全文公開！米須玲音（東山→日本大学）| ウインターカップ開幕直前 卒業生インタビュー

米須玲音

昨年のウインターカップでの米須玲音は、東山の司令塔として視野の広さを活かしたゲームメイクと非凡な得点能力を武器に、見ている人たちを魅了するプレーを連発した。仙台大学附属明成との決勝戦では、第4クォーターの終盤で逆転されての悔しい負けを経験。高校卒業後に日本大学に進学し、インカレ後にBリーグの川崎ブレイブサンダースの特別指定選手となった米須にとっては、ウインターカップの経験を糧にもっとレベルアップしなければと思いが強くなっている。

Q 先日のインカレは残念ながら2OTの激戦で筑波大に敗れてベスト8に終わりました。大学の1年目はどんなシーズンでしたか？
「最初入学して春のトーナメント（関東大学バスケットボール選手権）で優勝することができ、リーグ戦でも2位といういい結果で終わりました。その調子でインカレに臨みましたが、ベスト8ということで、昨年の結果を超えることはできましたけど、自分たちは優勝という目標でずっとやってきたのにベスト8という形で終わってしまったのがとても悔しいです」

Q 大学でプレーするようになってから、高校からの違い、アジャストで大変だったところ、何かありましたか？
「新しいチームでやるということでは、周りとのコミュニケーションというのが取りずらかったなと思っています。自分は下級生ですが、多くの上級生たちが試合に出ていたため、先輩に強く言うことがあまりできていなかったと感じているところはあります」

Q ウインターカップでの激戦から1年が経過しようとしています。昨年の今ごろ、どんな心境で大会に向けた準備をしていたか覚えていますか？
「昨年はウインターカップ予選で洛南さんに負けてしまった後、本戦までしっかりやっていこうと話し合っていました。この時期はやはり“日本一を絶対獲る”という思いで、自分も含めてチームとしてやってきました。本当にこの時期は気を抜くことなく、チームがまとまってやれていたという記憶はあります」

Q 昨年の東山はタレント揃いでしたが、米須選手から見てどんなチームだったか、ファンの皆さんに話していただけますか？
「昨年はバランスがよくて、身長もそこそこありました。でも、3年生は僕と中川（泰志）とジャンピ（ムトンボ・ジャン・ピエール）の3人で、（そこに2人の）下級生が絡んでくる形だったんです。どこからでも点数が取れるというのは、強みだったと思っています。今年は3人が抜けましたが、下級生にもいい選手がたくさんいますので、今年こそはチームプレーを展開して昨年の準優勝を超えられる結果を出してほしいと思います」

Q 3回戦で福岡大附属大濠に大勝し、準々決勝では前年の雪辱で気合十分だった報徳学園を返り討ちしました。この2試合に快勝したことで、チームとしての自信が高まったという感じはありましたか？
「大濠さんとの試合は僕たちにとって一つの山場かなとチームで話し合っていて、そこでしっかりの大差をつけて勝つことができました。いい自信がついたというのはありましたが、そこで少し気が緩んでしまいました。報徳さんとの試合はずっとリードされてしまいましたが、最後に自分たちがやってきたことをしっかりやることができて勝てました。その2試合を終えて後は、すごく自信がついたと思います」

Q 準決勝は府大会決勝で負けた洛南でした。残念ながら小川敦也（現筑波大）が前の正智深谷戦で捻挫して出られませんでした。それでも洛南に雪辱しての決勝進出には、米須選手と東山にとってどんな意味があったと思いますか？
「ウインターカップの予選で負けていたので、“ここでは勝つぞ！”とチームの中で話し合っていました。自分としては小川がいなかった分、勝ってもあまり喜べなかったという感じでした。小川がいた洛南に勝ちたかったということが自分の中にすごくありましたけど、勝負なのでしっかり勝って決勝進出できたことは非常によかったと思います」

Q 決勝戦の前夜から当日の朝にかけて、どんな心境で過ごしていましたか？　
「決勝が泣いても笑っても高校生活ラストの1試合ということで、自分たちは（大会前から）チームとして“ウインターカップ自体を楽しんでやろう”と話し合っていました。決勝では勝つことがもちろん大事なんですけど、楽しんでやることを第一にやろうとみんなで話しました。そこで結果がついてこなかったのが悔しい部分ですけど、最後にあの決勝の舞台に立てたことは本当にうれしかったと思います」

Q 改めて仙台大附属明成との決勝戦、どんな試合だったかを米須選手が覚えている限りで話してもらえますか？
「出だしは明成さんのほうがよかったと思っています。前半を自分たちがリードする形で終えることができ、第3クォーターもしっかり乗り切れました。ハーフタイムのときに話し合ったことが、一つ前の代（2019年）で福岡第一さんと準決勝で当たりましたけど、前半でリードしながら第3クォーターで追い上げられ、逆転で負けたという記憶が自分たちにありました。昨年のことを思い出し、“しっかり3ピリを乗り越えよう”と話し合っていました。3ピリを乗り越えたことで自分もそうですし、チームも少しホッとして気が抜けてしまったことで、第4クォーターで逆転されて負けてしまったというのがあります。そこを乗り越えたからといっても、勝ったわけではないと感じることができました、バスケットは40分間しっかりやっていかないと、勝利がついてこないと改めてわかりました。大学に入ってからはそこを大事にし、40分間しっかり自分たちのバスケットをやり続けることを常に意識してやっています」

