【広島好き】カープの「弱点克服」が期待される2人のコーチ

広島好きコラム

秋季キャンプが終わり、野球界は本格的なオフシーズンに入りました。キャンプでは精力的に動いていた新井貴浩新監督は予想通り、選手とのコミュニケーションを重視するスタイルのようです。指導者経験のない新指揮官にとって、重要となるのがコーチ陣ですが、今回は新たに入閣したチームの『弱点克服』が期待される2人のコーチについて書きたいと思います。

まずは新監督の参謀格となる一軍ヘッドコーチに就任したのが藤井彰人氏です。現役時代は大阪近鉄、東北楽天、阪神の3チームで捕手としてプレーし、通算成績は1073試合出場で通算565安打、10本塁打、173打点を記録。規定打席に到達したシーズンはありませんが、巧みなリードと高い送球技術、投手の良さを最大限に引き出す女房役として、スタメンも任せられる第2、第3捕手として活躍しました。

楽天時代の2008年には87試合出場で守備率10割をマークし、リーグトップの盗塁阻止率.429で岩隈久志と最優秀バッテリー賞を受賞しています。阪神時代にチームメイトだった新井監督とは同学年で仲がよく、ヒーローインタビューのやり取りから「男前」というキャラクターで注目を浴びました。

引退後は、阪神球団からの出向扱いでBCリーグ・福井にバッテリーコーチとして派遣され、その後は阪神のファーム育成コーチ、二軍バッテリーコーチ、そして19年からは矢野燿大監督のもとで一軍バッテリーコーチを務めました。2017年のアジア・ウィンターベースボールリーグではNPBウエスタン選抜のバッテリーコーチを任されるなど、豊富な指導者経験とセ・パ3球団でプレーした経験値を評価した新監督からの推薦で就任が決まったということです。

藤井コーチには、気心の知れた新監督の良き相談役、そして監督に進言、時には苦言も厭わない存在となることが期待されます。さらに3年ぶりの現場復帰となる石原慶幸一軍バッテリーコーチとともに、今季リーグ最低の盗塁阻止率を記録するなどディフェンス面で不安のある捕手陣、さらに来季から捕手専任が決まっている坂倉将吾の指導なども期待したいところです。

今季、12球団ワーストの26盗塁と機動力野球が崩壊状態のチームで、『お家芸』の再構築を期待されるのが二軍打撃兼走塁コーチに就任した福地寿樹氏です。現役時代はカープで8年間プレーし、ウエスタン・リーグで4年連続盗塁王に輝くなど俊足で鳴らした選手でしたが、故障もあり定位置奪取には至りませんでした。

しかし、2006年にトレードで西武に移籍すると、外野のレギュラーとして一軍で2年連続20盗塁以上を記録。2008年にFA移籍した石井一久の補償選手としてヤクルトに移籍すると、プロ15年目で初の規定打席に到達し、2年連続で42盗塁をマークして連続盗塁王のタイトルに輝きました。

引退後はヤクルトで二軍守備走塁、一軍守備走塁コーチを務め、2020年は二軍チーフコーチ、2021年は再び一軍守備走塁コーチとなり、チームの日本一に貢献しています。現役時代に「足のスペシャリスト」から俊足巧打のレギュラー外野手となった「遅咲きの苦労人」は、18年ぶりの広島復帰となります。チームの現状を考えると、福地コーチには一軍でその手腕を発揮してもらいたいところでしたが、まずは二軍でチームを根底から、かつての『広島野球』の再興が期待されます。

新井新監督が師と仰ぐミスター赤ヘル・山本浩二氏も指導者経験なしで監督に就任し、いきなりリーグ優勝を果たしていますが、その時は『鬼軍曹』と呼ばれた大下剛史ヘッドコーチの存在が大きかったと言われています。二軍打撃コーチに就任した弟の新井良太氏も含めた4人の新コーチは、新監督を頂点に導くことができるのか。生え抜き中心から他球団を経験したコーチの増えた首脳陣は、低迷が続くチームを変えることができるでしょうか。

文：大久保泰伸