ダルビッシュ有「1段モーション」で上昇気配へ

9月14日のロッキーズ戦に先発したダルビッシュ

手応えがあり、上昇を感じさせる力強さがあった。パドレスのダルビッシュ有投手（39）は9月14日のロッキーズ戦に先発し、5回0/3で82球を投げ、4安打3失点。4勝目を挙げた（5敗）。

特筆すべきは、右肘を下げたフォームに変更した7月末以降の最速、96.4マイル（155.1キロ)をマークしたこと。投げる球の強度が上がり、スタミナも向上している。

「過去数試合に比べたら（ボールの）リリースで、特に真っすぐ系はリリースの感覚が、だいぶ良くなって来ている感じがしました」

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82球中、直球とツーシーム、カットボールを含めた「速球系」は50球。全体の61％を占めた。コントロールと球威が噛み合ってきた、という証拠だ。さらに3月中旬に発症した右肘の炎症から、体調は万全に近づいていることを示す。

この試合、降板シーンはピンチを招いた六回無死一、二塁。ダルビッシュ自身は、タイムがかかり捕手、内野手がマウンドに集まり、次打者以降の対策、配球プランを打ち合わせていた。

「僕はもうちょっと（球数を多く）行きたいですけど。ここからじゃあ力込めるぞ、っていう時に（交代を告げられた）。試合展開とかもあるので、自分は監督でもなんでもないですから。でも選手個人としては、もうちょい投げたいな、っていう気持ちはありますね」

首脳陣としては、負傷明けで再発のリスクを犯したくない。ポストシーズン以降を見据え、ダルビッシュは絶対に必要な戦力であり、健康で投げ続けてもらわなければいけない存在だ。

重要なのはダルビッシュ自身が「もうちょい投げたい」と強く感じていたこと。もちろん、強い責任感から発する言葉だが、82球の時点でまだエネルギーが十分にあった、と感じていた事実は好材料だ。

9月14日のロッキーズ戦で4勝目を挙げた試合後、メディア対応するダルビッシュ

「試合の中盤とか後半になってきてのピンチの場面とか、やっぱり全然（重圧や体への負荷が）違うので。そこで投げることによって状態が上がることもあるので、そういうのを経験したいなと思いますけど」

この試合、フォームのタイミングを変えた。本来は、左足を上げ2段モーション気味にタメを作る。しかし、左足を上げると速いテンポのまま、並進運動で加速させるように「1段モーション」で投げた。従来の2段モーションでの投球はわずか3球。果たして、その意図は。

「（左）足を上げてゆっくりずっと投げていると、だんだん自分も年齢も年齢なので、どんどん動きが遅くなってくるんですね。速い動きを入れておかないと、あの動きで速く動けなくなってくるので、今日はこの前のブルペンもそうでしたけど、ちょっと速い動きで1回、体を慣れさせて、そこから（左）足を上げて、止めたりとかっていうの（フォーム）やろうかなっていう（狙いがあった）」

春季キャンプで取り組んでいた「新フォーム」の引き出しを活用した。「速く動く」というテーマは、シーズン終盤とポストシーズン、さらには今後の投手人生に必要。短期的には調子を上向かせる手段だった。結果として、球速上昇にもつながった。

「どうしても体の動きの遅さが気になるから、あれ（2段モーション）でいってしまうと、この先を考えた時ちょっと難しくなってくるかなと思ったので（投球フォームの動きを）速くした、っていう感じで。途中からまたいつでも行けるように、またこういう普通の今まで通りの（二段モーション気味の）フォームも入れましたけど」

ナ・リーグ西地区首位のドジャースとのゲーム差は遠いようで近く、近いようで遠い。ダルビッシュの安定感と経験値は、ライバル追撃に不可欠だ。

文／写真：山田結軌（MLBジャーナリスト）