Q この24時間でちょっとだけ幸せだったこと、何かありますか？
「川崎のクラブハウスに昨日（12月14日）入寮させていただいたんですけど、部屋にファンレターが10通くらい届いていたことです。昨年のものかわかりませんが、だいぶ届いていたのはうれしかったですね」

Q もらえるとやはりうれしいですか？
「うれしいです。ファンレターは実家でとっておいています。昨日届いたものはまだですが、もらったのは全部読みます。うれしいことがいっぱい書いてあるので、それを自信にしていますね。褒められると伸びるタイプです」

Q 川崎のメンバーで一番かわいがってくれる人は？
「（篠山）竜青さんじゃないですかね。昨シーズンいたときは辻（直人）さんとかも。竜青さんは大学が一緒ということもあって、大学のことでいろいろ話したりします。あとは見た目のこととかですね。僕は高校のときとか足の毛とか全然剃っていなくて、“そういう面でも周りから見られているから、きれいにしておいたほうがいいよ”とか言われながら学んでいます」

Q 川崎で活動する期間は決まっていると思いますが、何か目標を置いていますか？
「昨シーズンはたくさん学びました。ディフェンスを中心として学ばせてもらって、それを大学の1年間で実践し、（チームにも）しっかり還元できたと思っています。今年はディフェンスにプラスして、オフェンスの面では自分がピックプレーをよくやるので、一つ一つ細かいところを学んでいって、大学に戻ったときに還元していけたらなと思っています」

Q 仙台大附属明成戦後「プレーの面よりもメンタルの部分でやられたと思います」と話していたのですが、他にそう思えた理由を改めて話すことができますか？
「プレーの面では引っ張ることができていましたが、追いつかれてきたときに自分がチームメイトに声をかけたり、一つでもいいので声をかけることができれば、チームも自分も落ち着けたと感じています。一つ何かしらメンタルのことでチームに声をかけることができていたら、自然と勝ちは見えてきたはずと思いました」

Q あの試合は、ポイントガードとして必要なリーダーシップという面ですごく勉強になりましたか？
「ポイントガードとしてのプレーで引っ張ることはできていたと思いますが、自分だけになってしまい、周りに伝達できていなかったというのがありますね」

Q 決勝戦後に大澤徹也コーチから言われたことで印象に残っていることは？
「試合後に“次の大学でしっかりやればいい”と言われたのは覚えています」

Q 仙台大附属明成戦はすごく悔いの残る試合であると同時に、モチベーションとして今の自分を駆り立てる材料になっていますか？
「その試合を経験したからこそ、今に至っていると思っています。最後のフリースロー3本もそうですし、そこで自信がついたというか、できないことはないと思っていました。あのような競っている場面で、どれだけ自分でしっかり攻めることができるかというのを今の大学でやっています。そこはあの試合があったからこそ、今の自分があると思います」

Q ウインターカップで東京体育館のメインコートでプレーできたことは、米須選手にとってどんな意味を持っていますか？
「自分もメインコートでバスケットをやりたいと、中学のころからウインターカップを見て思っていました。2年生のときにメインコートに立ちましたけど、決勝の舞台には上がれずに悔やんでいました。最後の年にしっかり決勝の舞台でプレーできたというのは、本当によかったなと思います」

Q 大澤コーチからの勧誘を受けて長崎から東山に入学し、3年間で学んだこと、今の大学生活やバスケットボールに活かされているところは？
「東山は留学生がいるチームでした。プレーの面で留学生の使い方だったり、中学校で教えてもらえないようなことを教えてもらいました。バスケット以外の生活面でもそうなんですけど、“リーダーとしてしっかりしていればバスケットにもつながる”と3年間教えてくださいました。今の大学でも生活面とバスケットをしっかりやるようにしています」

Q 高校の後輩や今大会に出場する選手たちに対し、ウインターカップの準備する過程で何か大事なことを伝えるとしたら、どんなことになりますか？
「1年を締め括る最後の大会ということもあるので、1年間チームとしてやってきたことを出し切ることが大切かなと。また、自分たちもそうだったんですけど、最後の大会なのでしっかり楽しんでバスケットをしてほしいと思います」

Q 雰囲気が変わったように思うのですが、今の米須玲音は去年から何が変わったと思われますか？
「そんなに変わりましたか？　自分ではそんなに変わっていないと思うのですが…。身体は大きくなりました。周りの人からも、ちょっと（筋力が）ついてきたねと言われます。日本大の選手たちが大きいので、自分でも成長したかなと感じられないのですが、周りから言われるとうれしいですね」

文：青木崇