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パドレスとのオープン戦で好投する今永
ブルペン投球を突如として中断して、スタンベリー通訳とホットビー投手コーチ、アマヤ捕手を呼んだ。そして、その3人の仕草や表情からは「???」が浮かんでいるように思えた。
カブスの今永昇太投手(31)は3月4日、パドレスとのオープン戦で先発。試合開始前のブルペン投球中にアメリカでは珍しい要求をした。
「小さく構えてほしい」
少しの間、今永とスタンベリー通訳でやり取り。本人の意図をコーチや捕手が理解して、投球練習が再開した。
「スプリングトレーニング全体として、キャッチャーが大きく構えると、これ何の現象なのか僕も分からないんですけど、僕も大きくなってしまう時があって」
「大きくなってしまう」とは、どういう意味なのか。身体のブレのことなのか、身体の振り幅のことなのか。
「全体的に軸が大きくなってしまう。軸が小さければ、小さい力で回れると思うんですけど、大きな幹を動かそうとするとやっぱある程度、反動も必要になってしまう。その中で(捕手の構えを)小さくしてくれたら、どうかなっていうのをちょっとひらめいた」
「そしたらこう、自分もそのミットに、すっと入っていくというか。『ぼやん』としたものじゃなくて、ある程度『ぼやん』とした中なんですけど、小さなものがある方がなんか投げやすかった」
前日の夜にひらめいたプランだったが、「それを(捕手に)言うの忘れてて(笑)。あ、そういえば、と。急に何球目かで(思い出した)」と試合後に明かした。
相手のパドレス打線には、マチャドやタティス・ジュニアが不在だったとはいえ、4イニングを投げ、無四球で2安打無失点と好投。さらに己の長所を見つめ直すメジャー2年目の春を過ごしている。
登板後、米メディアに取材対応する今永
「パワーピッチをある程度やりたいなと思った。そのパワーピッチ何かって言ったら、95マイル(153キロ)を投げるとか。(球速は)遅いより速いほうがいいので、ちょっとそっちに自分の考え方がシフトしてしまいそうになった瞬間があった」
「でも、やっぱりそれじゃあ、僕の良さではないなっていうのが、この前回の登板、前々の登板で気づいた。そこの勘違いを削ぎ落とせたっていうのは、今、現段階で早く気づけてよかったなと思いますね」
肉体を強化し、測定ではジャンプ力もダッシュのスピードも上がったという。だからといって、メジャーの剛腕投手と張り合い、力勝負を挑む、という憧れを持ち続けてはいけない。そう言い聞かせるように語った。
配球のバランス、打者との駆け引き、コントロール。それらの総合力で勝負すべき投手だと再認識している。
「強敵に立ち向かっていくっていう時の前の僕は、やはり不安の方がやっぱ大きいですね」
3月18日の開幕戦。相手は昨季のワールドシリーズ王者、ドジャースだ。各種メディアが報じる予想スタメンを目にして、「大丈夫…?」と悲観的になる瞬間もあるという。
メジャーを代表するスーパースターがそろう強力ラインアップ。開幕投手のプレッシャーと責任に加え、日本のファンからの大きな注目もある。
東京ドームでの開幕戦前、アリゾナで残された実戦はあと1度。できる限りの調整をして、凱旋登板を迎える。
文/写真:山田結軌(MLBジャーナリスト)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツに2007年4月入社、阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。2025年2月に18年間務めたサンケイスポーツを退社しフリーに転身。
X(旧:Twitter)
@YamadaMLB
Instagram
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