人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2016年8月19日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016 プレビュー

サイクルNEWS by 寺尾 真紀
  • Line

5月のイタリア、7月のフランス、8月スペインで、3週間にわたって開催される3つのステージレース、『グランツール』。

サイクルロードレース(自転車レース)の中でも最高峰に位置づけられ、22のトップチームだけが出場を許される。9人のメンバーに選ばれ、そのスタートラインに並ぶことは、すべてのプロロード選手にとっての大きな夢だ。
その3大グランツールのうち、一番最後に開催されるのが、ブエルタ・ア・エスパーニャ(=『ブエルタ』と略して呼ばれることが多い)。シーズン最終盤の8月末から9月半ばにかけて、スペインで開催される。

今大会は、8月20日(土)にガリシア地方で開幕。9月11日(日)の最終ゴール地、マドリードまで、21ステージ、総距離3,277.3 kmを走破する。

ブエルタは、クライマー向けのコース設定で知られている。
タフな山岳で知られたジロさえ、山だけでないドラマを組み込んだグランツールへと変化を模索する一方で、「クライマーのグランツール」、というブエルタの方向性はここのところ一貫している。

10の上りゴールが登場した2012年大会ではアルベルト・コンタドール、ホアキン・ロドリゲス、アレハンドロ・バルベルデがマイヨロホ(ブエルタの総合リーダーが身に着ける赤いジャージ)を奪い合い、息もつかせぬ接戦を演じたし、上りゴールがさらに1つ増えた2013年大会では、ヴィンチェンツォ・ニバリとクリス・ホーナーが最終峠まで総合首位を争った。上りゴールの数は減ったものの、2014年(9ステージ)にはコンタドールとクリス・フルームが、昨年(8ステージ)はファビオ・アルとトム・ドゥムランが、最後まで山岳で勝利を競い合った。

その「成功のフォーミュラ」を踏襲し、今年のブエルタにも10の上りゴールが登場。最後まで勝者が予測できない、熱い戦いが期待できる。

また、シーズン最後のグランツールであることから、不本意なシーズンを過ごした選手たちが、最後のリベンジのチャンスとして出場することも、ブエルタの特徴として挙げられる。世界選手権前の調整として出場するトップ選手も多い。

10の上りゴールが登場する今年のブエルタには、ファンタスティック・フォー(4大グランツール・レーサー)のうち、コンタドール、フルーム、ナイロアレクサンドル・キンタナが登場。日本からは新城幸也(ランプレ・メリダ)と別府史之(トレック・セガフレード)の2人が出場。今年も、豪華なラインアップがブエルタのスタートラインを飾る。

今年のブエルタは、スペイン北西部のガリシア地方で開幕する。初日は、ここ数年恒例となっている、チームタイムトライアル。18のワールドツアーチームと、ワイルドカードを獲得した4チーム(ディレクト・エネルジー、コフィディス、ボラ・アルゴン18、カハ・ルーラル)が、27.8kmのコースで速さを競う。

大会全体で10の上りゴールが登場する今大会だが、最初の上りゴールが早くも3日目に登場(ドゥンブリアの展望台への1.8kmの短い上り)。続く第4ステージもサンアンドレアの山頂まで11.2kmの上りゴール。その後も、第8ステージのラ・カンペローナ、第9ステージのアルト・デル・ナランコ、第10ステージのコバドンガ、休息日を挟んで第11ステージのペニャ・カバルガ、とブエルタおなじみの峠での山頂ゴールが連続する。ただし、1日の中に難関山岳がいくつも登場するわけではなく、総合争いで大きな差が開くことは考えにくい。ただ、休息日前日のコバドンガ峠は、大会最初のビッグ・クライムといえるもの。総合上位を狙う選手たちの中での、好調・不調が見えてくる日になるだろう。

ブエルタ後半戦に入ると、山岳での闘いはさらに難度を増す。今大会の女王区間(クイーンステージ)と目されるのが、第14ステージ。ツール・ド・フランスでもおなじみの峠が次々に登場する。アンアルピュ峠(1級)、スデ峠(ピエール・サン・マルタン峠、1級)、マリー・プランク峠(1級)を越えて、最後には超級オービスク峠への山頂ゴール。1日の獲得標高は5000mを超える。続く第15ステージはスペイン側のピレネーへと移り、一級峠アラモン・フォルミガルの山頂へゴールする、短くも厳しいステージとなっている。

第19ステージには、今大会唯一の個人タイムトライアルが行われる。37kmのコースは多少のアップダウンはあるのみで、ルーラー、あるいはTTスペシャリスト向けのコース設定。

総合争いの最終決戦の場は、最終日前日の第20ステージ。193.2kmのコースにはまず4つの2級山岳が登場。最後に待ち受けるのは、アルト・デ・アイタナ(アイタナ峠)。平均勾配は5.9%(最大勾配13.3%)とそれほど厳しい勾配ではないが、登坂距離は21kmと長い。大会最終日前日、かつ個人TTの翌日ということで、じわじわ効いてくるパンチのように、選手たちを苦しめかねない。マイヨロホの行方を巡り、最後の瞬間まで目の離せない一日になるだろう。

今年のブエルタも、ピュア・スプリンターの活躍の機会は少ない。スプリンター向けといえるステージは、序盤戦にはバイオナへの第2ステージ、ルゴへの第5ステージ、プエブラ・デ・サナブリアへの第7ステージ。後半戦まで走り続けるスプリンターたちにとっては、ペニスコラへの第16ステージと、ガンディアへの第18ステージ。これに加えて、ブエルタを完走するスプリンターたちにとっては、最終日のマドリッドが最後の活躍の舞台となる。

