人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

野球 コラム 2025年11月10日

今永昇太、FA決断の背景

MLBコラム by 山田 結軌
  • Line

今永昇太(カブス)

今永昇太投手(32)がカブスからフリーエージェント(FA)になった。

ルール上、1年契約を結ぶ可能性はある。クオリファイング・オファー(QO)という制度で2026年シーズンの1年契約の提示を受けている。ルール上、年俸上位125選手の平均、2202万5000ドル(約33億7012万円)と定められている。

カブスは今永の3年総額5775万ドル(約88億7500万円)の球団が持つ契約延長権を行使しなかった。つまり、カブスとしてはこの金額は高額だ、見合わない、と判断した、という意味合いが強いだろう。

一方、今永は選手側の契約延長権を放棄した(2026年の年俸1525万ドル=約23億3800万円)。これにより残留するとしても、QOの金額は今永が契約延長の権利を使うよりも高額だ。

だが、仮に今永がQOを受け入れなければ、FA市場で複数年契約を求めることになる。この場合でもカブスと新たな契約内容で再契約する可能性はあるが、他の29球団への移籍が現実的だろう。

今永としても1年契約を避け、複数年契約を狙うメリットがある。それは、来オフに控える労使交渉だ(現協定は2026年12月1日に失効)。

ワイルドカードシリーズ期間の今永

 選手会とMLB機構(オーナー側、経営サイド)が、2027年シーズンから5年間の労使協定の合意を目指す。前回の労使交渉ではぜいたく税の上限金額の設定などで交渉が難航した。2022年は例年、2月中旬の春季キャンプインは3月中旬にずれ込み、開幕は1週間遅れの4月8日だった。

次回の労使交渉は、オーナー側が年俸の上限、いわゆる「サラリーキャプ制度」の導入を狙うため、選手会から大反対を受け、交渉が難航、長期化する懸念がある。選手の報酬・待遇の向上を求める選手会と、近年上昇し続ける高額年俸に歯止めをかけたい経営サイドは激しい対立が予想される。

労使協定が合意するまでは、球団と選手は契約交渉ができない。つまり、このタイミングでFAになる選手たちは2027年以降どこでプレーするのか、年俸や契約年数の決定が遅れる、というわけだ。

今永がこのままQOを受け入れずFAになるとしたら、来オフの労使交渉による混乱を避けたい、という考え、狙いがあるのかもしれない。

カブスでの2シーズンで今永は54先発で24勝11敗、防御率3.28、通算318回で291三振、54四球。2024年はオールスター選出された。今季は左太もも裏の負傷で5~6月の大半を離脱。25先発で防御率3.73、144回2/3で117三振、26四球だった。打たれた本塁打は31本で、そのうち20本は終盤の12先発で喫した。

「相手を上回るために常に工夫をしないといけない」と繰り返し話してきた今永。
「アメリカの打者に対しての高い壁は感じていて、自分が100%の力を出し続けなければ、または100%の力を出しても、もしかしたら通用しないときもあるかなと感じていた」と話したこともある。

「自分の人生に正解しかないと思うので、僕が下した判断はすべて正解になると自分が証明していく」

FAでの決断もまた今永なりの「正解」があるはずだ。

文/写真:山田結軌(MLBジャーナリスト)

山田結軌(やまだ・ゆうき)

山田 結軌

1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツに2007年4月入社、阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。2025年2月に18年間務めたサンケイスポーツを退社しフリーに転身。

X(旧:Twitter)
@YamadaMLB

Instagram
yukiyamada_mlb

  • Line

関連タグ

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
野球を応援しよう!

野球の放送・配信ページへ