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最終スコアは73対109。B1の強豪で天皇杯3連覇の千葉ジェッツを相手にしながらも、福岡第一がスコア以上にいい戦いをしていたことは、試合を見た人の多くが認めるところだろう。司令塔の河村勇輝は、日本代表である富樫勇樹とのマッチアップでアグレッシブに攻める姿勢を見せ、持ち味の速攻や相手の裏を突くピンポイントのパスを通して得点機会を作っていた。井手口孝コーチは試合を次のように振り返る。
「いろいろ用意はしたんですけど、最終的にはいつも自分たちがやっているようなバスケットをやらせようというところに戻りました。途中(キエキエトピー)アリと(クベマジョセフ)スティーブの2人というのもやったんです。あまり高校のカテゴリーでは意味がないことだけども、彼らがいつもやっていないような外国人とマッチアップできたからよかっただろうし、富樫くんが優しくディフェンスしてくれたから、河村が活躍できたかなという気がしています。珍しくゾーンを練習したのでやってみたんですが、ちょっとうまくいきませんでした。オールコートでボールを取れたり、24秒バイオレーションも取れたし、少しはいい時間帯はあったかなという気がしますね」
なんちゅう高校生!と、さすがプロ!の連続で、終始なんちゅう!さすが!なんちゅう!さすが!しか出てこない、なんちゅうさすがな試合だった。#千葉ジェッツ vs. #福岡第一高校#天皇杯 #皇后杯 #全日本バスケ pic.twitter.com/b2e4GRXDli
— J SPORTS🧡バスケット【公式】 (@jsports_wc) 2019年11月30日
40分間ハードに戦う姿勢を見せた選手たちについて、指揮官は涙が出そうなくらいの感情を持ったという。しかし、21点、10アシスト、6スティールを記録した河村は、「悔しいです。その一言に尽きます。チームとして課題を持って臨んだ試合でもありましたし、個人的にもいろいろなことを挑戦しながらやっていこうと考えていたので、通用する部分も少しはあったんですけど、大半は全然プロ相手に通用する部分が少なかったので、悔しいの一言に限ります」と語ったように、本気で勝とうとしていたのだ。とはいえ、富樫とマッチアップできたことが、今後のバスケットボールキャリアで役に立つと捉えている。
外国籍選手が同時に2人出場するBリーグのチームと対戦ということもあり、パワーフォワードのところにおけるミスマッチが勝敗を分けたと言っていい。それは、マイケル・パーカーとニック・メイヨの2人で47点を稼いだことでも明らか。「4番ポジションの神田(壮一郎)と仲田(泰利)がちょっと厳しいですね、外国人相手には。マイケル・パーカーとやらなければいけないですから、そこは仕方ないかなと思いました」と井手口コーチが話したように、高校レベルで体感できない部分があまりにも多かった。
それでも、スモールフォワードの内尾聡理がゲーム最多の26点、リバウンドも10本奪ってのダブルダブルを記録したことは、ウインターカップに向けてのプラス材料。井手口コーチは「リバウンドからのシュートとかいいところが出ましたね。立ち上がりは内尾が一番気遅れしていたんだけど、一回怒ったら途中から引き締まって…」と評価した。
ウインターカップでの福岡第一は追われる立場になる。得意とする速いトランジションゲームを展開させないために、相手チームはテンポの遅い展開に持ち込もうとするなど、様々な戦略を練って試合に臨んでくるだろう。プロ相手のハーフコート・オフェンスは、動きが止まってアウトサイドからシュートを打たされるシーンが前半で多かった。しかし、高校相手だと経験できないディフェンスの厳しさを体感できたことは、ウインターカップに向けてレベルアップが必要と認識できた部分。河村とガードコンビを組む小川麻斗は次のように語る。
「高校生はディナイが緩いというか、簡単にボールが入ると思うんですけど、プロは簡単にボールを渡せてくれなかった。自分たちのセットプレーが全然うまく行かなかったので、そこはこういう時にどういう攻め方をするのかを今日の試合でできなかったことが、これからの練習でやっていけば高校生相手にいいセットプレー、ハーフコートオフェンスができると思うので、そこは今日気付けてよかったと思います」
天皇杯の翌日、福岡第一はウインターカップに向けた準備の一環として、和歌山で練習試合を行った。「天皇杯はウインターカップ優勝ありきの経験の試合だと思っているので、しっかりウインターカップで優勝しないと天皇杯は意味がないのと同じになってしまう。プロ相手に通用した部分は高校生相手でも絶対通用すると思うので、そういうところを伸ばしつつ、通用しなかったところをしっかり改善して、ウインターカップで優勝できるように頑張っていきたいと思います」と話す河村を軸に、チームのモチベーションはより高まっている。
文:青木 崇
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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