今年のブエルタにも、多くのトップ選手が出場する。

残念ながら、昨年ブエルタの表彰台に乗った3選手(ファビオ・アル、ホアキン・ロドリゲス、ラファル・マイカ)は不在となるが、4大グランツールレーサー、通称「ファンタスティック・フォー」からはヴィンチェンツォ・ニバリを除く3人が出場する。

アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)
もともとは今年限りでの引退を決めていたが、翻意し、あと2シーズンの現役続行を表明。7月のツールでは初日から落車に見舞われ、1回目の休息日を待たずに第9ステージでリタイア。ワンデーレースのクラシカ・サンセバスティアンでレースに復帰し、8月に行われたブエルタ・ア・ブルゴス(ブルゴス一周レース)では総合優勝している。現在ブエルタ最多総合優勝記録はロベルト・エラス(2000、2003、2004、2005)の4回だが、もしコンタドールがブエルタで総合優勝を挙げれば、この記録に並ぶことになる。

ナイロアレクサンドル・キンタナ(モビスター)
今年はカタルーニャ一周でコンタドールを破り総合優勝、ツール・ド・ロマンディではフルームをおさえて総合優勝。ルート・ド・シュッドでも総合優勝を挙げ、ここでは個人TTで初優勝も上げた。満を持して出場したツールだったが、2週目以降、原因不明の不調(アレルギーが原因だったのではないかとするチーム発表もあったが)により、山岳で持ち前の強さを発揮することがなかった。それでもツールでは3年連続の総合表彰台という結果は、彼の底力を示している。パンターニにささげられた、クライマー向けの2014年ジロでチャンピオンとなったコロンビア人は、今年最後のグランツールでどんな走りを見せてくれるだろうか。

クリス・フルーム(チーム・スカイ)
今年、3回目のツール・ド・フランス総合優勝を達成した。チーム・スカイのエース、ブラッドリー・ウィギンスのアシストとして出場した、2011年ブエルタは、フルームが初めてのグランツール区間優勝を挙げ、また、ウィギンスに代わり、スペインのホアン・ホセ・コボと首位を争い総合2位を獲得するという、まさに彼にとってのブレークスルーの瞬間となった。2014年のブエルタでは再び総合2位に入っているが、総合優勝はまだ実現していない。ツールに続いて出場したリオ五輪ロード種目では銅メダルを獲得している。昨年のブエルタは足首の骨折でリタイアを余儀なくされたが、今年、ツール・ブエルタのダブル総合優勝は実現するだろうか。

キンタナがエースではあるが、チームメートのアレハンドロ・バルベルデ(モビスタ)も、5月のジロで区間1勝・総合3位、キンタナとともに出場したツールも総合6位で終えており、直前のクラシカ・サンセバスティアンで3位に入るなど、総合上位での活躍が期待できる。フレーシュ・ワロンヌで2連覇を達成し、カスティーリャ・レオン一周で総合優勝した前半戦から好調を維持しており、ここ数年を通して、プロトンでもっとも安定して好成績を残す選手の一人と言える。

他にもアンドリュー・タランスキー(キャノンデール・ドラパック)、サムエル・サンチェスとティージェイ・ヴァンガードレン(BMCレーシング)らなどの活躍が期待できる。

一方若手選手では、5月のジロで活躍した2人がブエルタに出場する。ジロで区間1勝を挙げ、総合2位に入ったエステバン・チャベス(オリカ・バイクエクスチェンジ)と、ジロ第19ステージの下りで落車し、マリア・ローザを失ったスティーヴン・クライスヴァイク(ロットNL・ユンボ、ジロ最終成績は総合4位)も、ブエルタに出場する。チャベスは昨年のブエルタで区間2勝を挙げ総合5位に入っているが、クライスヴァイクは2011年の初出場以来2度目の出場となる。

今年6月のツール・ド・スイスで総合優勝したアスタナのミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)、ぜんそく治療薬のTUE(治療使用特例)の申請に不備があり、4か月の出場停止処分となり、レース復帰直後のブルゴス一周で総合4位のサイモン・イェーツ、(オリカ・バイクエクスチェンジ)、ツール総合8位のルイス・メインチェス(ランプレ・メリダ)らも注目の選手。

日本からは新城幸也(ランプレ・メリダ)と別府史之(トレック・セガフレード)が出場する。新城は、今年6回目のツールに出場し、第6ステージではステージのカギとなる逃げに乗り、キャリア2度目の敢闘賞を獲得。8月、日本代表として出場したリオ五輪ロード種目では27位に入賞している。ブエルタの出場は昨年に続く2回目で、自身にとって10戦目のグランツール出場となる。別府は今年、アルデンヌ・クラシックに出場したほか、パリ〜ニース、ツール・ド・ロマンディ、クリテリウム・ドュ・ドーフィネ、ツール・ド・ポローニなどに出場。ブエルタ・ア・エスパーニャは初出場。ツール(2009)、ジロ(2011、2012、2014、2015)に続き、自身6度目のグランツール出場となる。日本のファンにとって、わくわくの3週間になりそうだ。

代替画像

寺尾 真紀

東京生まれ。オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ卒業。実験心理学専攻。デンマーク大使館在籍中、2010年春のティレーノ・アドリアティコからロードレースの取材をスタートした。ツールはこれまで5回取材を行っている。UCI選手代理人資格保持。趣味は読書。Twitter @makiterao

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