人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2018年7月14日

ツール・ド・フランス2018 第7ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line

平和で退屈な午後の終わりに、ディラン・フルーネウェーヘンがスプリントを勝ち取った。4色ジャージに一切の変動はなく、グレッグ・ヴァンアーヴェルマートは5日連続のマイヨ・ジョーヌ表彰式を楽しんだ。

「グランツールに果たしてこういった種のステージが必要なのかどうか分からない。でも僕ら選手たちにとってはありがたかった。ツール開幕以来ほとんどレースを楽しむ余裕がなかったからね。リラックスできるステージは大歓迎だよ」(ヴァンアーヴェルマート、公式記者会見より)

それにしても長かった。ステージ距離は全長231kmの今ツール最長で、つまり2日後に控える「石畳」への移動ステージでもあった。レース時間もひたすら長かった。開幕からちょうど1週間たち、そろそろ選手たちの体に疲労が蓄積しはじめた頃だろうか。2日間の激闘を抜け出したプロトンは、この日は、少しだけ息抜きすることに決めたようだ。走行時速は40.326km。平地レースとしては驚くほどゆっくりペースで走り、選手たちは5時間43分42秒にも渡ってひたすらペダルを回し続けた。

スタートから20km地点で、実力者揃いの10人が飛び出したこともあった。あの逃げが決まっていれば、もしかしたら、状況は変わっていたのかもしれない。ただしチームロットNL・ユンボが回収に向かい、あっさり5kmほどで、逃げを集団内へと引き戻した。

「今日は朝から脚の調子が良かった。だからスタート前のミーティングで、チームメートたちに、僕の周りをみんなで固めてくれるよう頼んだ」(フルーネウェーフェン、公式記者会見より)

それ以外の時間帯は、ただ奇妙な1人逃げ×3回が展開された。誰も積極的に飛び出そうとはしなかった。ここまで毎日欠かさず動いてきたディレクトエネルジーさえ逃げようとしなかった。まずはスタートから3kmでトーマス・デハントが独走を始めた。しかし15kmほど走った先で、自ら退却を選んだ。2人目のヨハン・オフレドは孤独を厭わなかった。35km地点でアタックを打つと、100km以上に渡って勇敢なひとり旅を続けた。

「どうして誰も前に出たがらないのか分からない!だってツールで前を走るのは、本当に素敵な体験なんだ。観客たちの声援を独り占めできたことだけでも、僕にとってはご褒美だった」(オフレド、TVインタビューより)

1人逃げシリーズの第3弾はローラン・ピション。フィニッシュまで85km地点で飛び出すと、約50kmの独走を行った。まんまと敢闘賞にも輝いた。このピションがフィニッシュ手前37kmで集団に飲み込まれると、この日の逃げは打ち止めとなる。

「退屈な1日だった。でもハッピーな1日でもあったんだよ。空にはお日様が照り、風はそれほど強くもなくて。ストレスもほとんど感じなかった」(サガン、ミックスゾーンインタビューより)

わずかながら、たしかに刺激的な時間帯もあった。残り100km地点で、Ag2rが突如として加速を試みたのだ。まっ平らな大地には、真っ直ぐな道が伸び、ほんの少し横風が吹いていた。瞬く間にメイン集団は3つに分断した。バウケ・モレマ率いるトレックも、ロマン・バルデをエースに擁する仏チームのスピードアップに手を貸した。残念ながらスリリングな時は長くは続かなかった。すぐにペースは弱まり、のんびりとした時間が戻ってきた。

中間ポイントの存在は幸いだった。フェルナンド・ガビリア、ペーター・サガン、アレクサンドル・クリストフが、熾烈なスプリントを繰り広げてくれたから。また今大会初導入のボーナスポイントでも、「(第9ステージフィニッシュ地の)ルーベまで黄色でたどり着きたい」(公式記者会見より)と熱望するグレッグ・ヴァンアーヴェルマートが、マイヨ・ジョーヌ姿で先頭通過=3秒を獲りに行った。

走行距離が200kmを超えると、ようやくレース全体に緊迫感が漂ってきた。残り15kmを切ると、いよいよスプリントチームから総合チームまでが、前方でこぞって隊列を組み上げた。道幅の広い長い直線でスピードは急速に上がり、170人のプロトンは大集団スプリントフィニッシュへと突進していった。

今大会スプリント2勝クイックステップフロアーズの好きにはもはやこれ以上はさせまいと、多くのチームが積極的に動いた。序盤に10人の逃げを潰したロットNLもまた、スプリントエースのために、改めて見事な連携力を発揮した。

「フィニッシュ手前2kmで、僕に向かって叫ぶ声が聞こえた。『右側から上がれ!』って。そしてチームメートたちが僕を引っ張ってくれたんだ。カオスなスプリントだったけど、おかげで僕は常に好ポジションをキープできた」(フルーネウェーフェン、公式記者会見より)

残り600mでクイックステップ列車が最前列へと競り上がった後は、ティモ・ローセンが「正しい位置」へと連れて行ってくれた。それがアレクサンドル・クリストフの後輪だった。ちなみに、このラスト600mは、平均勾配4%の上り坂。クイックステップ発射台が力強くフェルナンド・ガビリアを引っ張り上げ、そしラスト250mで前方へと解き放った。ほぼ同時にアレクサンドル・クリストフも加速を始めた。

一方のフルーネウェーフェンは、200mで飛び出した。「今だ!」との直観に導かれて。1年前の夏をシャンゼリゼの栄光で締めくくった25歳は、実はこの7月は初日スプリント6位、2日目32位と、スタートで少々躓いた。

「序盤2日間はまるで脚がなかった。でも日に日に調子が上がって来るのを感じていた。第4ステージでは随分感覚を取り戻せていたけれど、やはり失敗した(4位)。辛抱強く待たなきゃならなかった。そして今日、調子は完璧だった」(フルーネウェーフェン、公式記者会見より)

そのまま伸びのあるスプリントで前を行くガビリアを抜き去ると、フルーネウェーフェン人生2度目の勝利を悠々とさらい取った。フィニッシュラインを先頭で越えながら、右人差し指を口元にあてるジェスチャーも見せた。

「一部の人たちが、僕は今ツールで勝てない、なんて早すぎる結論を出してしまったんだ。調子はどんどん良くなっていたというのに。この勝利は、そんな彼らに対する答えでもある。明日もまたスプリント勝利の機会があるから、またみなさん(ジャーナリスト)にお目にかかりたいな」(フルーネウェーフェン、公式記者会見より)

区間2勝のガビリアは2位に甘んじ、マイヨ・ヴェール姿のペーター・サガンは3位で終えた。そして4位のアルノー・デマールは、「明日こそは勝つ」とTVインタビューできっぱり断言した。2018年大会も1週目を終えて、いまだフランス人による区間勝利はない。翌第8ステージは7月14日、つまりフランス革命記念日である。

☐ ツール・ド・フランス 2018
ツール・ド・フランス2018 7月7日(土)~7月29日(日)
全21ステージ独占生中継!
»詳しくは ツール・ド・フランス特設サイトへ

☐ お申込みはこちらから
テレビで見るなら「スカパー!」
スマホ・タブレット・PCで見るなら「J SPORTSオンデマンド」

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