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島内宏明
楽天イーグルスの4番を担う島内宏明選手は、打席であまり表情を変えなかったり、真顔でユニークなコメントを発したりとポーカーフェイス。さらに驚かされるのは、島内選手は試合中はもとより、キャンプでもシーズン中でも、ファンやメディアなど外部の目があるせいか、疲れた表情を見せないところだ。
さて、今回の島内選手に聞く質問シリーズ。取材したのは、雨の中で惜敗した試合後でしたが、そんな時でも島内選手は翌日に向けてスイッチを切りかえたのか、そもそもスイッチすら不要なのかと思わせるほどの平常心といった様子でした。そんな、どこか達観している島内選手の一面が垣間見られる「ファンからの相談コーナー」を引き続きお伝えします。
―― 今年もオールスター出場おめでとうございます。昨年も打点王になるなど、ここぞで結果を出される島内選手のように、私もここぞという時に集中力を発揮できるようになりたいです。何かコツがあれば教えてください(30代女性)。
いやいや、そんな大したあれじゃないです。そんな凄いことは何もないですし(笑)。相談者の方が、どういう場面で集中力を発揮したいって考えてるかにもよるとは思いますよね。わかんないですけど、何か発表したり、商談したりっていうことなのかな。そういう時だと、やっぱり緊張しますもんね。それか、いつもやらないことを何かやらされたりする時なのかな。それもストレスでしょうしね。わかんないですけども…。
あくまで僕の場合で、打席のことで言うとすると、僕は「自分を捨てる」っていうことにしています。緊張したり、ストレスがかかったりする場面でも、自分じゃないって思うようにするんです。ちょっと引いて別人の視点で見るというか。だって自分じゃなかったら、緊張しないじゃないですか。ストレスだってかからないはずなんです。
緊張やストレスから影響されることって結構ありますからね。よく言われることですけれども、「練習と同じような感覚で試合に臨む」のは理想です。これ、どんなに心がけていても難しいことなんですけれども、僕も気持ちをゼロにするぐらいの感覚を目指しています。
あくまで僕の場合です。きっとガッと入り込んで集中するタイプの人もいると思うんですけれども、自分はこっちのほうがいいかなと思っています。人それぞれ、いろんなやり方があると思うので、相談者の方もいろんなやり方を試してみてほしいと思います。
―― 受付業務をしているのですが、新人の電話指導で困っています。これまで多くの若い人を指導してきましたが、その彼女は世代的に人生を通じて電話をほとんど使ったことがないこともあって、可哀想になるほど良くなりません。ただ、コミュニケーションが嫌いということではなく、対面で話すぶんには大丈夫なのですが、電話となると硬直してしまい、マニュアルにない反応が返ってくるとパニックになってしいます。野球という仕事でイレギュラーなことに瞬時に対応することも多い島内さん、どうすればいいでしょうか?(40代女性)
これはね…、すごい難しいですね。まあでも、本当にわからない時は「詳しい者に代わります」でいいですよね。わからないのに適当なことを言って誤魔化したら駄目ですからね。うまく乗り切れたとしても、きっと後で追い込まれて、それこそパニックになっちゃうでしょうから。うん。
パニックがどの程度かがわからないんですけど、想定外のことを電話で聞かれたとしても、まずは「少々お待ちください」でいったん保留をするなりして、考えたり、メモを見たりするといいのかなと。いったん間をおいて落ち着いて、言うべきことがわかったら応対するといいと思います。もしその前に「詳しい者に代わります」って言っちゃってたら、ちょこっと声色を変えちゃえばいいですし(笑)。だめかな?
でももし、パニックが心配なレベルなら、電話はいったん切ってほしいです。だめかな?その人が心配ですからね。まず落ち着いてほしいです。
それで、落ち着くためには、いろんな方法があると思うんですけれども、僕の場合、すごく緊張した時は深呼吸をするようにしています。緊張すると、知らないうちに呼吸が浅くなっているんですよね。ちゃんと呼吸をすることで体内に酸素が行き渡って、血液が巡る。基本ですが、すごく大事なことと思うんです。
僕はそうやって深呼吸すると、身体が柔らかくなって動くようになるのが感じられます。頭にも血が流れてるなってわかります。呼吸ができてないと、やっぱり頭がボーッとしますね。そうしているおかげか僕はパニックにならないですけど、いろんな呼吸法もあるみたいなので試したいなと考えています。なので、相談者の新人さんにも落ち着くやり方を見つけてほしいと思います。
***
アスリートらしい呼吸法の感覚だけでなく、打席で「自分を捨てる」という意識には感銘を受けました。この意識は、言うなれば自身を客観視する「離見の見」や仏教で言う「滅私」「無我」にも通じる境地。第一線で活躍する一流の思考を垣間見られた気がしています。次回もまたご相談お待ちしています!
取材・文:松山ようこ/写真:東北楽天ゴールデンイーグルス提供
松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
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