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ずっと追いかけて来た、先輩たちを超えることはできなかった。広島皆実高校のオールラウンドエース三谷桂司朗(3年)にとって最後となった高校日本一への挑戦は、初戦敗退に終わった。ウインターカップ2019第72回全国高校バスケットボール選手権の男子1回戦、広島皆実は、71−93で船橋市立船橋高校との強豪対決に敗れた。三谷は「リバウンドやルーズボールで相手に上回られた。ボールをもらう前からコンタクトをされ、ストレスを感じさせられるなど、相手が上手かった」と悔しがった。スピードのあるマークマンを代わる代わる付けられて徹底的にプレッシャーをかけられる中、それでもインサイドのパワー勝負に巧みに引き込んだ。相手のファウルを誘い、フリースローなどで計38得点。しかし、試合の流れを変えることはできなかった。
相手に強烈なディフェンスで機先を制された。市立船橋は、圧倒的な走力とコンタクトの強さで第1ピリオドを圧倒。広島皆実は16−29といきなりリードを奪われた。三谷がインサイド勝負を制する中、外角シュートが入れば相手を揺さぶることもできたが、第1ピリオドにリズムを崩されたアウトサイドのシュートは入らず、三谷頼みとなった。藤井貴康コーチは「もっと攻撃のバリエーションはあるのですが、相手のディフェンスによって思い切りがなくなってしまいました。ある程度は想定していましたが(初戦で)硬さもあります。それも現状の力。差し込まれて、気持ちが慎重になり過ぎた部分があったと思います」と唇をかんだ。10点差もプレッシャーだ。外れたシュートのリバウンドも市立船橋のビッグマン楊博(3年)に奪われ、攻撃のテンポアップができなかった。
前半、36得点中22点を決めた三谷は、第3ピリオドこそ得点が止まったが、最終ピリオドには、最後の意地を見せた。「どこからでも点が取れるようになった。学年が上がるにつれてマークが厳しくなる中でも、ゴールをこじ開けられるように、タフになれたかなと思う」と3年間の成長を振り返ったとおり、自陣ゴール前でブロックショットを決めると、そのままドリブルで速攻。相手のファウルを受けながら力強くレイアップシュートをねじ込んでバスケットカウントを獲得するなど、3年間で大きく成長した力を十分に見せつけた。
三谷が追いかけて来たのは、1年次に全国8強まで一緒に勝ち上がったハイレベルな3年生チームだ。三谷が入学する前年、彼らは2年生4人で主力を担った。下級生のうちから上級生に負けずに戦うために必要なこと、それで成長できることをよく知るメンバーだった。だから、スーパールーキーの三谷に厳しかった。当時の主将、原未来斗らを「ずっと怖かった」と話す三谷だが、彼らには深く感謝している。「一番大きかったのは、1年生のときの3年生の影響。藤井先生に1年生からスタートで出させてもらいましたし、その年の全国大会(インターハイ)を見て代表にも選んでいただきました。その経験が高校生活で一番大きな力になっていたと思います」と全国大会に憧れを持つ一介の高校生から、高みを目指すプレーヤーに変ぼうしてきたきっかけは、今も忘れていない。世代別の日本代表に選ばれて注目を集め、海外の選手との対峙で刺激を受けた。3×3のU−18日本代表ではアジアカップ優勝に貢献した。藤井コーチも「皆実だけでは、ここまで伸びなかったと思っている」と認める飛躍は、三谷の未来を大きく広げて来た。
今年は、インターハイで8強。先輩たちに並ぶことはできたが、目標の4強には届かなかった。しかし、エースとしてチームを引っ張る中での経験は、大きな成長と夢を与えてくれた。三谷は大会後、11月から練習に参加していた地元のBリーグチーム広島ドラゴンフライズで特別指定選手としてプレーする。年末の試合ではベンチ入りする見込みだ。三谷は「高校生でもBリーグで頑張っているというところを全国の高校生に見せたい」と挑戦を楽しみにしている。また、来春の卒業後には、関東の強豪大学へ進む。1年生から出場機会を得ることが、まず目先の目標になるが、夢はもっと先にある。お気に入りの選手であるヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)がプレーするNBAだ。馬場雄大(テキサス・レジェンズ)のプレーも参考に、ガードとしてプレーしたいという。代表でともにプレーし、10月にNBAのスター選手ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)が来日したイベントにも一緒に参加した富永啓生(桜丘高校→レンジャー・カレッジ→卒業後のネブラスカ大進学が内定)は、昨年のウインターカップで活躍した後、米国に渡っている。三谷は「3年生になったばかりの頃と比べたら、海外に挑戦したい気持ちは、確実にふくらんでいます。今は、日本人選手もどんどん海外に挑戦しているので、負けていられないなと思います」と米国挑戦に思いを馳せた。高校バスケットで先輩の背中を追って大きく成長した三谷は、まだまだ先へと進んでいく。
文:平野貴也
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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