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野球 コラム 2023年10月6日

MOBYのMLB取材ノート〜 「守備がポストシーズンを制す」

野球好きコラム by オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)
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イチローさんがジョージ・シスラーの持つシーズン最多安打記録257を84年振りに更新した2004年10月1日から4日後、ア・リーグ中地区を制してポストシーズンに勝ち進んだミネソタ・ツインズは地区シリーズでニューヨーク・ヤンキースと対戦。10月5日に行われた第1戦では、その年のサイ・ヤング賞を満票で受賞したヨハン・サンタナが先発し、7回無失点の好投。チームも2対0と完封勝利を収めました。

幸先良く初戦を制したツインズは、1991年以来となるワールドシリーズ進出を目指したものの、この日から19年、6397日もの長い間、ポストシーズンに出場しても勝利を収めることが出来なくなるとは夢にも思わなかったことでしょう。ミネソタ・ツインズはそれ以降、ポストシーズンで負けも負けたり18連敗。それまでNHLシカゴ・ブラックホークスが喫した16を越え、アメリカ4大プロスポーツに於ける「ポストシーズンでの連敗記録」を2020年の時点で18まで伸ばしてしまっていました。18敗目の対戦相手はヒューストン・アストロズ、無観客のターゲット・フィールドで行われたその試合で決勝打となるホームランを放ったのは、カルロス・コレアでした。

昨年オフに契約に関する紆余曲折を経て、今季もツインズの牽引役として地区優勝に貢献し、今度は連敗を止める側にまわることになったコレアは、アストロズ時代に培った知識や経験で以てミーティングの際も積極的に意見を述べ、チームメイト、そして首脳陣とも共有している。そう教えてくれたのは、今季ツインズ傘下AAウィチタでベンチコーチを務めている三好貴士さんでした。とりわけ守備への意識が高く、「これでメイクマネー出来るんだぜ!?」とハッパを掛け、チームメイトに守備の大事さを伝えていた、ということを教えてくれました。

3年振りの地区優勝を果たしたツインズは、ワイルドカード3位通過ながらレギュラーシーズンでツインズよりも2勝多い89勝のブルージェイズとワイルドカードで対戦。コレアにとってドラフト全体1位の後輩にもあたる新人ロイス・ルイスのポストシーズン初打席から2打席連続ホームランにより3対0とリードした4回表2死1・2塁、ホルヘ・ポランコがベアハンドで処理出来ず後方に転がったボテボテのサードゴロを見て、二塁ランナーのボー・ビシェットがルイス・リベラ三塁コーチのストップのサインを振り切り、三塁を蹴り本塁に突入。ショートを守るコレアはそれを見逃さずカバーに入り本塁送球、間一髪でビシェットを本塁で刺すファインプレイ。ツインズ監督ロッコ・バルデッリいわく「ああいった厄介なプレーは練習して出来る様なものではない。歴史的なプレイのひとつとして、様々な場所で見られるべき、そして後世に語り継がれるべきだ」とまで言わしめました。当のコレア本人は試合後の記者会見で、こう語りました。

「ビシェットが転々とするボールを目で追いかけた瞬間、彼には意図があると解った。ボクはただ彼を追いかけた。アウトを取るチャンスに値すると思った。」

またコレアはこう続けました。

「ポストシーズン期間中に何度も言ったことだが、もう一度言うよ。守備がポストシーズンを制す、と。(Defense wins Championships.)」

6397日振りにポストシーズンで勝利し、バルデッリ監督曰く「球場が割れて溶けるかと思った。この世の者とは思えない程だった」38,450人の大歓声がこだましたターゲット・フィールドで迎えた第2戦の4回裏、ブルージェイズのジョン・シュナイダー監督による早めの継投策の切り札としてマウンドに上がった菊池雄星から、センター前に抜ける先制タイムリーを放ったのは、昨日の守備のヒーロー、コレアでした。その勢いは守備でも再びビッグプレイを呼び込みます。

ツインズは5回表2死1・2塁とピンチを迎え、迎えたのは第1戦で2安打、そしてこの日も2打数2安打と当たっているボー・ビシェット。2-2で迎えた5球目がワイルドピッチになりランナーがそれぞれ進塁。キャッチャーのライアン・ジェファーズは、たまらず無失点投球を続けている先発投手ソニー・グレイの元へ駆け寄ります。そこにすかさず訪れたのが、コレア。フルカウントからファウルを経て迎えた7球目に入る直前、コレアはジェファーズにサインを送り、ジェファーズがそれをグレイに伝えます。するとコレアは二塁ベースに回り込み、タイミング良くグレイが二塁へ牽制、不意を突かれた二塁ランナーのヴラディミール・ゲレーロJr.は本人曰く「全くの予想外」の事態に戻りきれずタッチアウト。三塁ランナーもいながら二塁ランナーを牽制で刺すという、一瞬の隙を見逃さず、守備での可能性を最大限に考えそれを遂行したコレアの経験値が、またしてもビッグプレイを生み出したのです。

コレア自身、どうやら1回表にブルージェイズが1・2塁とチャンスを作った時点で気付いた、と語っていました。この日集まった38,518人の大歓声も影響したのでしょう。コレアはベンチに戻って「みんな良く聞け。相手の三塁コーチが「バック」と叫んでいるのが、どうやら二塁ランナーに聞こえていない。牽制で刺すチャンスがあるぞ」と、その時点で準備をしていたとのこと。グレイは「その意識こそが彼を特別な存在にしている」と語り、結局ツインズは完封勝利、地区シリーズへと駒を進めたのです。

レギュラーシーズンは左足裏の痛みもあり不本意な成績で終わったものの、10月のコレアの凄さを過去に体感していたツインズは、彼を迎え入れることによって連敗を脱した、と言っても過言ではないでしょう。チームメイトたちは「彼は10月のアイアンマンのようなものだ。勝つために何が必要か知っている」「舞台が大きくなれば、彼は更に大きくなる」「スーパースターは大事な場面で現れるんだ」と絶賛。ツインズがミネソタ移転以降に初の世界一に輝いた1987年から、地元の新聞社がスポンサーとなってポストシーズン中に来場者全員に配り始め、それ以降恒例となった「Homer Hanky」と呼ばれるラリータオルに書かれている今年のスローガンは「We Believe」。

チームを信じ、そしてコレアを信じて、1991年以来となるワールドシリーズ出場に向け、地区シリーズではコレアの古巣アストロズと対戦します。そのアストロズに対し2020年ワイルドカード第1戦に先発し5回無失点と好投したものの、勝利を飾ることが出来なかった前田健太にも、期するものがあるでしょう。「チームが僕をどこに配置しても本当に構わない」と発言していることから、どこかで必ずマウンドに上がるはずです。オクトーバー・マッドネスはまた新たなフェースに入っていくことになります。

文・オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)

オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)

1995年結成、"LIVE CHAMP"の異名を持つロックバンド「SCOOBIE DO」のドラマー兼マネージャー。
MLBコメンテーターとしても精力的に活動し、J SPORTS「MLBミュージック」メインMC、そして2023年シーズンからMLB中継の解説を担当予定。2022年4月には初の著書『ベースボール・イズ・ミュージック~音楽からはじまるメジャーリーグ入門』(左右社)を出版。MLBに関するラジオ出演や執筆活動も多数。2021年にはテレビ東京系ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』で俳優としてもデビュー。

SCOOBIE DO http://www.scoobie-do.com/
Twitter: @moby_scoobie_do
Instagram: @moby_scoobiedo

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