいかに?
サイクルNEWS by 福光 俊介ジロ・デ・イタリア期間中は、マリア・ローザにちなみバラ色一色だったサイクルロードレース界。それが終わり6月に入ると、趣きはガラリと変わる。そう、開幕まで1カ月を切ったツール・ド・フランスを待ち焦がれる季節がやってくるのだ。
UCIワールドチームをはじめとするトップチームは、いずれもこの時期のレースをツールに向けた準備に位置づける。ツール本番のレース展開を想定するのはもちろんだが、それ以上に、出場する9人を選考する作業こそ各チーム首脳陣にとって骨の折れる仕事なのである。
ツールを見据える選手たちにとっては、まず“前哨戦”と呼ばれるレースへの出場が第1関門となる。各チームが最も重要視するのが、ツールと同じくフランスで開催されるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネだ。J SPORTSではこのレースを6月5日(日)の開幕から全ステージを生中継する。
「ミニ・ツール」として多くの選手がツール本番を意識しながら走るわけだが、「ドーフィネで勝つ選手はツールで勝てない」といったジンクスがまことしやかに囁かれた時期がある。しかし2012年、当時プロトンで無敵を誇ったブラッドリー・ウィギンスが、ドーフィネとツールを“連勝”し、ジンクスを打破。その後、クリス・フルームが2013年と2015年に両レースを制しており、むしろ有力選手の仕上がりをチェックするにはピッタリの場となった。
だからこそ、主催者A.S.O.は今年のコースをよりチャレンジングなものにした。プロローグにいきなり4kmの山岳個人TTをぶつけてきたのだ。きっと、今年のツール第18ステージに山岳個人TTが組み込まれたことを意識してのものだろう。平均勾配9.7%、最大勾配15.2%の上りで早くも有力選手たちが火花を散らす。
全8ステージのコースは、山岳個人TTが1つ、平坦2つ、中級山岳2つ、上級山岳3つ。中級山岳の第2ステージ、上級山岳の第5〜7ステージが山頂フィニッシュだ。特に第6ステージは、141kmとレース距離としては短めながら、中盤に今大会唯一の超級山岳・マドレーヌ峠がそびえ、フィニッシュまでのラスト12.3kmは1級山岳メリベルを上る、獲得標高にして4000m超えの1日。総合成績を大きく左右するであろうクイーンステージだ。
おのずと、出場選手はツールの総合争いを視野に入れるオールラウンダーやクライマーぞろいとなる。事前に各チームが主催者側に提出した出場予定選手リストでは、この大会2年連続3回目の総合優勝がかかるフルーム、アルベルト・コンタドール、ファビオ・アール、バウケ・モレマ、ロマン・バルデ、ティボ・ピノー、リッチー・ポート、ホアキン・ロドリゲス、ピエール・ローラン・・・と、そうそうたる面々が名を連ねた。特に、“新・ファンタスティック4”の一角であるフルーム、コンタドール、アールの仕上がり具合は誰もが気になるところ。
そんな3人だが、三様に今シーズンは慎重な調整進行のようだ。フルームは2月のヘラルド・サンツアーの総合優勝でシーズンインとなったが、その後はヴォルタ・ア・カタルーニャ総合8位、リエージュ〜バルトーニュ〜リエージュでは落車もあり112位、ツール・ド・ロマンディでも落車の影響で総合38位に終わっている。とはいえ、ロマンディ第4ステージでは逃げに乗り、そのまま勝ってしまうなど、強さの一端は見せている。
コンタドールは2月のヴォルタ・アオ・アルガルヴェ総合3位を皮切りに、パリ〜ニース、ヴォルタ・ア・カタルーニャともに総合2位、ブエルタ・アル・パイス・バスコ総合優勝と、ここまでハイアベレージ。それでも、4月上旬には休養期間に入り、そのままの流れでスペイン・カナリア諸島での高地トレーニングへと向かった。
今年のリザルトだけを見ると、いささか心配なのがアール。2月のヴォルタ・ア・アラ・コムニタ・バレンシアーナ総合6位に始まり、ヴォルタ・アオ・アルガルベ総合9位、ヴォルタ・ア・カタルーニャ14位、ブエルタ・アル・パイス・バスコは第5ステージでリタイア。その後臨んだアムステル・ゴールドレースもリタイアと、少々物足りない。目指すところがツールとはいえ、本番を前にどこかで強さを見せ付けておきたいところだ。
新・ファンタスティック4の牙城を崩そうと、“第5の男たち”も黙ってはいない。きっと、実績豊富なモレマや若きフレンチオールラウンダーのバルデ、ピノーらも元気な姿を見せてくれるはずだ。
なお、第1・第4ステージはスプリンター向けの平坦ステージ。山がちな環境でのレースゆえ、スプリンターが回避しがちではあるが、事前提出のリストではナセル・ブアニ、エドヴァルド・ボアッソンハーゲンが参戦の意思を示している。しかしながら、開幕日から山を登ることなどを考えると、わざわざ脚を削りに行く必要性はないのも事実。それであれば、同時期に他国で行われる平地系のレースでスピードを磨く方が得策かもしれない。
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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