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野球 コラム 2021年9月3日

【オリックス好き】快進撃を支えるリードオフマン~福田周平~

野球好きコラム by 大前 一樹
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福田周平選手

今季、オリックス・バファローズは、激戦パ・リーグの主役を演じている。“全員で勝つ!”というスローガンを旗印にシーズンを快走する姿は、勝利を渇望して止まないファンのハートを掴んで放さない。長きに亘って解消されないままだった得点力は確実にアップ。加えて、ここ一番の勝負強さがチームに大きな力を与えているのは明らかだ。

そんな、攻撃面での火付け役は、5月11日以降、1番に定着した福田周平だ。打率.298、出塁率.378(いずれも8月30日時点)はリードオフマンとしては申し分ない数字である。「僕が一番こだわりたいのは出塁率ですね。打率プラス1割が理想かな」とは、彼が以前から口にしていた言葉。今や、何があっても外せない1番打者なのだ。

「試合では最初に打席に立つわけで、そこで僕が出塁すれば勢いもつきますし、流れも良くなる。僕の後に良い打者が控えているわけですから当然ですよね。出塁してホームに還る。これが、1番打者としての僕の役割だと思っています」。実際、福田、宗、吉田正尚、杉本と続く打線は相手チームの脅威となっている。課題とされていた主砲・吉田正尚の前後の役者が完全に埋まったわけだ。その1ピースが、リードオフマンの福田周平というわけだ。

ただ、今季のスタートは、福田周平にとって芳しいものではなかった。開幕戦のスタメンオーダーの中に彼の名前はなかった。1番センター、2番セカンドには今季の飛躍が期待されていた若いプロスペクトが抜擢された。チームの将来を見据えた方針による若手起用は、福田の主戦場をファームでの試合へと変えていったのだ。2軍では1番の他、2番、3番、6番という打順を任され、ポジションもセカンド、サード、レフト、センター、DHと固定されることはなかった。「正直、モチベーションが上がらず、ネガティブな思考に陥ったこともありました。ただ、そこはしっかり切り替えて、いつ一軍に呼ばれてもいいように準備だけはしていました」

準備と言えば、シーズン前から彼のそれは始まっていた。そう、外野への挑戦である。昨季終盤の取材で、彼はこう漏らしていた。「とにかく試合に出たい。試合に出られるのなら、外野だってやりますよ!」出場機会を得るための決意の表れだった。そんな彼は、キャンプに向けて外野用のグラブを用意。慣れないポジションで必死にノックを受ける姿が印象的だった。「外野の経験はほとんどありませんでした。それでも、センターからの景色は新鮮に映って楽しんでいます。ミスもまだまだありますが、そこはしっかりと切り替えて、攻撃面と守備面両方で取り返してやるという気持ちを持って・・・」と、初めてのポジションでも彼は前を向く。

さて、話を元に戻そう。ファームで汗を流す福田に、“その時”は訪れた。開幕から38試合。そこまで、負け越し3(14勝17敗3分)と波に乗り切れないチーム状況の中、背番号4は一軍からコールアップを受けた。そこからの彼のリードオフマンとしての活躍ぶりは周知のとおりで、チームは交流戦での頂点に立ち、11連勝という力強いモメンタムを生み出した。ここ数年の課題であった“1番固定”が叶うことによって、チームの得点力は大きく向上。その最大の要因のひとつが、リードオフマン、福田周平の存在と言っていい。

では、チームの核弾頭として好調を維持できている要因について、福田本人はどう分析しているのか。「自分の中で決めていることがしっかりできつつあるということでしょうか。その決め事とは、打席でボールを打つ際に、余計な動きはしない、ということです。強い打球にしたい、遠くへ飛ばしたいという思いは、僕にとっての余分な動きを誘発します。そこをしっかり我慢して、不必要な動きを排除する。その中で自分のポイントでボールを捉えようとする意識です。100%ではないにしても、そこを目指しながら、出来てきているという実感はあります」ともすれば、プロの感覚は素人には理解し難いものである。ただ、彼の打撃スタイルにはひとつの“芯”が通っていて、それが福田流打撃理論の根底の中にひとつであることは想像するに難くない。

最後に、彼の最大の特徴であり、武器について触れることにする。そう福田周平が打席で見せる粘り強さである。そんな彼のしぶとさを象徴するシーンは6月6日のドラゴンズ戦の中で見いだせる。得点圏に2人の走者を置いた場面で、彼は見事にタイムリーヒットを放つわけだが、それは相手投手・福谷浩司が投じた16球目を捉えたものだった。ファウル11個を挟んだ後の粘り勝ちだった。「あの時は、なかなか打てるボールが来なくて・・・。自分では粘っているという意識はあまりなくて、とにかく必死にボールに食らいついていこうと。体が自然に反応してくれました」と、7分30秒を超える打席を振り返った。彼の粘り強さがチームの打線全体にも好ましい影響を与えているのは間違いない。

「ここからのシーズン終盤は、これまで以上に厳しい戦いになると思います。そこをしっかり乗り越えていかないと・・・」と、覚悟を口にする。不動のリードオフマンとして、福田周平の躍動は欠かせない。

取材・文:大前一樹

大前 一樹

1961年兵庫県生まれ。関西学院大学文学部卒業。 放送局アナウンサーを経て独立。今は、フリーアナウンサー、ライターとして活動中。 有限会社オールコレクト代表取締役、アナウンサー講座「関西メディアアカデミー代表」。 「J SPORTS STADIUM2022」オリックス・バファローズ主催試合の実況を担当。

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