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相手は、ドジャース、ダイヤモンドバックス、パドレスのいずれも「コンテンダー」といわれるプレーオフを狙う強豪チームに対して、だ。3度の先発(18回1/3)で2勝0敗、防御率0.98の数字を残している。
実は約10日前、結果的にこれらの好投につながる一因を聞いていた。3月26日。カブスが日本でのドジャースとの開幕シリーズを終え、アリゾナに戻り、米国開幕に向けて再調整期間中、朝のクラブハウスだった。
「開幕前にこの感覚を得られたのは、僕の中ではかなり大きいことです」
果たして「この感覚」とは?
起点は東京ドームでの開幕前日、3月17日の練習だった。「キャッチボールをしていて、ホトビー(投手)コーチと『アレ?』ってなって」。
今までになかった投球の軌道に2人の頭には「?」が浮かんだ。なぜか。それは、東京ドーム特有の現象によるものだった。東京ドームは屋根の構造上、ドーム内が屋外より気圧が高い。そのため、ホームランが出やすいとか、打球が飛びやすい、という話はお聞きになったことがあるのではないだろうか。
今永も横浜DeNA時代にはプレー経験があるが、久しぶりの東京ドーム。簡単にいえば、自分の球がいつもよりノビがあるように感じたのだという。
そもそも、今永の直球(フォーシーム)はメジャー平均と比べて、回転数が多く、打者がノビを感じやすい。厳密に言えば、投球は重力により落下していく。「ノビる」という表現は打者も投手も落ち幅が少ない=ノビているように感じる、という錯覚だ。
今永は、開幕戦のマウンドを翌日に控えた練習で今まで以上の「ノビ」を感じたという。だから、開幕戦後の会見で、以下のような『含み』のある表現をしている。
今永は直球に磨きをかけている
「きょうの直球に関してはものすごく自分の中で手応えがありましたし、これくらいの真っすぐ(の質)を最低ラインとして保っていれば、いつでも自信を持って投げられるということは勉強になった」。
「アメリカは湿気があったり、乾燥していたり、球が飛んだり、いろんな環境がありますけど、いつでもきょうのような最低ラインの真っすぐは投げたいと思います」。
詳しい数値はここでは割愛するが、今永の直球は従来よりも「5センチ」ほど、ノビがあるように進化したのだという。データ的に約5センチ、去年までの直球よりも落ちない、つまりノビを感じるような軌道になった。
もちろん、1球ずつ、その投球のデータは一定ではないが、いわゆる「ホップ成分」が5センチほど向上した、というわけだ。東京ドーム効果だけではなく、アリゾナに戻ってからも日本の感覚、投球軌道の残像を追い求め、フォームを試行錯誤した。
3月24日にアリゾナ州メサのキャンプ施設でブルペン投球。冒頭の「この感覚」を再現できるか、確かめた。そして、乾燥気候で投手には不利な条件でも近い感覚が得られたという。
今永の表現したように気象条件が、その土地ごとに違う広い米国でいかに再現性を高めた直球を投げ続けることができるか。今永の進化と昨季以上の快進撃を期待したい。
文/写真:山田結軌(MLBジャーナリスト)
J SPORTS 編集部
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