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文:木村浩嗣
ブエルタ・ア・エスパーニャの中継で面白いのは、レースに関係のない情報をいろいろ教えてくれることだ。いくら波乱のある大会だと言っても、毎日4~5時間続く放送で視聴者を飽きさせたくない、というのがあるのだろう。
中継による教育効果には注目しているようで、スペインでは映し出されている風景に関連して、古城の歴史とか観光名所、郷土の偉人はもちろん、村の特産物、植生や樹林の種類、地形の成り立ちとかオリーブの生産高とかハゲワシの頭数とか……いろいろまんべんなく教えてくれる。スペインの小中学校は9月中旬にならないと学年が始まらないので、ブエルタを見るのは社会、歴史、地理、理科のおさらいにちょうどいい。アナウンサーはメモを見ながらしゃべっているにしても、長年のおしゃべりでクイズのコンクールに出られるくらいの博識になっていることだろう。
ただ、その反面レースの中継がお留守になることがあるのはご愛嬌。レコンキスタ(キリスト教徒による国土回復運動)の話に夢中になり過ぎて映像はカテドラルを映しっ放し、肝心の選手たちははるか彼方を走行中(土地勘がある者から見れば10キロ近く向こう)みたいなこともしばしばあり、日本の視聴者のみなさんから“スペインクオリティ”とお叱りを受ける理由になっているに違いない。
近年、主催者側が特に力を入れているのが自然保護とリサイクル。サイクルとリサイクル、自然がないと成り立たない競技であることに加え、レース中の水ボトルのポイ捨てを見て視聴者に誤解されないようにとの配慮(実際は観客が拾うので問題はない)もあるのだろう。今年も各ステージの勝利者に与えられるトロフィーは、瓶をリサイクルして作られたものであり、選手が勝利を祝った後のシャンパンの瓶を緑色の専用リサイクルボックスに入れるなどの光景が繰り返される見込みだ。
では、肝心のスペイン人のリサイクル意識はどうなのか? こちらでは分別したゴミは専用のゴミ箱に好きな時に入れば良い、という極めて楽な方法で、ゴミとゴミ箱の種類も緑=瓶、黄=プラスチックと金属、青=紙、灰色=生ごみと4つしかない。分別の種類が10くらいあり、決まった日の決まった時間に出さないと引き取ってもらえない日本に比べると天国である。にもかかわらず、ルールを守っている人は私の実感で「3分の1くらいかな」と思っていたら欧州連合(EU)の調査でもやはり33%で、EU平均の45%に遠く及ばないレベルだった。ブエルタの教育的使命のゴールはまだまだ遠いようだ。
J SPORTS 編集部
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