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二軍から再びはい上がっていかなければいけない二俣
混戦のセ・リーグで上位争いに加わる広島では、若手によるチーム内競争が繰り広げられている。打線の中軸が固定されつつある中で、常時スタメンに名を連ねているのは両外国人野手、正捕手の坂倉、4番を務める末包の4選手ほど。この競争を激化させたのは、20日にプロ初昇格を果たした新人の佐々木だろう。
昇格即スタメンとなった20日ヤクルト戦から3戦連続で三塁スタメン出場を続ける。ここまで14打数3安打も、思い切りの良さや打撃内容からも大きな可能性を感じさせる。新井監督も「彼は打撃だけではなく、守る方でも走る方でも攻撃的な選手。どんどん失敗を恐れず、攻めていってもらいたい」と、その潜在能力の高さを認める。
秋山不在時に1番打者として存在感を発揮していた中村奨のスタメン機会が減り、昨季チームでただ1人全試合出場の小園の立場も安泰ではなくなった。また、打撃不振から昨季ゴールデングラブ賞の矢野も、25日DeNA戦ではスタメンから外れた。一塁をのぞく内野と外野の一角を、若手選手たちがしのぎを削りながら奪い合っている状況だ。
競争は一軍に残る選手たちだけのものではない。佐々木が一軍昇格した前日、出場選手登録を抹消されたのが、佐々木と同学年の二俣だった。今春キャンプで大きくアピールし、期待値も評価も高かった。自身初の開幕スタメンに起用され、若手の争いの中でリードしていた立場だった。
4月2日ヤクルト戦で顔面にバントからの自打球を受けて前歯が上下8本破損しても、翌日もグラウンドに立った。目の前にあるチャンスを逃すまいとする闘争心は、チーム内に刺激を与えた。だが、崩していた打撃の感覚を取り戻すことはできなかった。いくら振り込んでも感覚は戻らず、成績も下降。代わって出場機会を得た末包や中村奨が結果を残す一方で、結果も内容も伴わない打撃が増えた。「自分も何とか食らいつけて行かないといけないという思いがあった中で、結果が出なかった」。今は、二軍から再びはい上がっていかなければいけない立場となった。
この挫折はステージをひとつ上がろうした二俣だからこそ、直面した壁とも言える。昨季までのユーティリティー選手という立場であれば、二軍降格することなく一軍に残れたかもしれない。1つのポジションを奪い、レギュラーをつかむことに挑んだからこそ訪れた試練だ。
シーズンの戦いとともに、若手の生き残り争いは続いていく。プロ野球の世界ではシーズンが変われば、新しい戦力に目が向くものだ。《若手》と呼ばれるカテゴリーの中にも序列は存在する。12日に二軍降格となった田村も今年で4年目。今年のドラフト指名候補の大学生たちは同学年だ。うかうかしていられない。
昨季終盤に失速した経験から、首脳陣はシーズン終盤に戦える選手を求めている。果たして、そのときグラウンドに立っている若手は誰なのか。混戦が続くセ・リーグのペナントレース同様に、広島の若手による争いの行方もいまだ先が読めない。
文:前原淳
前原淳
カープ取材歴18年。03年に地元福岡の大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みをへて、07年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。現在は日刊スポーツの契約ライターとして広島担当。日刊スポーツだけでなく、NumberWebにて「一筆入魂」を隔週連載するなど幅広いメディアに原稿を執筆するカープライター。X → @mae_junjun
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