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先発に向かうエンゼルスの菊池雄星
力強い投球だった。エンゼルスの菊池雄星投手(34)は中4日で、8月20日(日本時間21日)のレッズ戦で27度目の先発。88球で7イニングを投げ、7安打1失点、無四球、4三振と好投した。
「カーブも良かったし、スライダーも良かったんですけど、一番はストレートの割合をもう1回増やして、インコースの割合も増やしながら。ここ数試合、ストレートの割合がかなり減っていたので、そこを増やして投げました」
直球の割合は39%(34球)。そして、判別不能の変化球を投げ分けた。データ解析システム・スタットキャストによれば88球中、37球がカーブとしてカウントされた。77マイル(124キロ)から85マイル(137キロ)まで球速帯が広いものの、1つの球種として数えられた。
しかし、菊池がいうにはスライダーは「85~86マイル(137~138キロ)にしている」。レーダーによる自動判定ではカーブとスライダーの判別が、混在しているようだ。
「そこら辺がごちゃごちゃになっているんですけど、そうなるぐらいでいいんじゃないですかね」。
カーブはこれ、スライダーはこう曲がる、という境界が曖昧な方が、曲がり幅、スピード、変化量が一定しない、ということだ。それは、つまり投球軌道のバリエーションが豊富で打者も狙い球を絞りにくくなる。
「(相手が)慣れてきたら打たれますし、その繰り返し。また来週、再来週とテキサス(レンジャーズ)、ヒューストン(アストロズ)と、何回もやっている相手なので、そこでまた同じような形(工夫)ができればいいなと思います」
菊池が登板した8月20日のエンゼルスタジアム
対戦回数が多くなるほど、癖や配球を分析され、対策される。手を替え品を替え、レベルアップを続けなければメジャーリーグで生き残ることができない。
新たに出る課題をその都度、克服するからこそ、菊池は7シーズンをメジャーで過ごすことができている。そして、記録を作ることにもつながる。日本メジャー選手として歴代5位となる990三振を達成している。
「先輩方のようなとんでもないボールを投げられるわけじゃない。ただ、その分、中4日で(先発ローテーションを)回り続けることだけは、自分のできること。そこだけはプライドを持ってやっているので、長くケガなくやっていれば、少しずつこういう記録もついてくる。引き続きケガなく長く、このMLBで投げたいなと思います」
1位はダルビッシュ有(2041三振)、2位は野茂英雄(1918三振)、3位は前田健太(1055三振)、4位は田中将大(991三振)。上位には尊敬する先人たちの名前が並ぶ。
「エンジンの大きさが僕とは違う。投げるボールとかは敵わない」。
謙遜するが、雄星も大きな負傷をすることなく投げ続けている。もちろん、ケアやトレーニング、栄養管理の努力があってこそ。丈夫な身体もまた 『いいエンジン』を積んでいることには変わりない。
エンゼルスは各地区2位以下の勝率上位3位までがプレーオフに進出できるワイルドカード圏内まで6.5ゲーム差。レギュラーシーズンは残り35試合。2014年以来となる10月の戦いへ、可能性を信じて戦い抜く。
文/写真:山田結軌(MLBジャーナリスト)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツに2007年4月入社、阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。2025年2月に18年間務めたサンケイスポーツを退社しフリーに転身。
X(旧:Twitter)
@YamadaMLB
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