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バスケット ボール コラム 2020年12月29日

悪夢のラスト10分。悲願の頂点を前に足が止まった東山  | ウインターカップ 2020 レビュー【大会最終日】

ウインターカップコラム by 青木 崇
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仲間に抱き抱えられる米須玲音(中央)

仲間に抱き抱えられる米須玲音(中央)

米須玲音を軸にした質の高いセット・オフェンスに加え、今年の東山は中川泰志と西部秀馬が走ることで、トランジションでの得点が増えたことでパワーアップ。ポゼッションごとに変化する仙台大附明成のゾーン・ディフェンスに対しては、ムトンボ・ジャン・ピエールがリバウンドを奪うと、米須のアウトレットパスからレイアップを決めるシーンが何度か見られた。ハーフコートの展開になっても、ディフェンスが収縮したタイミングを逃さず、オープンショットをしっかり決めるなど、東山のペースで試合が進んでいく。

3Qもジャン・ピエールのオフェンス・リバウンド、米須がクイックネスを生かしてフローターでフィニッシュするなど、東山は2ケタのリードを維持していた。しかし、前半に比べるとオープンショットの精度は下がり、仙台大附明成のゾーン・ディフェンスがボディブローを打たれ続けたように動きの鋭さとアグレッシブに攻める姿勢が失われていく。司令塔の米須は状況を次のように振り返る。

「前半は自分たちのいいペースで攻められることが多かったです。後半明成さんがしっかり前からプレスで当たってくると予測していたんですが、思ったよりもディフェンスの圧が強くて、自分たちが受け身になってしまったのがすごく大きく、そこで明成さんのほうが気持ちで上回っていたのがあった。プレーの面よりもメンタルの部分でやられたと思います」

4Qになると、プレス・ディフェンスが原因で東山はターンオーバーを多発。仙台大附明成はエースの山崎一渉が3Pショットとドライブで得点したのをきっかけに、越田大翔が2本連続で3Pプレーとなるレイアップを決めるなど、18−3の猛攻で67対62と逆転に成功する。

「東山は速いチームなのに、オールコートでプレスをかけられて自分たちのリズムが崩れて、重くなってしまい、思うように攻められなかった」と西部が語ったように、連戦の疲労もあって東山は速い展開に持ち込めないことに加え、オープンでショットを打ってもリングの手前に当たってのミスが増えていく。それでも、残り2分24秒のタイムアウト後、ジャン・ピエールと堀陽稀がオフェンス・リバウンドから得点を奪うなど粘り強さを見せ、残り16秒で70対70の同点に追いついた。

One more stop!

あと1回ディフェンスで仙台大附明成を止められれば、延長で持ち込める状態だった。仙台大附明成の佐藤久夫コーチが「我々に運があったね」と話したように、山崎一渉が放ったドライブからのジャンプショットがリングを弾くも、ジャン・ピエールがリバウンドを奪えない。オフェンス・リバウンドを奪った山崎一渉は、フリースローラインの少し内側からショットを決めた。

まだ5.6秒残っていたものの、東山はタイムアウトを使い切っていた。米須のパスを受けた堀のショットは、山崎一渉にブロックされて試合終了。3Qまで主導権を握りながら、最後の10分間でリズムを失っての逆転負けに、大澤徹也コーチが記者会見の冒頭で「まだ頭が真っ白なので、うまくまとめられないかもしれない」と口にしたのも無理はない。

速攻が出せずにオフェンスのリズムが失われたことについては、「確かに連戦で疲れているので、正直疲労はありました。あそこで本来の私たちのバスケットをできなかったのが敗因に尽きる。リードしたときに守りに入ってしまったというか、いつもの彼らであればギアを上げて突き放す力があった。そこは彼らではなく、私の采配ミスだと思います」と自身を責めた。

2016年に福岡第一に3点差で負けたのに続き、今回は2点差での準優勝に終わった東山。悔やんでも悔やみきれない負けかもしれないが、米須を軸に質の高いオフェンスを展開し、今年のウィンターカップを大きく盛り上げたのは間違いない。

文:青木崇

青木 崇

青木 崇

NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。

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