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【フレッシュ・ワロンヌ2017現地レポート】イースター休暇明けのもう1つの”お祭り”、それがフレッシュ・ワロンヌ
サイクルNEWS by 福光 俊介キリスト教の復活祭「イースター」に盛り上がったヨーロッパ各地。ベルギーもその例に漏れず、4月16日の復活祭当日のみならず、前後数日がお祭り騒ぎとなっていた。賑わいがひと段落した4月19日、ベルギー南部のワロン地域を舞台にフレッシュ・ワロンヌが行われた。
南北で異なる文化が行き交うベルギーは、南部ワロン地域はフランス語圏。かといって、フランス文化が息づいているのかというと、そうは感じない。ワロンにはワロンの、独特の雰囲気があると感じた。
写真:バーの2階からもファンの姿が
今年、スタート地点に選ばれたのはバンシュ。街から街へとめぐるサイクルロードレースは、とりわけスタート地とフィニッシュ地が街を挙げてのお祭りになるが、このフランス国境近くの小都市もいつもとは違ったイースター明けの1日がやってきた印象だった。街そのものは決して派手に振る舞うわけではないけれど、「ならばオレたちで騒いでしまおうぜ!」とばかりに、ビール片手に会場をウロウロする人々の姿がチラホラ。
写真:バンシュのスタート会場の様子
そうだ、この国もドイツと並ぶビールの国だった! 老若男女問わず(子供はビール飲めないけれど)、ビールを飲みながら会場に到着するチームの様子を見ている様は、これぞベルギーの自転車文化といわんばかり。それでいて、酔って顔が真っ赤な人も幾重にも並ぶ沿道でお行儀よくプロトンの出発を見守るのだから、いかにこのスポーツがリスペクトされているのかが分かる。
写真:地元キッズも応援。「フルガス!」の大合唱
このレースの3日前にオランダで行われたアムステル・ゴールドレースでは、過去にいくつもの名場面を生んだフィニッシュ直前の上り「カウベルグ」が廃止され、新しいコースレイアウトでレースが行われた。その理由は「勝負がカウベルグ一辺倒になるから」とのものだったが、“一辺倒”でいうならフレッシュ・ワロンヌだって同じ。
写真:幾重にも並んでスタートを待つ観衆
だけど、このレースがマンネリを嫌ってコースを変えようものなら、全世界から非難されることは間違いない。フレッシュ・ワロンヌの象徴「ユイの壁」は、その名の通り“壁”のように、変えようのないインパクトを選手にも、見る者にも与えているからだ。
写真:ユイの壁に歩いて挑戦する人々
さて、ユイに移動してみると、お祭り騒ぎはこちらでも同じ。「イースター休暇明けで、今日も仕事休んで大丈夫?」と思ってしまう筆者は完全に日本人的感覚か。ユイの上り麓と頂上にそれぞれ出店があって、ビールやソーセージの販売が行われていた。麓のお店では、「おい、一緒に飲んでいけよ!」「せっかくだから食べていったら?」なんて声をかけられ心惹かれたものの、泣く泣く断念。ユイの頂上へ急いだのだった。
写真:ユイの壁の麓でビールを飲みながら選手を待つ
その「ユイの壁」。歩いて上ってみた。いや、いったん下って、麓から上った、というのが実際の流れ。全長1.3km、平均勾配9.6%、最大26%と、実際に恐るべき登坂区間であることは確かなのだが、でもやはり数字で説明するのはどこか簡単だ。本来なら選手たちと同様にロードバイクで駆けあがってみればよいのだろうが、今回は歩きで我慢。
まず、麓までの下りで膝が笑ってしまう。前へ進むにも大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)で踏ん張らなければ転んでしまう。いまにも走り出してしまいそうな勢いで麓まで行き、いささか消耗した体で上りへ再スタート。
写真:ユイの壁で最も傾斜が厳しい地点。この場所だけ舗装が荒れている
上り、やはりきつい。歩く感覚としては、階段を1~2段抜かしながら上っているのに近い。残り500mを切ってから現れる最も傾斜が厳しいコーナーに至っては、舗装が荒れているという有様。しかも、荒れているのはこの場所だけ! 息も絶え絶えに頂上へと戻り、改めてロードバイクでグイグイと上る選手たちに感服した次第である。
実際、筆者と同じような“挑戦”をしているファンは多く、選手が通過した後にゾロゾロと歩き登坂を始める姿や、ロードバイクで上っていく人を見かけた。また、大会スポンサー関連の「登坂ツアー」なるものも存在するらしく、大人数でユイの壁を体感する機会も設けられていたようだった。
写真:プロに負けじとロードバイクでユイの壁にトライする人も
そんなユイの中腹で日本人ファンの姿を発見。ブリュッセル在住の2人は、今回初めてのフレッシュ・ワロンヌ観戦。レース中はJ SPORTSオンデマンドでしっかりとチェック。「新城選手に期待!」と声を弾ませ、日の丸とベルギーの三色旗を振ったその姿はきっと選手の眼に映ったに違いない。
写真:ブリュッセル在住の2人。初のフレッシュ・ワロンヌ観戦に興奮
フレッシュ・ワロンヌは2008年から女子レースも行われていて、近年はUCIウィメンズワールドツアーの重要レースとして定着している。今年は日本人選手が3人出場。男子と合わせると総勢5人がユイの壁に挑戦した、日本自転車界にとっては1つ歴史となるレースだった。別府史之、新城幸也、萩原麻由子、與那嶺恵理、吉川美穂。ビッグリザルトを得たわけではないが、与えられたチームオーダーをそれぞれにまっとうしレースを終えている。エースを上位に送り込んだ新城と與那嶺は「仕事ができてよかった」と充実した表情を浮かべ、レースの厳しさを口にした萩原と吉川も次への課題と気持ちの切り替えに集中する。
写真:レースを振り返る吉川美穂(左)と萩原麻由子
感動と熱狂のクラシックシーズンは、いよいよ4月23日のリエージュ~バストーニュ~リエージュで終わりを迎える。華やかさはレースだけにはとどまらない、その在り方を引き続き追いかけていきたい。
■リエージュ~バストーニュ~リエージュ放送情報
4月23日 (日) 午後9:10~深夜1:00 生中継&LIVE配信
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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