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野球 コラム 2022年7月5日

【オリックス好き】愛されるラオウ

野球好きコラム by 大前 一樹
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ラオウの逆襲が始まった!交流戦の首位打者。シーズン序盤のどん底の状態から、驚異のV字回復だ。さて、この復調がホンモノかどうか。今後のチームの浮沈に深く関わる極めて大きな鍵になるだけに、そこは誰もが注目するところである。インターリーグ18試合の打率は.391 。首位打者に相応しい数字であるが、当の杉本裕太郎本人はこのタイトルをどう捉えているのだろうか?

「18試合という短い期間ですからね。でも、首位打者って自分には縁のないタイトルだと思っていましたから、よく頑張ったと思います(笑)。ただ、自分の中では絶好調というイメージはありません。打ち損ないのあたりがヒットなるということもありましたし。以前よりはましになったというくらいで・・・」と、タイトル獲得を素直に喜ぶものの、完全復調を高らかに宣言するには至らないようだ。

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ホームランキングに打率3割という大ブレイクを受けての今季だが、シーズン序盤は極度の不振に苦しんだ。彼の表情からその苦悩ぶりがはっきりと周囲にも伝わるほどに。「絶対に打てるはずだから!」と、自主トレを共にする山岡泰輔が励ませば、他のチームメイトも、他愛もないジョークで彼の気持ちを和らげようと心を砕く。そう、誰もがラオウの復調を待っていたのだ。「全く、(ボールに)合わずに3球三振してベンチに帰った時、皆が『めちゃ、いい感じのスイング!惜しいよ!』とか声をかけてくれるんです。全然ダメなスイングなのに・・・。『どこがやねん!』と思いながらも、有難く感じていました(苦笑)」

では、絶不調の原因は何だったのか?彼の分析はこうだ。「一番は考え過ぎ。相手投手の攻め方は、昨年と大きく変わっていません。だから、相手どうこうよりも完全に自分に問題がありました。僕の場合、打席に入る前に考えを整理して、いざ打席に入れば反応でバットを出すというのが本来のスタイルなのですが、今季序盤は打席の中でもずっと考えてしまっていました。結果が出ないと余計に考えてしまう。悪循環ですよね」そんな彼を目覚めさせたのは中嶋聡監督から送られた言葉だったという。

不振脱出に向け、試行錯誤を繰り返しながらきっかけを模索していた杉本に、指揮官が声をかけた。「振りすぎ!トスバッティングの感覚でバットを出してみたら・・・。それでも、当たれば、お前の打球は飛んでゆくんだから・・・」バットの軌道をしっかりと意識しながら、鋭いスイングでボールを捉えるという彼の打撃スタイルとは、やや異なるアプローチに最初は戸惑いもあったという。「打席でトスバッティングというのは勇気が必要。なかなかできるものではない。でも、監督が言ってくれたから、思い切って試すことができた。それが、よかったですね」

興味深いのは、今季、杉本には昨年のスタイルをトレースする考えはないということ。「昨年の良かった時の打撃フォームにはしがみついていてはいけない。昨年の意識で臨んでも結果は出なかった。だから、今年は別物って考えるようにしています。体の状態も昨年と今年では違いますから。その中で、今、ベストな形を模索しています。野球は難しいです」フロックで3割は打てないし、ましてやホームランのタイトルを獲れるはずもない。そんなラオウが苦しみながらも目指す境地は遥か尊い高みにあるということか・・・。

シーズンは半ば。リーグ連覇を目指すチームにはここからの加速が求められるが、その中でも攻撃の核となるべきラオウの躍動は欠かせない。「まぁ、打つ方の責任は、Tさんやマサタカに背負ってもらって、僕は伸び伸びやらせてもらいます(笑)」らしい言葉だが、彼の一発の威力はいわずもがな。グラウンドとスタンドの一体感を大いに高める“昇天ポーズ”の回数が今後、劇的に増えることを望むばかりだ。

交流戦の首位打者。胸張れる誇らしい勲章だ。最後に、下衆の勘繰りとは知りつつタイトルの賞金の使い途を訊いてみた。「チームメイトに差し入れをしようかなと。昨年のCSの時は神戸の有名なロールケーキを選んだのですが・・・。今回もスイーツ系かな(笑)」
チームきっての甘党らしい差し入れだが、チームにとっては、彼の豪快な一発こそが最大の“差し入れ”になるのだが・・・。あとは楽しみに待つだけ。ラオウの完全復活宣言を・・・。

取材・文:大前一樹

大前 一樹

1961年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部卒業。 放送局アナウンサーを経て独立。今は、フリーアナウンサー、ライターとして活動中。 有限会社オールコレクト代表取締役、アナウンサー講座「関西メディアアカデミー代表」。 「J SPORTS STADIUM2022」オリックス・バファローズ主催試合の実況を担当。

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