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そして1分46秒差の2位エンリク・マス、2分04秒差の3位ミゲル・アンヘル・ロペスを両脇に従えて、サイモン・イェーツはとうとう表彰台のてっぺんに立った。宵闇の訪れたシベレス広場にゴッド・セイヴ・ザ・クイーンが流れ、本人はいつもとまるで変わらないさばさばした様子で、大勢の観客の前でマイクを握った。
「僕は演説があまり得意ではないのですが……。ただチームに感謝の意を伝えたいと思います。彼らがずっと以前から僕の才能を信じ続けてくれたことを、本当に嬉しく感じています。家族や友達、恋人にも大いなる感謝の意を表したいですし、そしてなによりチームオーナーのゲーリー・ライアンにも。だって、もちろん、彼のおかげでチームはこうして存在するのですから。彼がいなければ、僕らは今日、この場にはいなかったでしょうからね。うん。以上です。ファンのみなさんありがとう!」(サイモン・イェーツ)
38歳のアレハンドロ・バルベルデは人生4度目のポイント賞表彰式を楽しみ、トーマス・デヘントは生まれ初めて山岳王の称号を手に入れた。本来は総合争いのためにスペインに乗り込みながら、4日目で早くも大幅にタイムを失ったバウケ・モレマは、数え切れないほどの逃げで大会を盛り立てた。区間2位3回、山岳賞2位、デイリー敢闘賞3回と大きな成果を持ち帰ることは出来なかったけれど……マドリードでは総合敢闘賞のご褒美が待っていた。
2018年のグランツールの戦いは、こうしてすべて幕を閉じた。「せっかくだから今夜は赤ワインを飲んでお祝いしたいな」と笑うサイモンにとって、しかし、いまだシーズンは終わってはいない。スペインの山々で赤ジャージを奪い合ったライバルたちと、おそらくまた2週間後に、チロルの山々で死闘を繰り広げることになるのだろう。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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